執拗な追跡の果てに

カンツェラー

第1話 その男、木村智

東京都新宿のあるおしゃれなレストランで

弟の佐藤蓮(れん)は、敬愛してやまない姉の莉緒(りお)から

ある相談を受ける。

それは、仕事先のゲストから執拗にアプローチを受けていて困っているという内容だった。

これまでは、ゲストということもあり、うまいことスルーする形で来たが、いい加減しつこいので、次はしっかりとお断りするとのこと。

莉緒「その人、木村智(さとし)って言うんだけど、30代後半で中肉中背、陰鬱な雰囲気を醸し出す人なのよ」

蓮「それは、、気持ち悪すぎるね、早いとこさっぱり切った方がいいよ」

莉緒「そうよね、でもちょっとあとが怖いな」

蓮「最近は物騒だもんね、なんかイチャモンつけられたらすぐ言ってよ、俺が助けに行くから!」

莉緒「ふふ、ありがとう」


それから数日後、いつもキラキラとした表情で帰宅する姉の顔色が悪い状態で、戻ってきた。

蓮「ど、どうかしたの?顔色悪く、ない?」

莉緒「今日きっぱりとお断りしてきた。。」

蓮「よかったじゃん?。。 なに、なんかあったの、もしかして?」

莉緒「いやその場では何事もなかったんだけどね。。」

蓮「うん。。」

莉緒「仕事が終わってこれから帰ろうかなって時に、ビルから出た瞬間、私の横に現れたの」

蓮「うん!」

俺は緊張で思わず唾をゴクリと飲み込んだ。

莉緒「俺は諦めない、絶対に。だって」

蓮「なんやそれ」

莉緒「ほんとよね、なんやそれだよね」

蓮「そんなん、適当にほっとけって思っちゃうけど、そうはいかないなにかがあったんだよね?」

莉緒「何かされた訳じゃないけど、あのギラギラした目つき。前科ありそう。前科者の目を見たことある訳じゃないけど。本能がそう訴えかけてるの」

蓮「それは、、いよいよ大変だ」

莉緒「そうなのよ〜、父さんと母さんに言うべきかな〜?」

蓮「ん〜、、その木村智って奴がなにをしてくるか、様子見して、一度でも実行に移してきたらでいいんじゃないかな、父さんたちに相談するの」

莉緒「やっぱりそう思う?」

蓮「うん。。」

莉緒「わかった!愛する弟の意見に従おうぞ笑」

そうして姉さんは、俺の頭をガシガシとなでた。


姉さんは、頭が良くて、運動神経も良くて、いつも俺の自慢の姉だった。

見た目だって素敵だ。昔から誰にでも優しくするその人柄は、時として諸刃の剣になる。世の中には、恐ろしい人間もいっぱいいる。

俺は、姉さんの正反対の性格で、頭が良い訳でもないし、好き嫌いもはっきりしてるから、気の合わない奴とは、早めに線引きして関係を築いている。ただ、運動神経だけは、姉さんと同じくいい。趣味でボクシングをしているが、ちょっとしたローカルのアマチュア選手権でこの前優勝した。

俺は、心に誓う。木村智が姉さんに指一本でも触れたなら、顔面に過去最強の一発をお見舞いしてやると。

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