第2話魔法が解けたら、さようなら①

 深い深い森の奥には大きなお城があり、そこには恐ろしい野獣が棲んでいました。

 友達も、召使いもいない広いお城でただ一人――失礼、一頭。孤独な野獣は寂しさ、哀しみ、そして絶望を募らせるだけの日々を過ごしていました。

 ところがある日、お城に一人の少女がやってきました。屈強な騎士でさえも恐れる野獣を前にして少女は、頬を赤く染めました。

 なんて凛々しい方でしょう。

 毛並みは輝く黄金色。白銀にも勝る鋭い牙。雄々しい腕、力強い脚。まさに、森を統べる王に相応しい貫禄。

 人間の誰もが忌み嫌う姿を褒めそやし、少女は野獣に求婚した。野獣の大きな手を取り自身の胸に当て、古式ゆかしい獣人の作法に乗っ取って。


 どうか私の番になってください。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る