第10話 初めての獲物到来

 俺が娼婦館で働いて一か月が経とうとしていた。


 今でも毎日ミーシャさんの家で生活していて、ミーシャさんとミレイアさんとの関係も良好だ。


 まあ、相も変わらず、ミーシャさんの給料は全てミレイアさんに渡っていて、食費以外は全て俺に回ってきている。


 その金だけで銀貨250枚を超えていて、俺自身の給料もかなり高く、銀貨900枚を稼ぎ出した。


 商会ギルドで発行している通帳では銀貨が総勢1150枚も入っているのだ。




 その日もいつもの仕事で入る客の性欲を変えていく。


 その時。


 遂に俺の狙いの奴・・・・が姿を見せた。


 一か月もかかるとは思わなかったけど、逆にこの一か月よく頑張ったなと驚くほどだ。


 大急ぎで部屋に設置された『声伝達魔道具電話』で、支配人に相談をする。


「支配人さん。申し訳ないが、以前相談していたやつの一人がやってきました。俺が貰ってもいいですかい?」


「例の件か。構わないが、他の客はどうする」


「それなら問題ありません。その対策・・済みですから」


「そう。それなら好きにしな」


「ではセリスさんを例の場所にお願いしますね」


「分かった」


 ではいつもの場所を離れなければならないが、これでは今までと同じ仕事にはならない。


 ――――――今までならば。


 ここまで大勢の性欲を変化させたり、条件変更も沢山発動させているので、スキル『性欲』の使用頻度は授かってから一番濃い一か月を過ごした。


 その事が功を奏して、俺のスキル『性欲』のレベルが2から3に上がった。


 その時に覚えたスキルは――――――



「スキル『性域』。『性欲値条件変更』も発動」



 俺にだけ見える範囲で、入口前の階段に淡いピンクのゾーンが現れる。


 あのゾーンに入った者は、設定した性欲値に変わるのだ。


 現在設定値は250%。


 それに『性欲値条件変更』もセットで設置出来て、いつも通り、一度『賢者タイム』に入ると性欲30

%に下げて、家に帰れば元通りにする。


 これなら俺はここから離れても客は問題なく回る事になるだろう。


 このスキルのデメリットといえば、決められるのは一か所のみで、性域が維持されるのも12時間が限界だ。


 さらに誰彼構わず設定するので、咄嗟の出来事には対応できない。


 それもあるので、ギアンさんには注意するように伝えている。


 早速、持ち場を離れて、とある部屋に向かう。


 お客様・・・は待たせているので、先にセリスさんを待つ。


 数分いないうちにセリスさんが入ってくる。


「セリスさんお疲れ様です」


「お疲れ~ベリアル」


 最近ではすっかり仲良くなって、セリスさんは俺の機嫌取りもしてくる。


 あのギアンさんと快くやれるには俺の力が必要だからだ。


「セリスさん。そんなにベタベタしなくても、俺はセリスさん達を応援してますよ」


「そ、そう? えっと……いつでも言ってね? 私、頑張るから」


「ありがとうございます。でも俺よりも復讐を手伝ってください」


「もちろんよ! 今日が初めてだっけ? それでどんな内容なの?」


 それからセリスさんに作戦を伝える。


 セリスさんがにやりと笑うと、それでいいと作戦の決行となった。






「いらっしゃいませ~」


「お、おう。よろしく頼む」


「うふふ。そんなに緊張しなくていいですわ~初めまして。私はセリスって言います」


「うむ。セリスちゃんか。可愛い名だな」


「えへへ~よく言われます」


 緊張を解すためかセリスさんが高級紅茶を淹れてあげる。


 うちの娼婦館は、そんじょうそこらの娼婦館とは違い、高額である理由の一つに、その充実したサービスである。


 例えば、うちのミーシャさんの場合、やる為に来ているのはあるが、最近ではすぐに抜いてしまい、あとはミーシャさんから色んなサービスで癒されにくる客が絶えない。


 ここにいるセリスさんの場合、美女である事もあり、一緒に時間を過ごせるだけでも、高額の費用を出しても来る客が多いのだ。因みにセリスさんはナンバーワンの人気なので、ミーシャさんよりも料金が5倍ほど高かったりする。


 ナンバーワンのセリスさんに少し緊張しているのが、あのクズ大家はぎこちない返事を繰り返す。


 少し会話を交わしたら、セリスさんに案内されて、風呂場に入っていく。


「あら? 珍しいですわね」


「ど、どうしたんだ?」


「うふふ。まさか起たない・・・・方は初めてですから~私、頑張りますね!」


「お、お、おぉ……」


 このタイミングで性欲5%を20%に変える。


「っ!? た、起った!?」


「あら? そんな当たり前のことではありませんか~私にお任せください」


「た、頼む!」


 中の様子が詳細には見えないが、何が起こっているかくらい想像出来る。


 性欲を徐々に上げていく。


 声を聞きながら数値を上げていき、300%に達した時点で、『賢者タイム』を迎えたのを確認。


 一瞬で30%に下げる。


「うふふ。いっぱい出ましたね。続きは出てからしましょう~」


「あ、ああ!」


 シャワーを終わらせ、今度はベッドに移動して、2回戦が始まる。


 また同じく少しずつ性欲を上げていく。


 実は俺も2回ほど、セリスさんからの好意で彼女を体験させて貰ったのだが、言うなれば、プロ中のプロで最強というか、彼女に勝てる人なんていないだろうと思えるくらいには凄かった。


 そんなこともあって増えていく性欲に我慢など出来るはずもなく、数分で2度目を体験するクズ大家。


 そこで5%に戻す。


「つ、次は本番だ!」


 熱が冷めるまでにと、セリスさんを強引にベッドに抱き上げて、やろうとする大家。


 しかし。


「っ!? ど、どうして!?」


「あら? もう疲れましたの……?」


「そんなはずはない! どうしてだ! 頼む! 起ってくれ!」


 クズ大家の言葉も空しく、ソレが起つことはなかった。



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