構わないで下さい

「飲み過ぎだよ」そう言われて見たら、氷雨君がいた。


「離して」僕はそう言って月の手を引っ張っていく。


酔っぱらいの僕と月は、すぐに追いつかれるけど必死で逃げる。


逃げて、逃げて、逃げて、星影公園にはいった。


「ゲロはくな」


走ったから、月がその場に寝転がって言った。


「本当、吐きそう。ハハハ」


僕は、月の顔を覗き込んだ。


「チューしよ。」


「またか?」


酔いが冷めてるけど、さっき楽しくて忘れられた。


月は、起き上がって僕の唇に唇を重ねてくれた。


やっぱり、忘れられる。


「もっとして」


月は、またキスをしてくれた。


「ハハハ、楽しいね。」


「うん。」


月の服の砂をはらってあげた。


月が、僕を抱き締めた。


「俺、星とずっといたい。」


「僕もだよ、月」


そう言って、抱き締めた。


「また、チューして」


耳元で言った。


「またか、ハハハ」


月は、またキスをしてくれた。


「いいね。やっぱり先もいけるかな?」


「かまわないよ、俺は」


そう言った月の頬にキスをした。


「チュー」


「なんだよ、それ」


そう言って月が、キスをしてくれた瞬間だった。


「わざと?」


追いつかれた。


氷雨と月のお兄さんが、僕と月を見ていた。


「さっきから、それわざと?」


氷雨が、また言ってきた。


「月、帰ろう」


月を立たせた。


「なんで、無視するの?」


氷雨は、僕を必死に引き留める。


月が、氷雨に「幸せなら、ほっといてくれません?」って言ったら、月のお兄さんが、「ほっとけないからきたんだ。」って言った



僕は、二人に向かって「僕と月に、構わないで下さい」って言った。


それでも、しつこくて月が

「話すしかないよ」って僕に言った。


「わかった。」


僕は、氷雨君と向いのベンチに座った。


「なに?」あんなに飲んだのに冬の寒さで酔いが冷めてしまった。


「彼とは、そんなんじゃないって言ってたよね?」


「半年もあれば、変わるよ。大人だし」


「さっきのは、わざとだよね?」


「じゃあ、君が奥さんを妊娠させたのはわざとなわけ?」


酷い言葉しかでないのがわかっていたから話したくなどなかった。


「違うよ。あれは、偶然できたっていうか」


「避妊せずにしないとできないよね?」


「そうなんだけど」


「君は、幸せなんだから。僕を縛りつけないでよ。僕だって幸せになっていいでしょ?」


「もちろんそうだよ。でも、僕は星と一緒にいたいよ。今日だって彼女をお母さんに預けて星の所に来てしまった。」


「そう言うのさ、正直うんざりなんだよね。そもそも君とは、時雨がこうならなかったら会うことはなかったわけだから」


「君って言い方やめてよ。氷雨って呼んでよ」


痛いくらいに突き刺す痛み。


「奥さんに呼んでもらいなよ。」


僕がそう言った瞬間、氷雨君は僕を抱き締めた。


「やめてよ、離して」


一生懸命離してもらおうとした。


なんとか、離れられた瞬間、僕は頬を殴ってしまった。


「君と僕は、他人だから。最初から、他人だから。」


謝れなかったし、謝りたくなかった。


胸を貫く痛みに下を向いた。


ポタポタと涙が落ちてきた。


ジンジンと手が痛い。


「嫌だよ。」さっきより強い力で抱き締められた。


「離してよ」


「嫌だ。」


その言葉に、抵抗をする気力がなくなってしまった。


もう、いいや。


だって、僕は月とこの町をでるから


氷雨君は、僕と同じ香水の匂いがしてる。


なんで、つけてるの?


僕が、抵抗しないのに気づいた氷雨君は僕のおでこにおでこをくっつけた。


「この半年間会わなくたって、ちゃんと愛してくれてたでしょ?」


そう言ってきた。


「彼女の事見たら僕への愛は消えたの?」


そう言われた。


胸の痛みが酷くて、辛くてたまらない。


解放してよ。


もう、僕の中からいなくなってよ。


そう思ったら、涙が流れてきて…。


えっ…何してんの?


キスをされた。


さすがに、抵抗したけどやめてはくれなかった。


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