やっと会えた

ピンポーン。


インターホンを押すと、彼が出てきた。


久しぶりに間近で、見る姿に胸が踊る。


ゆで卵を渡して、部屋にはいった。


隣だから、声が聞こえる。


僕に聞かせようとしている。


チュッて音がした。


何故だろう、涙が込み上げてきた。


最初から、望みはなかったではないか…。


流れては、とまらない。



ー出会いー


ひかる、すぐそうやって誰かを本気にさせて悪い子だよね」


ドカッ。


「ごめんなさい、時雨しぐれ。僕は、時雨が好きなんだよ」


「はぁー?だったら、氷河ひゅうがにキスさせてんじゃねーよ」


ドカッ


「違うよ。違うよ。僕がしたんじゃないよ。」


時雨は、初めての彼氏だった。


嫉妬深くて、気に入らなかったらすぐに殴る蹴るをしてくる。


「したんじゃなかったら、そんなとこまでいくわけないだろうが」


ドカッ


ずっと、お腹を蹴られ続けた。


「ごめんなさい。」


謝っても許されない。


あの日々と似ていて、僕は、すごく愛されてると思ってすごく幸せだった。


氷河ひゅうがと、どこまでやったんだよ。」


ドカッ


「やりたかったわけじゃない。」


「ふざけるな」


ドカッ


「彼が、僕を欲しがったんだよ。」


「黙れ」


ドカッ


口の中がキレて広がる味。


あー、愛されてるんだ。


こんなにも、僕を求めてくれる事が、堪らなく愛しい。


嬉しくて堪らない。


ドカッ


「悪い子だな」


氷河ひゅうがを受け入れたのは、物足りなかったから…。


最近、時雨は僕を殴らなかったから


ドカッ


マンネリの愛なんて、つまらない。


「なぁー。兄ちゃん、女殴って楽しいか?」


僕を女の子だと彼は、勘違いしているようだった。


「はぁ?こいつ女じゃないから」


「どう見たって女だろうよ」


「なんだよ、テメー」


「手出すか?さっき、警察呼んだけど大丈夫?」


「ふざけるな」


時雨は、怒って行ってしまった。


待って、もっとやって欲しかったのに…。


僕、もっとやれたよ。


行かないでよ。


「大丈夫」


ドキン、差し出された手に胸が苦しくなった。


「はい。ティッシュしかなくてごめんね。」


柔らかい笑顔で、僕を見る。


ドキドキ…ドキドキ…


「さっきの彼氏?」


僕は、頷いた。


「やめときな、あんな風に殴ったり蹴ったりするのは愛じゃないよ。」


愛じゃない?


愛じゃないの?


じゃあ、愛ってなに?


「幸せになりなよ。立てる?」


彼は、僕をゆっくり立たせてくれた。


彼にれられる度に、ドキドキがとまらない。


幸せだったけど、違うの?


何が、違うの?


よく、わからない。


るい、行くよ。」


遠くで女の子が呼んでる。


「ごめんな。ついててあげれなくて。一人で大丈夫?」


僕は、頷いた。


「よかった。じゃあ、これな」

そう言って僕の手にティッシュを握らせた。


ドキ…ドキ…胸が苦しい。


彼は、僕を置いて女の子の元へ行ってしまった。


涙が流れて、止まらなかった。


それから、どうにかるいを見つけたんだ。


僕は、泣いてる。


壁に手を当てる。


ここに住んでるのがわかったのは一週間前


住人が引っ越したのは、三日前


運命だと思ったんだよ。


ここにきたら、るいを感じれる。


だから、住んだ。


なのに、何故?


僕は、るいの愛を欲しがるのかな?


ゆで卵、食べてくれたかな?


あれだけは、母さんが誉めてくれたんだよ。


上手だねって…。


布団に寝転がった。


るいと関わり合いたい。


れたい。


傍にいたい。


また、あの笑顔を僕に向けて欲しい。



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