第1章 真っ白な出会い (月川タクト編) 後編

数日後… 音楽室



コンセプトが決まり笛花先生の指導が始まった。笛花先生の指導は厳しいながらも優しく喩す指導だったため、失敗を恐れずに取り掛かることができた。


笛花奏

「そうね…そう、そんな感じ。うん、そこはもう少し強く!」


月川タクト

「こ、こうですか…?」


笛花奏

「そう!だいぶ上手くなったわね!…ただ、課題としては申し分ないけど、世に出す曲としてはあまり良いとは言えないわね…。」


月川タクト

「え、そうですか…。」


笛花奏

「えぇ…まあまだまだ時間はあるから、頑張りましょう!」


真瀬志奈

「はい!」


月川タクト

「はい!」


笛花奏

「いい返事ね!じゃあ今日はここまでにするけど、2人は一緒に遊んだり食事とかはしたことないの?」


真瀬志奈

「あ…。」


そういえば、学校とかでは夜坂くんや柊木さんと一緒にとかはあるけど、2人だけとかは無かったな…。


月川タクト

「そういえば、2人だけとかは…無いですね…。」


笛花奏

「そう、じゃあこれ。遊園地のチケット。2枚あるから2人で行ってきなさい!」


月川タクト

「え、良いんですか!?」


笛花奏

「いいのいいの。はい、では行った行った!!」


そう言われるがまま私たちは遊園地に向かうことにした。



六郭星ランド



笛花先生に言われて私たちは六郭星ランドに来た。六郭星高校のすぐ近くにある遊園地で、六郭星高校の学生も良く出入りをしている。

私はここには来たことは無かったので、こんな形で六郭星ランドに来れるとは思いもしなかった。


月川タクト

「…。」


月川くんはやけに静かだ。


真瀬志奈

「月川くん?」


月川タクト

「あぁ、ごめん。じゃあどこから乗ろうか?」


真瀬志奈

「あ…えっと、じゃあコーヒーカップにしたいです。」


月川タクト

「うん、じゃあ行こう!」


と、強引とも言えないが月川くんはそそくさとコーヒーカップのある方向に向かった。

コーヒーカップのアトラクションに着き、

私たちはコーヒーカップに乗り込んだ。


コーヒーカップが動き始め、勢いよく回る。

私と月川くんは真ん中の柱をドンドン回した。


月川タクト

「おー!!すごいすごい!めちゃくちゃ回ってる!真瀬さんはこんなに回っているけど大丈夫なの?」


真瀬志奈

「はい!私、絶叫マシンとかもすごく楽しいです!」


月川タクト

「そうなんだね!よし、もっと回すよ!!そーれ!」


真瀬志奈

「きゃあ!月川くんちょっと早いです!」


月川タクト

「あぁ、ごめん!少し手加減するね!」


真瀬志奈

「はい…ありがとうございます。」


月川タクト

「いいって、こっちこそごめん!時間ももう少しみたいだから、もう少し減速しようか。」


真瀬志奈

「はい…。」


コーヒーカップが止まり、私たちはジェットコースターや観覧車を楽しんだ。



色々なアトラクションを楽しんだあと、私たちはクレープを食べながら感想に浸り始めた。


真瀬志奈

「今日はとても楽しかったですね。」


月川タクト

「そうだね。俺も楽しかったよ。明日も頑張ろうって思ったし。それに前よりも真瀬さんと仲良くなれた気がするし。」


真瀬志奈

「はい!私もそんな気持ちでいっぱいです!」


月川タクト

「ありがとう!明日からも練習頑張ろう!」


真瀬志奈

「はい!」


月川タクト

「あとさ…今度から真瀬さんのこと…」


??

「ちょっと、あなたたち!!」


真瀬志奈

「え…?」


そう言って向こうから来たのは最初のホームルームの時に恋愛禁止と脅してきた三蜂レンカだった。


三蜂レンカ

「あなたたち!恋愛禁止って言ったでしょう!?」


真瀬志奈

「え…いや、あの…」


三蜂レンカ

「何よ!!その目つきは!恋愛なんてしても無駄なのよ!無駄!」


月川タクト

「お…おい…!」


三蜂レンカは私の腕に掴みかかってきた。


三蜂レンカ

「あなたたちがどれだけ恋愛が誤ちなのか徹底的に教えてあげるわ!」


真瀬志奈

「きゃあ!!」


その瞬間、三蜂レンカに月川くんが掴みかかった。


月川タクト

「おい…!いい加減にしろよ…!」


三蜂レンカ

「ひぃ…!」


月川タクト

「俺たちは笛花先生からの勧めでこの遊園地に遊びに来たんだ!お前が思うことはしていない!」


三蜂レンカ

「くっ…でも…」


月川タクト

「仮に俺たちが付き合うとしても誠実に付き合う。だから早くここから去れ!!」


三蜂レンカ

「…………覚えていなさい。」


三蜂レンカはその場を逃げるように去った。


月川タクト

「大丈夫?」


真瀬志奈

「はい…。」


月川タクト

「それなら安心した!ごめんね。怖い思いをさせちゃって。」


真瀬志奈

「いえ、そんなことはありません!あの…ありがとうございます。」


月川タクト

「いいって!それよりさ…その…」


先程の怖い顔とは違い、月川くんは恥ずかしげに言った。


月川タクト

「さっきの話なんだけどさ…今度から、真瀬さんのこと…下の…名前で…呼んでいいかな…?」


真瀬志奈

「え…!?私の名前…?」


月川タクト

「うん…。せっかくこうして仲良くなってきているからいいかなって…。」


真瀬志奈

「はい…いいですよ。」


そう言うと月川くんは嬉しそうな笑みを浮かべた。


月川タクト

「やった!ありがとう!それじゃあ…志奈さん…。これからもよろしくね!」


真瀬志奈

「は、はい!」


…異性の人に名前呼ばれることなんて莉緒ぐらいにしかなかったからドキドキしてしまう…。


月川タクト

「じゃあ…また明日ね!」


真瀬志奈

「はい…。」



六郭星学園 寮 志奈の部屋



遊園地から部屋に戻り、休憩しようとした時に星野さんが声をかけてきた。


星野シキア

「聞いたわよ。今日タクトと遊園地に行ったんでしょ。」


真瀬志奈

「うん、そうだけど…」


星野シキア

「あの三蜂っていう子、すごい怒ってたわよ?寮の中であなた達のこと大声で色々言っているし…」


真瀬志奈

「あー…あの人ね…」


あの去り方。やはり相当な怒りを覚えたんだろう。星野さんも同情するような顔でこちらを見ているし。


星野シキア

「まぁ聞いた人は全員無視しているから問題ないとは思うけど…にしてもあの人はなんであそこまで異性とのやりとりを嫌うのかがわからないわ…」


確かに、あの人のしていることがわからない。なんであそこまで怒るのかが…


星野シキア

「とりあえず気をつけてね。私たちもサポートぐらいはしてあげるから。」


真瀬志奈

「うん…ありがとう。」


そんな会話を終え、私はテレビをつけた。テレビには月川くんの友達、風亥さんが映っていた。


MC

「風亥くんは最近動揺したことってある?」


風亥ノクア

「そうですね…僕の通っている学校が2人1組で何か作るという、自由研究みたいなものなんですけど、それが6月に発表する予定だったのが3月になったときはちょっと驚きましたね。」


えっ?あの課題って3月になったの?

それは初めて知った。


星野シキア

「そういえば、今日掲示板に貼ってあったわね。半年以上の延期ね…。今後のことで莉緒と相談しないと…。」


今日の掲示板に貼ってたのね…知らなかった。でもこれで時期が伸びたので少し安心した。


そういえば、莉緒たちは何を作るのかしら?

聞いてみることにした。


真瀬志奈

「ところで、星野さんたちは何を作るの?」


星野シキア

「私?そうね…私たちも作曲よ。」


真瀬志奈

「そうなの?」


星野シキア

「まぁ…莉緒が楽器なんでも弾けるみたいだし、私もギター弾けるからってだけだから…」


莉緒たちも作曲か…確かに莉緒も私と一緒でなんでも弾けるけど、星野さんは何か不安そうな顔をしている。


星野シキア

「…どうしたの?」


真瀬志奈

「い、いや別に…」


星野シキア

「そう。」


そういった星野さんは思いついたかのようにこういった。


星野シキア

「ねえ、もう曲はできているの?」


真瀬志奈

「3割程度だけど…。」


星野シキア

「それなら一回聞いてみていい?2人の実力、知りたいから!」


真瀬志奈

「え?私たちの曲?」


星野シキア

「ええ、参考程度に聞いてみたいんだけど…いい?」


真瀬志奈

「わかった。ワンコーラスだけなら…」


そうして私は星野さんに私たちの曲を聞いてもらった。


星野シキア

「なるほどね…いい曲ね。」


真瀬志奈

「あ…ありがとう。」


何を言われるかドキドキしたが、普通に褒められた。素直に嬉しく思った。


星野シキア

「曲調はタクトらしいわね。孤児院の時から似たような感じだけど…少し変わったわね。」


孤児院?月川くんは孤児院出身なのかしら?

そう思ったとき思わず口に出してしまった。


真瀬志奈

「孤児院?」


星野シキア

「あ、聞いてなかったのね。私とタクトは同じ孤児院出身なの。」


真瀬志奈

「えっ?そうなの?」


星野シキア

「本人も孤児院のことについて話しても気にはしないけど、孤児院に入った経緯については話すのはやめてね。」


真瀬志奈

「入った経緯…?」


星野シキア

「…経緯に関しては私からも言えない。タクトのことだから…。」


真瀬志奈

「…。」


星野シキア

「…。ごめんね、こんな話をして。」


真瀬志奈

「いえ…そんなことは…。」


星野シキア

「とりあえずこの話はおしまい。明日から、自由研究の今後のやりとりについて考えないとね。お互いに。」


真瀬志奈

「うん…。」


入った経緯を聞いたらどうなるか考えたまま、うんとうなずいた。

経緯については月川くんに聞くのは星野さんの言うとおりやめた方が良いと思った。

これを聞いたら月川くんは何かが変わってしまいそうだから…





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