第14話 どちらが先決?

 つい見入ってしまいそうな端正な顔立ちの志原君に接近されて、そんな風にいきなり持ち掛けられると、妙にドキドキしてしまう!


 別に、志原君から私に向かって、色恋めいた話なんかするわけないって、そんな事くらい百も承知の上なんだけど……


 それでも、何だかフェロモンっていうのかな?

 それを意識しているのかどうか分からないけど、そういう惹き付ける魅力がダダ洩れな感じなんだよね、志原君って。

 女子に対しても、男子に対しても、お裾分けしてもらいたいくらいに……


「私に話……って?」


「僕が綿中さんに、『微笑み係』の交代をお願いしたせいで、綿中さんがクラスの女子からヒンシュク買っているなら、ホントに申し訳無く思って……僕は、そこまで考えてなかったんだ。このままだと、綿中さんも辛い立場だと思うから、岸沼君の担当は、僕に戻してもいいよ」


 それはきっと、志原君の優しさから出た言葉に他ならないんだけど、でも、それは、絶対ダメだから!!


 それじゃあ、振り出しに戻って、2人が急接近しちゃう!

 2年3組女子の希望の光なんだから、志原君は!

 まだまだ岸沼君とは、距離を置いといてもらわないと!


「ううん、私なら、大丈夫! 女子達の誤解だって、すぐ解けるはずだし」


 そんな事を言いつつ、そうならないような予感もしていたけど、私の事なんか二の次だから!


「そうかな? そうなるといいんだけど。もし、女子達の圧が強過ぎて、我慢できなかったら、いつでも、代わるから言って」


「うん! ありがとう、志原君!」


 志原君の申し出は有り難いけど、何とか私が頑張って『微笑み係』の役目を果たしてみせるから!

 それだけじゃなく、志原君と岸沼君カップル誕生なんて事にならないように、私に出来る全力を尽くすから!


 それには、どちらかの気持ちを私に向かせなくてはならないのだけど……

 今日1日だけで十分過ぎるくらい、2人の相思相愛ぶりを確認してしまって、とてもじゃないけど、私の割り込めるような隙なんて、どこにも無さそう!


 どちらかの気持ちを私に向かせるどころか、むしろ私の気持ちの方が、2人の方に向いてしまっているような感じで、自分の中ではモヤモヤして落ち着かないし……


 こんな感じで、私、自分の役目をまっとう出来るのかな?


 お風呂の時とか、食事の時とか、無い頭を使って、なんとか作戦立てようと考えてみたんだけど......

どうも、あの2人に割り込める余地なんて無さそうだし、第一、私自身の魅力とかって、2人にはとても及ばないし、その計画自体、無理過ぎる!


 そこで、やっと思い付いたのが、すごく卑怯な気もしないでも無いけど……悪口作戦!


 どちらかと一緒にいる時に、相手の悪口を吹き込んで、そういう人間だと思わせて、興味を失わせるの。

 なんか幼稚っぽい作戦だし、そんな事くらいで失望するかは疑問だけど……

 ダメ元でも、やってみないとね!


 岸沼君は、ああ見えて意外と純粋っぽいところ有るから、信じてくれそうな気がするんだよね。


 志原君は、どうだろう?


 天使系でありながら、ちょっとクセが強いというか、一筋縄ではいかない感じするから、志原君の方が難しいかも知れない……

 

 岸沼君の方が上手く行って、志原君に対する好意を失ったら……志原君は敏感だから、そういうのすぐさま感じ取って、諦める事も有るかも知れないから、まずは岸沼君から攻めて行こう!

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