12月 第2話 クリスマスプレゼント
ひびきちゃんへのサンタ作戦は大成功で、翌朝クリスマスプレゼントを抱えて寝室に駆け込んでくる。
睦生とくっついて寝ていたので、あたふたしてしまったけど、服は着ていたので何とか誤魔化せた。
目をきらきらさせているひびきちゃんと違って、わたしは大人なのでサンタさんよりも睦生がいいから仕方がない。
「柚羽ちゃんサンタさん見た?」
「わたしが寝てる間にサンタさん来たんじゃないかな。睦生も見てないよね?」
それに睦生も頷きを返してくれる。
こういうのって今だけなので、夢は壊さないでいてあげたい。
「サンタさんひびきのお家が分かったのかな」
「サンタさんはどこにいても、良い子がどこにいるかわかるんだよ」
それで納得したようで、わたしと睦生の間でおもちゃを広げ始める。
ひびきちゃんは、すぐにプレゼントされたおもちゃがどういうものか分かったようで、こういうことができるんだよ。と熱心に説明をしてくれる。
こういう話を聞くのはわたしの役割と決まっていて、睦生から朝ご飯だと声が掛かるまでそれに付き合った。
いざ、子供向けのおもちゃを見て分かったことだけど、最近の子供向けのおもちゃはスマホやパソコンを模したものも多い。
結構よくできているものあるけど、今はできる限りわたしがひびきちゃんに付き合うから、一緒に遊べるものにしようと睦生とクリスマスプレゼントを選んだ。
そんなわけで、クリスマスの日曜日は昼を挟んでひびきちゃんと遊んで過ごした。
流石に夜は解放してもらって、今日は睦生がひびきちゃんとお風呂に入っている。
この隙に、と寝室に入って、わたしはひびきちゃんのプレゼントと一緒に買った睦生へのプレゼントを枕元に置いた。
睦生はワタシに何かするくらいなら、ひびきにしてくれたらいい、って言うけど、ちょっとくらいはいつも頑張ってる睦生にもご褒美があってもいいだろう。
初めての3人で過ごすクリスマスは充実した2日間で幕を閉じた。
クリスマスが終わると後ちょっとで年末年始の休暇を迎える。
わたしは29日まで出勤で、睦生はひびきちゃんの保育園の関係もあって、26日だけ出勤して、その後は有給休暇を使って早めの休暇に入る。
わたしもお客さんへの挨拶ももうほとんど済んでいるので、後はいつも月末にする処理を早めに進めるだけだ。少し気は抜け始めていて、後は仕事納めまでがんばるだけだった。
26日は上司に飲みに誘われて急遽飲み会になって、翌日の27日からは睦生が休暇に入るので、絶対に早く帰ろうと誓う。
だって、今日も遅くなる? なんて睦生に見送られると、出勤なんかしたくないくらいなのだ。
幸せボケだって分かっているけど、まだ新婚みたいなものだし、いいよね。
予定通り、定時になると同時にPCをシャットダウンして、真っ直ぐに家に帰る。
駅から家に向かっている途中で、夜空から不意に白い塊が降り出す。
掌を広げると、掌に落ちた雪は手の温もりですぐに水に変わる。
積もるような雪には恐らくならないだろう。
それでも帰ったらひびきちゃんに教えてあげようと、足取りを早くした。
「ただいま」
夏に引っ越したマンションに入って、エレベータで目的の階まで向かって、扉を開く。
やっとなじみ始めた言葉でわたしは家に帰り着く。
物音に気づいて出て来たのはひびきちゃんだった。
「ひびきちゃん、今雪降ってるよ」
「見たい!!」
ジャンプをするひびきちゃんに、玄関の扉をもう一度開いて外を見せる。
「つもる?」
「どうかな」
大人は雪が積もったら困るけど、子供は楽しみが増える。
「つもったら、ゆきだるまつくろうね」
そうしよう、と頷いてわたしはひびきちゃんとリビングに向かった。
「今日は家にいたの? どこかに出かけた?」
「おかいものにいったけど、柚羽ちゃんには内緒なの?」
買い物に行ったことと内緒という言葉が繋がらなくて、首を傾げながらリビングに入る。
「お疲れ様、柚羽、ご飯もうすぐできるから、着替えてきて」
キッチンからは美味しそうな匂いが部屋中に漂ってきている。睦生は料理は時間を掛けてやりたい方なので、今日は機嫌が良いかな。
「ただいま。分かった。着替えたら手伝うね」
睦生にそう伝えてまずは着替えに向かう。スーツを着たまま手伝おうとすると怒られるので、お腹が空いていてもこれは絶対守る必要がある。
部屋着に着替えるとリビングに戻ると、テーブルにはもう料理が並んでいて、ひびきちゃんが手伝ってくれたらしい。
「今日はひびきがやさいを切ったの」
「ひびきちゃんが!? すごいね」
子供の日進月歩は、一緒に住むようになって本当に実感している。
テーブルに並べられた今日の夕食はクリームシチューで、冬の定番だけど、わたしの好きなメニューだった。
3人で顔を見合わせていただきますをしてから、スプーンを握った。
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終わらなかったので、もう1回続きます。
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