7


ー『彼女は、売春をしている』ー



何処からともなく流れ始めた、噂。


誰が流し始めたのかは分からないが、つくづく馬鹿らしい、と思う。


この古民家だって、見た感じ、人が住んでいるようには思えない。


そもそも、その売春をしている、と噂の彼女とは、何故雨が降っている時だけしか会えないのだろうか。


しかも、午後四時過ぎに降る雨、という条件付きで。


「そう言えば…」


今の時刻も、丁度、午後四時過ぎ。


図らずも、条件に合致した時刻だ。


しかし、相変わらず、古民家に人の気配は感じられない。


所詮、噂は噂か、と鼻で笑いながら、早々に雨があがる事を期待して、雨中へ踏み出そうとした、その時。


私の頭上に、一本の傘が掲げられた。


「……止まないよ」


その声は、雨音のように、私の中へ、ぽつりぽつりと落ちながら、染み込んでいく。


「七つ下がりの雨、だから」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る