第5話 コウスケ、ゲイバー鮮烈デビュー

 初めて男性のイチモツを口にしたのは堂山のゲイバーでした。


 新宿二丁目は全国的に有名なゲイの集合場所。でも僕は1回しか行ったことがない。関西人は、大阪の堂山に集まるのではなかろうか。もしくは新世界?人により好みがあるみたいだ。


 とある女性にフラれた勢いで、以前から少し検索していた(この頃はインターネットがそこそこ普及していた)ゲイバーに行ってみることにした。いわゆる観光系と呼ばれる、男でも女でも入れる初心者向けの飲み屋さん。当時、ショットバーが好きで、1人でカウンターで飲むことに躊躇は無かったが、何しろそういう系の人たちが集まるということでドキドキしながら店内に入ってみる。


 薄暗い照明だけど、ミラーボールが回っており、ボックス席にはそこそこお客さんが入って居た。みんなゲイなのか?なんて思いながらカウンター席に着く。


「初めてなんですがいいですか?」

「もちろんですよ。」と答えてくれたのは、黒髪リーゼント、体格がっちり沖縄系の顔立ちイケメンバーテンダーさん。


 どういう経緯でお店に来たのか、好きなお酒は何か、ゲイバーとはこういう感じだよ、というようなレクチャーをしてくれる。そして、数杯飲んだ後、コウスケくんにはこっちがオススメだよ、と同じビルの向かいのドアまで案内してくれた。


 向かった先は、ゲイオンリーのゲイバー。ノンケ、女性は入れないシステムらしい。最初の観光バーと同じ系列のお店だそうだ。


 4人掛けのボックス席が2ヶ所、そしてカウンターに10人程座れるお店。中には短髪ラウンド髭、ぽっちゃり系のスタッフの人。僕は、ゲイゲイしい人、って思ってるんだけど、いわゆるモテ筋の人たち。そして、びっくりするほどトークがうまい。これまでお付き合いで夜のお店に行ったことがあったけど、こんなに楽しくなかった。どちらかと言えばこちらからキャバ嬢を持ち上げて場を盛り上げていってた。でもここの人たちは、トークの緩急が抜群。ボケからツッコミからオチまで完璧。しかも安い。キャバクラに数万円かける意義がなくなった(と言っても、僕は人の金でしかキャバクラに行ったことがないのだが)。


 ゲイバー初日からかなりの酒を飲むことに。そこそこ酒には強いので、これまで意識や記憶が無くなったことはほとんど無いのだけど、この日はおかしかった。自分の中のモヤモヤが晴れていくような感覚。ゲイって、こんなに居たんだ、という安心感。そして高揚感。


 そんな中、調子にのった店子(ゲイバーで働いている店員)が、「この人のブツ、すごいんですよ!」と隣の男性を紹介してくれる。

 酔ったコウスケ、意味が分からない。

「ちょっと、あんた、コウスケくんに見せてあげなさいよ!」とママ(男だけど、ママと呼ばれる、システムはスナックと同じ)。

 その男性、見た目は細くて人のよさそうな、気が弱そうな人。周りにおだてられ、おもむろにズボンのベルトを外していく。ぺろん、と下げたパンツから出てきた初めて間近で見る他の男性のモノ。すごい。でかい。例えが古いが、250ミリリットル缶くらいの太さがある。しかももっと長い。日常生活、ズボンの中にしまっておくのが大変そうだ。

 そして、さらに店子くんが焚きつけてくる。「コウスケくん、しゃぶってあげて!」

 目が点になる。でも、コウスケ、場の空気を読む人。しかもぐでぐでに酔っている。「いいんですか?」とその男性に確認したあと、触らせてもらう。アツい。僕の手の中で硬くなっていく。カリ首を持ち上げていく。そして先を口に入れてみた。

 あっ、とその男性が声を上げる。周りのみんながきゃっきゃ喜ぶ。

 これは、公然わいせつ罪じゃないのだろうか。なんて今なら思うが、時効ということで。


 こうして、ようやくゲイだと自覚したコウスケは大人の階段を上り始める。今から思うと、その男性のブツが特大だってこと、どうしてママや店子くんは知っていたのかな。普段から脱いでおられたのだろうか。なんて思うのだけれど、その人とはそれっきり。こうして徐々に、そして本格的にゲイデビューしていくのでした。

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