第3話 紙飛行機

 私の通う小学校は制服が指定されていた。

 男の子はグレーのハーフパンツ、女の子はチェックのプリーツスカートを着用することを義務付けられていた。


 そのせいか、休み時間に校庭で遊ぶ女の子は少なかった。

 中には気にせず縄跳びをしたり、のぼり棒に登る子もいたが、私は休み時間をいつも教室で過ごした。

 もし、私がスカートのまま校庭で鬼ごっこに参加したという話を母が聞こうものなら、烈火の如く目を見開き、氷川の人間としてのあり方を切々を説かれることだろう。


 でも、その日の休み時間、私はクラスの子とおしゃべりしながらも窓の外の様子が気になって仕方がなかった。

 無邪気な歓声を上げながら、数人の同級生が空を見上げている。


 彼らは紙飛行機を飛ばしていた。


 男の子の手から離れた白い機体がツーと空を舞う。

 他の子が飛ばしたものには、クルクルと回転しながら飛ぶものや、先端が逆三角形になっているものまであった。


 た、楽しそう……!


 紙飛行機を作ったことのない私は校庭の面白そうな遊びに心を奪われてソワソワとしてしまう。すぐにでも、校庭に駆け出して私も参戦したかった。


 だけど、だめだ。

 私は氷川の人間だ。

 人前ではしたない真似はしてはならない。

 そう自分に言い聞かせる。けれど、


「氷川さん?」


 一緒に休み時間を過ごしていた子たちは、何度も上の空になる私に怪訝な顔をした。

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