買い物

店長と並んで歩く。


「コースターとエコバッグ買ってしまいました。」


「フフフ、私も買いましたよ。」


「ボールペンは、さすがに買いませんでした。心は、揺らぎましたが…。使うのかと自問自答しました。」


「わかります。私もそうしてやめました。」


二人で、笑いながら歩く。


「店長、今日の晩御飯の買い物していいですか?」


「はい」


「お礼したいです。何食べたいですか?」


「大宮さんの手料理が、食べれるんですか?」


「あんまり期待しないで、下さいね。」


「10年主婦やってるじゃないですか!」


「店長の方が、素晴らしいですよ。」


「そんな事ないですよ。あの、ハンバーグ、食べたいです。」


「わかりました。ハンバーグ作りましょう」


私は、店長に笑いかける。


こうやって、店長と過ごす時間がとても、楽しかった。


買い物を二人で、楽しく周る。


結婚前に、姉としていたのを思い出した。


買い物を済ませて、車に乗り込んだ。


店長は、お家に連れて帰ってくれる。


その道中で、店長にケーキ屋さんに寄ってもらった。


グルテンフリーと豆乳のケーキ屋さんだ。


ショートケーキを二つ購入した。


店長の家についた。


「とりあえず、冷蔵庫しまいますね。お茶にしましょうか?」


「はい」


店長は、私の為にカフェインレスのコーヒーのドリップを買ってくれていた。


私は、座って待っていた。


「お待たせしました」


コーヒーとケーキを出してくれた。


「お砂糖二ついれときました。」


「ありがとうございます」


手を合わせて、二人でケーキを食べる。


「米粉に感じませんね」


「はい」


「豆乳クリームも美味しいですね」


「ですよね」


店長は、ニコニコ笑ってくれていた。


「妊活の為にやってきた事、全部やめようと思ってます。」


「グルテンフリーもそれでですか?」


「はい。カフェインレスも、グルテンフリーも、乳製品や揚げ物を控えたりも…。温めたり、サプリを飲んだり…。全部、全部、やめます。」


「いっきに、やめたら寂しいですよ。」


「それでも、もう決別したいんです。出来ないのわかってるのに、そこにしがみついてる自分が嫌いです。」


私の言葉に、店長は頭を撫でてくれる。


「子供に縛られるには、人生はあまりにも長すぎます。」


「そうかもしれないですね。人生が、50歳までなら私も、最後まで頑張りました。だけど、80歳だとしたら…。残りの40年も頑張れる自信がありません。」


「そんなに、頑張れないですし、頑張らないで欲しいです。」


店長にれられる事が、嫌じゃない自分がいる。


優しくて、暖かくて、このまま店長のものになれたら楽なのになんて考えてしまった。


楽と好きは、違う。


私は、逃げ出したいのだ…。


「主人の両親が、会う度に言うんですよ。梨寿りじゅさん、不妊治療考えたらどうかしらって…。お隣の娘さんも、不妊治療を受けて、来月出産なの、お友達の子供も不妊治療を受けて妊娠したのって…。」


「大宮さん…」


「まるで、私だけが悪いみたいに言うんですよ。主人のいない所で…。姉に話すとストレスをなくさないとって言うんですが…。姉、自身もいないので、二人でも楽しいわよって言ってくれるんですが…。」


「一人だけが、悪いわけないですよ。」


「そうですよね。でも、主人の両親に会いに行く度に私は女として産まれてきた自分を呪うんです。いつまでも、解けない魔法です。これは、呪いですよ。店長」


「そんな事言わないで下さい。」


「男だったら、いくつでも出来たでしょう?奥さんが、若ければ…。でも、女だからタイムリミットが生まれる。私は、他人の子供を育てれる程、優れた人間じゃありません。だって、従姉妹の子供が可愛く思えないんです。」


「大宮さん、そんなに自分を責めないで下さい。大宮さんは、素敵な人ですよ」


店長に言われるだけで、心が暖かくなるのを感じる事が出来た。


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