愛してる。梨寿&真白

三愛紫月

好きだから…。

どうしても、大宮さんと付き合いたかった。


「おはようございます。」


「おはようございます。」


「大宮さん、それ俺が持ちますよ。」


黒瀬さんとのやり取りを見ていた。


「ねぇー。黒瀬ちゃん。大宮さんが好きなんだって、店長。不倫になっちゃうわよね?」


湯田ゆださん、誰に聞いたんですか?」


「やだー。加胡かこくんよ。バイトの、仲いいでしょ?黒瀬君と」


「へー。そうですか。」


「気をつけてあげてね。店長」


「わかってます。」


働いていて、1ヶ月を少しだけ過ぎた頃に聞いた。


絶対に渡さない。


面接の時に、初めて会った時から私は大宮さんに一目惚れだった。


大宮さんを射止めるのは、私だ。


黒瀬さんじゃない。


「店長、ちょっと今日は早く帰りたいんですが…。」


「体調悪いですか?」


「足が、痛くて立ってられなくて」


「事務所で、休みますか?」


「はい、すみません。」


私は、大宮さんを事務所の椅子に座らせた。


「装具、外していいですよ」


足首を固定する装具をつけている。


「ありがとうございます。」


「マッサージしたら、痛くなりますか?」


「足首は、痛くなります。」


「なら、ふくらはぎはどうですか?」


「そんな店長にしてもらうのは、なんか悪いですから」


「大丈夫ですよ。足を置いてください」


私は、大宮さんのふくらはぎをマッサージする。


「お風呂でやってますか?はってますよ」


「忙しくて、帰ってご飯を食べたら寝てしまってます。」


「駄目ですよ。ちゃんとほぐさなくちゃ…。」


「そうですね。」


大宮さんを独占出来て嬉しい。


「旦那さんとは、夜はしていますか?」


「えっ?」


「それだけでも、運動になるのかなって…。」


「そうですね。時々は、ありますが…。そんなに、いいものではないですよ。」


寂しい顔をした、大宮さんをもっと守ってあげたいと思った。


「何か悩んでるんですか?」


「えっ、私、不妊なんです。結婚してから、一度も避妊していないのに…。一度も出来ません。どうやら、私達の遺伝子は合わないようですね。店長。」



そう言って、笑った顔に胸が締め付けれた。


「そんな事ないですよ。タイミングが合わないだけですよ。」


「そんな事あるんですよ。タイミングだけなら、証明できない事がたくさんありますよ。店長」


抱き締めてあげたいと思った。


「少しは、楽になりましたか?」


「ありがとうございます。」


「反対も置いてください」


「いいですよ」


「駄目です」


「すみません」


こんなに綺麗な人でも、人生は生きづらいのかと思った。


友達が子供を産んで、実家に捨てたのを聞いた。


[可愛くないもん]


そう言って笑ったのを思い出した。


今なら、彼女を張り倒してやりたい。


何故、神様は彼女に子供を授け、大宮さんに授けなかったのでしょうか?


「店長は、結婚はされないのですか?」


「興味ないです。」


「店長みたいに可愛らしい人に愛される人は、幸せですね」


大宮さんは、ニコッと笑ってくれた。


「大宮さんみたいな綺麗な方に愛されてる旦那さんも幸せですよ。」


「買いかぶりですよ。私、ヒステリックですから。」


ヒステリックな大宮さんを見てみたいと思ってしまった。


「終わりましたよ」


「少し、楽になりました。ありがとうございます」


「いえ、またやってあげますから」


「とんでもないです」


「大丈夫ですよ。好きでやってますから…。ちょっと休んだら送りますよ。本部に行くとこだったんで」


「店長、今日はスーツですもんね」  


「はい」


10分程してから、大宮さんを車で送った。


この手で大宮さんの足にれられた事が幸せだった。


「ここです。」


戸建てを指差した。


「はい、旦那さんは、出張ですか?」


「今日は、いますから大丈夫です。」


「よかったです。では、失礼します。」


「はい。ありがとうございます」


私は、バックミラーで大宮さんをチラチラと見ていた。


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