神宮アツタ編

第13話 広告かく乱爆弾投下作戦

μ社とUAGの激化する広告戦争はもはや収まる兆しが見えなくなっていた。既に人間たちの中では抵抗することを諦めて、どちらかの広告社の管轄下に入り生殺与奪の権を全てゆだねる者たちも出てきている。勿論、このような状況下ではそう判断するのが自然だという事は認めざるを得ない。しかし。しかしだ。この神宮アツタ様はそんなことはしないのだ。広告社に飼いならされるなら人間としての尊厳を保ちながら死にたいと思っているのだ。


「おい、鹵獲したアド・ファイターの調子はどうだ。」

「いやはや、見てくださいよこの自動広告攻撃回路、前に捕まえたやつより複雑になってやがりますぜ。」

「作戦結構予定時刻までに動かせそうか。」

「できなくはないんですが、ちょっとしんどいですねぇ。何人か人をよこしてくれればどうにか・・・」

「わかった、もうすぐ第一物資調達部隊が帰ってくるから、そいつらに休憩を与えた後手伝いに当たらせる。その代わり必ず仕上げるんだぞ。」

「へいへい、わかってますって。」


俺と同じく2大広告社に反抗の意思を持つものたちは、5年前にこの偽装倉庫に集ってAAP、対広告反乱同盟アンチ・アド・パルチザンを結成してμ社やUAGのロボット共と戦ってきた。俺は昔μ社の広告兵器開発部門に所属していたこともあって、この通り鹵獲した兵器を広告なしで使えるように改造したりなどの仕事を任せられている。だが、このアド・ファイターも含めて最近の広告兵器は明らかに”人間”が管理できる範疇を越えている気がする。


「神宮整備長殿!ボスから話は聞きました!何かお手伝いできることは」

「ああ、とりあえずそこの箱に入ってるやつを捨ててきてくれ、もし使えるものがあったら持ってっていいぞ」

「了解です!」


俺がμ社をやめた時にはまだ開発部門には人がいた。その頃の兵器はまだ人間が使うことを考慮されていたのだ。だがどうだこのアドファイターμ6000ときたら無人戦闘機とはいえ回路の配置といいエンジンの形と言い全く持ってメンテナンスフリーにもくそもない。だが、もし仮にこの兵器を機械が整備するのならば話は別だ。機械は人間と違っていろいろと自由が利く。このμ6000もそれらにしてみればよっぽどメンテナンスフリーなのだろう。という事は、もうμ社の開発部門には”人間”は関わっていないのだろうか・・・


「良し、この回路にアド・キャンセラーをかませれば・・・はまった。」


このアド・キャンセラーをかませればこいつはもう意のままだ。広告を流さないと小動きが出来ないように設計されているので、俺たちが使用する場合には必ずこの装置を自動制御回路に接続しなければならない。だが、普通これは銃とか大砲とかにセットしていたものだ。そんなものをなぜわざわざ徹夜してまでこいつに着けたかというと・・・


「神宮!第二物資調達部隊が・・・」


ようやく来たか、広告撹乱爆弾スパム・ボムが。俺たちAAPの別動隊が死に物狂いで完成させたこの爆弾は、一度炸裂させればその爆風に乗って微小構成体を飛ばす。そいつらが広告兵器の中に入り込んで奴らの広告回路をめちゃめちゃにかく乱して攻撃も防御もできないようにさせるのだ。そいつを敵陣のど真ん中に持っていくために、俺はこいつを改造していたという訳だ。しかし、何故だろう、ボスの顔色がどことなく悪く見えるのだが・・・


「どうしやした、ボス?」

「第二物資調達部隊がUAGの強襲型アド・ロイドに襲われた!その時に・・・広告かく乱爆弾を奴らに奪われたと報告が入った!!」


なんてこった、と俺は顔を覆った。あれは俺たちの”切り札”だったのに・・・


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