第18話 上の空とヘルシー

 今日もあなたはおかしなことを言っている。最近わたしの話を上の空で聞いていない?


「ねえ、うちにある野菜ジュース、一日分だったっけ、これ一本だっけ?」

「ん?」

「これ一本だったかなあ?」


「それはね、一日の野菜摂取量350gをとれているってことですよ」

「え? どっち?」

「だからあ、容量が少ないのはその量の野菜を絞ってジュースにしてるからだって」

「聞いて。わたしはうちにあるのがどっちだったかを聞いているの」

「え?」


 ほら、こういうことが多い。

 まあ他のことをしているときに聞くわたしもいけないんだけど。


「あ、ねえねえ、こないだ食べたお弁当さ、ヘルシー弁当って言ってたよね?」

「ん? うん。お野菜がいっぱいでヘルシーだったでしょう?」


「ものすごい量だったよ? ヘルシーってなに?」

「んー? 健康的な?」


「あの量食べて健康的か?」

「あの量のお肉を食べるよりも健康的でしょう?」


「わからん。さっぱりわからん。じゃあ少しの量のお肉はヘルシーなの?」

「そりゃあどっさりのお肉を食べるよりはヘルシーじゃん」


「まってその理屈で言うと、より多くの肉を準備してそれよりも少ない量を食べれば何でもヘルシーになるじゃない」

「おかしなことを言いますね」

「何がおかしいの? まっとうなことしか言ってませんよ、たっぱりヘルシーの基準がわからないわ」


「基準なんてないんですよ、どう思ったかが大切」

「ええ? 気持ち一つってこと? そりゃあわたしにはわからないわ。それあれじゃん、よくわたしの自己肯定感が高いとかっていう話をされるのと同じじゃん」


「え? 高いじゃん。何が同じなの?」

「高くなんてないんですよ、自分でそうしようと決めてるだけです」


「決める? 演じてるってこと?」

「いや、決めてる。違うな、あきらめてる、かな。人がどう思うかではなく自分がどう考えるのかってことは自分で決めるしかないから」

「ああ、なるほど、まあそうかもね」


「だから、よ。ヘルシーも自分でこれはヘルシーと決めればヘルシーなんだから何を食べてもヘルシーと思えばいいって話」


「そう? そういう話なの?」


 いつものように変なこと言ってる。


 いつものように笑いあう。


 いつものように


 わたしはあなたのことが好き。

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