第2話 辛い?もの

 いつもの通り帰りが少し遅くなったわたし。

 あなたと食事をするわたし。


 私は辛い物が好き。

 あなたは辛い物が苦手。


 そんなに辛いっていうほどでもないんだけどな。

 目の前で悶絶しそうなあなた。


「本当に辛い物が苦手だよね?」


「うん。だめだね」


「いつもそうだよね。私が大丈夫で、全然辛くなくてもそうやって辛がるよね」


「いや、辛いじゃん、これ。え? 辛がる???」


「なに? 辛がるでしょう?」


「え、ええ。そうっすね。辛がりますね」


「なに? なんかおかしなこと言った?」


「いえ、特に…… 辛がる、はなかなか言わないかなあと思いまして」


「辛がるでしょう?」


「あ、はい。まあそうなんですけど…… よく辛がりますし、辛がりすぎかなと自分でも思います。 あ、よく辛がりすぎとかも言われますね、あなたに」


「そうでしょう。辛がりすぎなのよ」


「辛がりすぎ…… とおっしゃられても…… 辛いのでね…… 仕方ないよね」


「なんでこのお店にしたの? 辛いに決まってるでしょう?」


「え? だって…… 最近は少し辛いのでも大丈夫だし、そんなに辛がらなくてもいけるかなとか思ったんだよ。 だめかね?」


「いや、まああなたが辛がるのはいつものことだしそんなに気にしてはいないけどね。苦手だったら別に辛がるメニューじゃなくても良かったんじゃないかなって思ったの」


「本当に面白いよね」


「なにが?」


「もう辛がるを普通に使いこなしてるからさ」


「え?」


「いつもあなたはいろんなことを知りたがったり普通にカテゴライズされたがったりしてるよなあって思ってね。さすがいつも人は違うなあと思ったの。すごいね!」



 いつものように変なこと言ってる。


 いつものように笑いあう。


 いつものように


 わたしはあなたのことが好き。

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