第22話 鹿島さんと桜井さん②

「……」

「大丈夫? 鹿島さん?」

「……ぷ、ぷははっ!」


 俺はピクリとも動かずに固まってしまった鹿島さんの事をツンツンと指でつつきながら生きてるか確認してみた。 そしてそんな動かなくなった鹿島さんを見ながら桜井さんは大な声で笑っていた。


「……はっ!?」

「ぷはは……あ、おかえりー」


 割とすぐに鹿島さんはトリップ状態から戻ってきたくれたんだけど、でもそれからすぐに慌てた様子で桜井さんを問い詰めていった。


「な、なななな何してるの明日香!?」

「えー? 私はただ倉橋君と楽しくお喋りしてただけだけどー??」

「ぜ、絶対嘘でしょ!」


 鹿島さん俺の方に詰め寄ってくるかなと思ったんだけど、俺じゃなくて桜井さんの方に詰め寄っていた。 それにしても鹿島さんと桜井さんの話し方はとても砕けた感じだし、この二人は友達同士って事で良いのかな??


「く、倉橋君もどうして明日香なんかと一緒にいるの!?」

「え? あぁ、いや俺もただ桜井さんと楽しくお喋りしてただけだけど?」

「そ、そんな馬鹿な!?」


 俺も桜井さんと同じような事を言ったら鹿島さんはとても驚いた表情をしていた。 そしてそんな鹿島さんの様子を見て桜井さんはまたケラケラと笑っていた。


「あはは、本当に知佳は面白いなぁ。 いや私さー、知佳が倉橋君と面白そうな話してたの聞いちゃったんだよね」

「え? な、何の話よ?」

「あぁ、俺と鹿島さんがラブホ行きたいって話を桜井さんに聞かれてたみたいでさ」

「え……えっ!?」


 そう言うと鹿島さんは酷く焦った様子に変わっていった。 何て言うかな、一番聞かれたくない相手に聞かれちゃった……という感じの顔をしていた。


「まぁそれで私さぁ、倉橋君に言ってあげたんだよね。 知佳となんかよりも私とエッチした方がすっごく楽しめるよってさ」

「ちょ、ちょい待ち!! い、色々言いたい事あるけど……いやそもそもアンタ彼氏いるでしょ!」

「えー? それ一体いつの話してるのよ? もうとっくの昔に別れてるって」

「え……あ、あんた最近付き合ったばかりじゃなかったっけ?」


 そんな感じで唐突に二人による口論が始まっていった。 そしてそんな二人のやり取りを見て、俺は単純に疑問に思った事を聞いてみた。


「……ごめん、今更な事聞いちゃうんだけどさ、鹿島さんと桜井さんって友達同士なの?」

「そうだよー」「いや違うわ!」


 そう聞いてみたら桜井さんは肯定してきたんだけど、鹿島さんは思いっきり否定してきた。 あ、あれ? これって結局どっちなの??


「あはは、あのね、私と知佳ってあれなのよ。 子供の頃からずっと近所に住んでる同士でさ、いわゆる幼馴染ってやつなのよ」

「いやこんなヤリ〇ンな遊び人と幼馴染なんて私は嫌なんですけど」

「あはは、知佳も言うようになったねぇ? そんな遊び人にいつもエロ本やらエログッズを買ってきてくれって頼んでたクセにさぁ?」

「わーわーわー!! な、何言ってんのよアンタは!!」


 あぁなるほど、二人は幼馴染の関係だったのか。 だから仲が良い……いや犬猿の仲っぽいから別に良くはないのかな? 多分だけど俺と姫子みたいな関係性なんだろうな。


「へぇ、なるほどね。 二人は幼馴染の関係だからお互いの彼氏事情を知ってたんだね」

「うん、そうそう。 まぁ、知佳に彼氏出来た事なんて一度も無いけどさ」

「う、うるさいな! いやでもアンタ……先月に新しい彼氏出来たって写メ見せびらかしてきたばっかりじゃないの。 別れるの早すぎでしょ!」

「あー、いや付き合ってみたはいいんだけどさ、束縛強すぎて無理になって別れちゃった。 顔とエッチは最高の彼氏だったんだけどさぁ、でも私の私生活に口だしてくる男は無理だから速攻で切ったわ」

「も、もっと彼氏を大事にしなさいよアンタ……」

「いやでも束縛系の彼氏はしんどそうだから仕方ないんじゃない? お互いに自由な時間は欲しいだろうしさ」

「お? 倉橋君わかってくれるの? いやぁ、嬉しいなー! そういう事を言ってくれる男の子って全然いないからめっちゃ嬉しいよ!」


 俺がそう言うと、桜井さんは笑いながらとても嬉しそうにそう言ってきた。


(それにしても……)


 でも何だか桜井さんの話を聞けば聞くほど、桜井さんは陽キャな遊び人って感じの子なんだな。 そしてこういうタイプの女子がこの逆転世界だと男子からモテるんだろうなとも思った。

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