第4話 双極性障害の治療

双極性障害は、早期に(←ここ重要)治療を開始すれば、症状をコントロールしつつ普通の生活を送ることができる。

逆に言えば、一生のお付き合いになる。


双極性障害だけではなく、精神疾患には「完治」はない。

ゴールは「完治」ではない。いわゆる普通の人と同じように生活ができることや、社会の中で生きていける状態、いわゆる「寛解」を目指して治療をする。

双極性障害の治療の柱は三本柱。


①躁状態を抑える

②うつ状態からの回復

③再発の防止・安定した生活の維持


双極性障害は、再発を繰り返す度に次の再発までの期間が短くなる。ひどくなると数日単位で躁状態やうつ状態が入れ替わってしまったり(≒ラピッドサイクラー)、心はうつ状態なのに身体は動けるといった混合状態になってしまう。


そして、悲しいことに自殺率が高いのは、この「混合状態」の時とされている。

心は鬱々としているのに身体は動けるのだから、行動に移せてしまう。ある意味納得である。


もしくは、躁状態からうつ状態に転じてしまった時ともされている。

これは、躁状態で自分がやらかしてしまったこと(人間関係のトラブルや浪費、等々)に対する深い後悔がうつ状態に入った時に一気にやってくることが一因とされる。


そのような致命的な気分の振れ幅になってしまわぬよう、双極性障害における継続的な治療は、不可欠なのである。


では、どのように治療をしていくのか?


①薬物治療

特に双極I型の薬物治療は、長期間にわたる薬の服用が必要になる。

治療には、気分安定薬や抗精神病薬が使われる。しかしながら、薬をきちんと服用できなければ意味がないので、まずは病気を受け入れること、病識(病気について知ること)を持つことが第一歩になる。


そして初めて、「あ、薬は大切なのね」と気付きを得て、安定した服薬につながる。

きちんと服薬をすることで、症状を安定させたり、コントロールしながら、日常生活だったり社会の中で生活することができる。


気分安定薬は、双極性障害の「躁状態」と「うつ状態」の治療・予防に効果がある。双極性障害の治療を行うにあたって、基本となる。


抗精神病薬は、気分安定と併用することによって、主に躁状態の治療に効果を発揮する。


②対人関係療法


1.心理教育

疾患について正しく理解し、病気を受け入れ、コントロールができるようになることを目的とする。日々の自分の気分や症状をメモ書きや日記に綴ることで、自分の症状の波を客観的に捉えることができる。


2.家族療法

双極性障害に対する家族の理解を深める。

治療にあたっては、家族の協力も不可欠となるため、家族が協力して病気と向き合えるようにすることが目的。再発を防止するためには服薬を継続することや、家族の協力がとても重要となる。

激しい躁状態は家族にとっても大きな負担となることも多い。病気によるものだとわかっていても、負の感情を抱いてしまう。そして、悪循環に陥ってしまう。家族療法はこのような悪循環を断ち切る目的もある。


③認知療法

うつ状態では考え方が否定的になり、自分を責めてしまいがちになる。「○○ができなかった」でなく、「△△はできた」と肯定的に捉えられるように、言わば「思考のトレーニング」をすることで、うつ状態を乗り切るための考え方を身につけることが目的。


④対人関係・社会リズム療法

双極性障害では、生活リズムの乱れが症状の悪化を招く一因となる。この治療は、人間関係でのストレスや、この病気と共存することによるストレスを軽減するための対人関係療法と、社会生活のリズムを整えることを目的とした社会リズム療法を組み合わせている。

対人関係療法は、家族や職場・学校の仲間、友人等との人間関係を回復させ、再発を防ぐために行う。対人関係が良好になることで、周囲の病気への理解にもつながり、治療の動機づけと症状の改善につながる。

社会リズム療法は、起きた時間や食事の時間、睡眠時間等を目に見える形で記録しておくことで、気分の波を客観的に捉えるきっかけとすることが目的。

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