強制ハーレムな世界で、元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす@ゲームデザイナーの書き物

1stフェーズ 始

No.1 ぐるぐる巻きの転校生


 春が過ぎ、少し夏の暑さがで始めた頃。1人の少女が慌てて玄関で靴を履いていた。


「ほらジーナちゃん、お弁当」

「ああ!ありがとうおばあちゃん、それじゃあ行ってきます!」

共に暮らしている祖母のから受け取った弁当を鞄に入れ、彼女は玄関を飛び出した。


「今日はツイてない」

走りながらそんな言葉を呟く。


 毎朝同じ時間に起き、ウォームアップをし、ジョギングかトレーニングをしてシャワーを浴びる。その後におばあちゃんが作ってくれた温かい朝食を食べる。


 それが彼女、カラ・ジーナの日常だ。だが寝過ごしてしまった。念の為にいつもアラームを設定しているがそれも鳴らなかった。寝坊する程の夜更かしをした訳でもなく、寝苦しかった記憶もない。


 頭の中でそんな事を考えながら彼女は走る。朝の街はすでに起きていて活動を始めていた。


 彼女はなるべく走りやすい、人通りが少ない道を進む。この調子ならなんとかなりそうだ。


「おわっ!!」

曲がり角を回ったところで人にぶつかりそうになる。しっかりと角にあるミラーで人がいない事は確認したが危ないところだった。


「ごめんなさい!怪我ないですか?」

「ええ!大丈夫ですよ!ご親切にどうも」

そう答える相手はツギハギのスーツを着て同じくツギハギの帽子を被っていた。


変わったデザインだとジーナは思った。だがスラリと細身で長い足を持つその女性にはピッタリ似合ってるようにも思えた。


(シャレたブランドの服なのかな?着る人選びそうだなー)


「ほら!お急ぎなのでしょう?」

「ああ!そうだった、それじゃあ!」

再び走り出すジーナ、相手の女性は帽子を降って見送ってくれた。


「ジーナ様!今日はあなたにとって最高の一日になりますよ!」


「え?」

ジーナは相手の言葉に足を止め、振り向いたがもう相手はそこにいなかった。


「なんだったんだ、あのお姉さん。って、そんな事言ってる場合じゃないかッ!」



「水道管工事の為、こちら通行止めとなっております、お急ぎの所ご迷惑をおかけします」

作業服を着たアンドロイドがお辞儀をしてそう説明した。


(工事、こんなタイミングで……)

この道を行けば学校はすぐそこだ、しかしあいにくの通行止め。


ジーナは別の道を行く。その道は通学路から外れるが、近道を通るしかない。もし先生にバレた時は工事の事を言えばなんとかなるだろう、彼女はそう考え路地を進んでいく。


「ん?なんだろうあれ」

橋を渡り始めた彼女は思わず足を止めた。


 橋の下を走る道路がなにやら騒がしい。見てみると警察が通行人や車両を止めてその道路に侵入できないようにしている。


 見ていると今度は道路の奥から複数の車両が走って来た。その車両は映画などで登場するような重厚感ある車両だった。


「おおおー迫力あるなー。いけない、こんな事してる場合じゃなかった!」

彼女は学校までのラストスパートをかける。



「門が開いてる!ラッキー!

ジーナは学校に到着した。明王学園ここが彼女の通う学校だ。


「ふぅ、間に合ったー」

教室に駆けこんだ彼女は汗を拭きながら自分の席につく。


「ジーナちゃん珍しいね、寝坊したの?」

「そう、めちゃ走ってきたよー。ていうかなんか賑やかだね、何かあったの?ハナちゃん?」


となりの席に座ってるハナというクラスメイトが目を見開く。


「え!?昨日先生言ってたじゃん!」

「あれ、そうだっけ。ぼーっとしてたかも」


ハナは身を乗り出す。

「今日うちの学校に、男子が来るんだって!!」


「だんし?」



とき同じくして学園長室。


「もうすぐ到着の時刻です、生徒たちも落ち着かない様子ですね」


「そうか、来たら茶でも出してやれ」

大きな椅子に座って話す女性。それと彼女の秘書であろうか、その二人が話していた。


「フドウ学園長、どうしてこの方を?男子が我が校に入学するのはこの上なく喜ばしいことだと思います。ですが彼は適切なのでしょうか?」

秘書の言葉を聞いてフドウ学園長が鼻で笑う。


「ふん、当たり前だ。こいつ以外に適切な奴はいない。この学園に、そしてこの時代にとってな」


「この時代?」


「50年以上前に世界から男の殆どが消滅、人類はなんとか今日まで生き延びる事が出来た。しかしその結果、この上なく窮屈な世界が出来上がった」

フドウ学園長がため息をつく。


「この男はなぁ、イエナガ、そんな窮屈さをぶっ壊してくれると思うんだ」

「ぶっ壊すって……学園長という立場が使う言葉ではありませんね」

イエナガの言葉を聞いてフドウは笑う。


「適切ではない、か?信じろ、これが一番次の世代に必要なものなんだ」


「まあ、不安な気持ちも良く分かる。こんな情報見せられたらな」

「これって本当なんですか?そもそもこんな場所が存在してるなんて聞いたことないですよ」

イエナガが手に持っている資料をみて話す。


「そりゃそうだろ、知られない為に作った場所だ」

フドウがそう言うと部屋の外から音が聞こえる。生徒たちが先程よりも一層激しく騒ぎ始めたのだ。


「どうやら到着したようだ、さあ行くとするか」

その大きな椅子から立ち上がるフドウ。



 学園の正門から大きな車両が校庭に入ってくる。いずれも頑丈そうな装甲車だ。


「ついたぞユキチカ、ゆっくり降ろすからな。少しの間窮屈だが、我慢してくれな」


 その車両から軍服のような格好をした男が現れる。自分たちの教室の窓からジーナ達はその様子みていた。


「あれが男子?なんか暑そうな格好してるね」

「どう見ても大人でしょ」

「そうなんだ、流石ジーナちゃん」


(というかあの車、朝見たやつじゃん)

ジーナがそう思った時、車両後方の扉が開く。


「なに……あれぐるぐる巻き?」

その光景に彼女は困惑した。


「目立ちすぎだ、あのバカ」

「なっ……!?」

同じ光景を見ていたフドウが額に手を当て、イエナガは目を見開いていた。


 現れたのは全身を拘束具で台に固定された男。



「彼が……!?」

「そうだ、場所も収容されてる連中の名も表に出ることはない。そこが転校生くんの出身地」

フドウたちも窓からその様子を見ていた。


「インファマス刑務所だ」


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