探偵系VTuberの成り上がり ~謎を解いて、人気者になって、お金を稼ぎます~

和田正雪

未来予知系Vtuber編

売れない女子大生作家、Vになる。


 薄々とは勘付いていたがどうやら私にはミステリ作家としての才能がないらしい。

 いや、正確にはミステリ作家として"売れる"才能が、ないのだ。

 デビュー作の売り上げは散々なものだった。そして、二作目もあっけなく書店店頭から消え、担当編集者からはシリーズ化はできないと告げられた。

 最初からシリーズ化を前提とせず単巻でも成立するような内容にしておいてよかった。

 いや、良くはない。なんにも良くない。

 そもそも売れない前提で本を書いてるのが意味わからない。


 ――なんとかしなきゃ。


 おそらく次がラストチャンスだ。編集者の我慢もあと一冊が限界だろう。

 もし次も同じような売り上げなら――私の作家人生は終わる。

 編集者は二度と企画書もプロットも見てはくれないだろう。

 ペンネームを変え、再び新人賞にコツコツ投稿を続けながら、カクヨムで編集者の目に留まるかもしれないという限りなくゼロに近い可能性に賭けて連載を続けるしかないのだ。


 そして――。

『皆さん、初めまして。名探偵Vtuberの藤堂ニコです!』


 私はVtuberになった。ミステリ作家としてではなく、Vtuberとして先にファンを獲得し、それから満を持して最後の本を出版するのだ。


     ※


 私のVとしての姿はシャーロック・ホームズ風の衣装をまとった黒髪ボブのロリキャラだ。

 名前はペンネームをそのまま使っている。

 作家としてのプロフィールは女性という性別以外に年齢も出身地も学歴も公開していないので、視聴者に先入観を与えることもなく宣伝に都合がよかった。

 実際の私は大学生で年齢もまだ19歳だし、本来の情報をある程度オープンにしても不都合はなさそうではあるものの、この活動が何ヶ年計画になるのかの見通しもつかないし、風貌や設定は変わらないのに中の人の年齢が確実に増えていくというのは視聴者の夢を壊すことになるかもしれないとキャラ年齢の15歳という設定でいくことにした。

 実際に15歳らしい振る舞いというのもよくわからないが。

 私は中学生の頃から変に大人びていて、今とあまり変わらないということもある。


 デザインは私の著作のカバーイラストを描いてくださった姫咲カノン先生にお願いした。

 デビューの時に編集者が食事会をセッティングしてくれた際に名刺をいただいて、個人での仕事も請けてくれるとのことだったので甘えてしまった。

 社交辞令だったのかもしれないが、快く引き受けていただいてありがたい限りである。


 ――ありがてぇ、ありがてぇ。もう姫咲先生には一生頭が上がらない。


      ※


 ――しかし……生配信をしても同時視聴数13って。これ宣伝になってる? 私がプライベートでゲームしてるのとなんも変わらなくない?


「チャンネル登録、高評価よろしくお願いします! またお会いしましょう!」

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