第4話 失われてしまった注文書とその行方。

 ラキアに国の事情なんかを聞いた、その翌日。

 僕はホルザックさんと一緒に、細かい作業に専念していた。

 だけど、なんか周囲の様子がおかしいことに気づいて手を止める。


「どうかしたんですかね?」


 とりあえず、やはり手を止めているホルザックさんに、声を掛けてみる。


「良く分からないが、玄関の方で、何か問題が起こったようだ」


 どれ、と言って腰を上げるホルザックさんに続き、僕もそちらに向かった。


***


「違うんです、そんなはずはないんです!確かに注文書を受け取って、持ってきたはずなのです!」


 応接室、と書かれた部屋の前に人だかりができていて、その中から女の子の悲痛な声が響いてくる。

 ……この声は、ヒィズさん?


「だが、見つからないのだろう。どこかで忘れたか、落としたのではないか?

 良く思い出して見ろ」


 それに答えるのは、グネァレン棟梁の声。静かだが、力強い響きだ。


「お前、どれだけあの紙が重要なのか、分かっているんだろ!?

 俺達の生活がかかっているんだぞ、もっと良く思い出せやっ!!」


 この声は、アロトザか。女の子に対しても容赦なく威圧するなぁ。


「そんなこと、そんなこと……」


 人だかりを掻き分けて、這ってでも先頭に出てみると、ヒィズさんが涙目になりながら胸に抱えた籠の中の何かを必死で探している。


「前に、同じように注文書をなくした時、役所から弛んでいるとか言われてペナルティを課されたって話だろ!

 お前だって、そのまま仕事続けられるか分からないんだ!死ぬ気で思い出せ!」


 アロトザが畳みかけ、真っ青になるヒィズさん。

 棟梁も、眉を潜めながらアロトザを見ているものの、積極的に止めないところを見ると、実際にアロトザの言うことは間違っていないのだろう。


「やめな、アロトザ!彼女をこれ以上責めたところで、何も出てこないよ!」


 その男気のある言葉セリフの主は、ラキアだった。

 アロトザも何か言い返そうとしたが、ラキアを見て、ぐ、と言葉に詰まる。


「しかし、この始末をどうつけるのか、決めなくてはいけないのは事実だ。

 ラキアよ、ヒィズを庇うのは良いが、どうするつもりなのだ?」


 棟梁の言葉に、今度はラキアが詰まる。

 ……というか、この職場には、皆でフォローすると言う単語はないのか。


「すみません、まずはヒィズさんから、役場からここまでの行動を聞いて、それで皆で手分けして探してみるのはいかがでしょう?

 ここで話し合っていても、何も進みませんよね?」


 こそこそとヒィズさんの側ににじり寄った僕は、ひょっこりと立ち上がり、そう提案するのだった。


***


 ぺたりと耳を前に伏せながら、か細い声で語ったヒィズさんの話によると、役場で今日の注文書を受け取った彼女は、丸められたその紙を籠に入れて、寄り道することもなく真っすぐにこちらに来たのだそうだ。買い物等はおろか、お手洗いにも行っていない、らしい。

 それで注文書が無くなるのもおかしな話だが、この期に及んで嘘をつくとも思えない。


 とりあえず、手の空いている者は、一緒に探しに来てくれることになった。

 主に女性陣だったが、ホルザックさんに断りを入れた上で、僕も立候補して参加した。


「ヒィズの残り香はあるものの、紙の匂いなんかは特に感じないのよね……」


 一緒に探しているラキアが、困ったようにつぶやく。

 同じく一緒にいるトルベツィアさんも、同様に何も感じないようだ。

 僕はもとより、匂いで追跡なんてできない。無力だ。


 ヒィズさんは、青い顔をして俯き、今にも消え入りそうな雰囲気を醸している。

 尻尾もだらんと下がって、完全に地面に擦ってしまっていた。


 三度目くらいになるが、もう一度、ヒィズさんが歩いたと言う道を辿る。


 まず、役所。石積みの、立派な建物。

 この世界にガラスはないが、透明度が高く加工をしやすい鉱石があるとかで、これを磨いたものを窓に嵌めているのを見ることがあった。

 ひどく高いと聞いたが、これをふんだんに使用しているのが、この役所。

 いかに金が唸っているのかが、良く分かる。


 この立派な役所を出て、大通りを避け、細い路地に入る。

 大通りを歩くと、たまに嫌がらせを受けることがあるらしい。

 裏路地に入れば、人が少ないので、いざとなったら駆け抜けてしまえば人間はついてこられない、だから大丈夫。とか言われた。

 駆けた拍子に落としたということはないの?と聞いたら、その日は駆けなければいけない嫌がらせなど受けていない、と回答があった。

 彼女の籠は深い。これに巻いた紙を縦に入れていたら、普通に考えたら落とすことなどないだろう。


 路地を抜けると、小さい広場に出る。

 見覚えがある。僕が最初に逃げ込んだ広場だ。

 商店や飲食店がありまばらに人が居て、あと子供が遊んでいる。

 広場には小さな水路が用意されており、それが中央の水場に流れ込んでいる。

 これは、近くの川から引いたものだそうで、誰でも自由に使えるそうだ。更に、少し離れた場所には、馬などに水を飲ませたり、軽く汚れを落としたりできる小さな水桶も準備されていた。


 水場の近くには、子供が数人寄り添って、泥をこねて遊んでいる。微笑ましい光景だなぁ、などと思い眺めていると。


「あ、狼人がいるぜ!お前ら、こんなところに何しに来たんだ、どこかにいっちゃえよ!」


 そう言ってラキア達に泥を投げようとする。悪ガキだった。

 その子供に向かい、ラキアがギン!と一睨みすると、一瞬硬直した後に泣きながら走り去ってしまった。      


 ……なるほど、本当に狼人は嫌われているし、子供にこんなことされたら、反撃もできないし、困るよなぁ……

 ヒィズさんが、人間に苦手意識を持つのも、理解できる気がした。


 広場を後にした僕たちは、そこから路地に入り、工房の前までたどり着く。

 およそ十五分程度の道のりか。なるほど、落とすはずもない。


「誰かにスられた、とかいうことはないの?」

「財布も盗らずに、巻き紙だけ持っていくスリが居るとは思えないわ」


 なるほど、道理だ。


「それに、狼人は人族よりも遥かに鋭い感覚を持っているからね。

 玄人のスリでも、私達から気配も感じさせずに抜き取れるとは思えない。

 まして、大通りで人混みの中を歩いていたわけでもないのだし、ね」


 トルベツィアさんが補足してくれる。

 しかし、そうすると、なぜ注文書はなくなったのか。


 工房に入り、協力してくれた皆で、それぞれ報告をした。

 収穫ゼロ。この道筋で、失くす所が見当たらない。

 話を聞いたグネァレン棟梁は、結論を出さざるを得ない。


「止むを得んな。役場に、注文書を紛失した旨を届けよう。

 何らかのペナルティがあるかも知れないが、起こってしまったことは仕方がない」


 そこで一旦、言葉を切った棟梁は、ヒィズさんを見て、再び口を開く。


「ヒィズ、場合によってはお前に何らかの措置があるかもしれん。

 それだけは覚悟しておいてくれ」


 その言葉を聞いて、尻尾がピンと立ち、対照的に顔は真下に向け俯く。

 その”措置”とやらが何かは知らないけど、青くなり今にも泣きそうなヒィズさんの顔を見て、かなりよろしくない事であるのはわかった。


「ちょっと、仲間を見捨てる気?こんな時こそ、皆で庇うべきでしょう?」


 青くなったヒィズさんと対照的に、紅潮したラキアが訴える。

 しかし棟梁は、そんなラキアを見て、残念そうに言う。


「確かに、ラキアの言うことはもっともだ。俺だって、そう思う。

 だが、俺は皆の生活を守らなくてはならない立場だ。その立場から言うと、明日には報告が必要だと考えるし、正直に報告せねばならん。

 その結果、どのような沙汰が下るか、という話だ」


 その言葉を聞き、悔しそうに顔を歪めるラキア。

 反論のしようがない。


「あの、ちょっとすみません」


 そんな中で、とりあえず、僕が手を上げた。


「明日、報告が必要にせよ、もう一度だけ、探させていただけませんか?

 何か引っかかるのです。今夜、一晩考えて、もう一度探したいのです」


 そんな発言をした俺を、厳しい視線で見るグネァレン棟梁。

 でも、ここで退くわけにはいかない僕は、その視線を受け止める。

 正直、怖い。ちびりそう。


「……明日の、五の鐘午後一時くらいまでだぞ。

 六の鐘が鳴るまでには、役所に報告をせねばならんからな」


 なんとか猶予を貰えた僕。

 だけど、ただでさえ多数の狼人から白眼視されている僕が、ここで成果を出せなかったら、ヒィズさんだけでなく僕の立場もないだろうなぁ。

 それでも、あの悲壮な雰囲気のヒィズさんを見たら、どうしても足掻きたかった。


 ……明日が勝負、か。

 小さくため息をついて、僕は拳を軽く握る。


***


 夜。

 満月に照らされた路地を、ラキアと共に歩く。

 もう一度、ヒィズさんが通った道筋を一緒に確認しよう、と互いに言い合ったのだ。


 日差しが強いが乾燥していて過ごしやすい昼間に対して、夜は空気が冷え、肌寒さを感じる。靴音が冷え冷えとした空気に響き渡る中、二人で歩く夜道は、僕にとってはとても大切な時間だ。

 ヒィズさんのことを考えると、そんな浮ついた気持ちで調べることは、彼女に大層申し訳ない気がするのだが。


 僕のそんな気持ちとは対照的に、隣で歩くラキアの目は鋭く光り、何物も見落とさないという気概を感じる。

 よく、猫の目が暗闇で光ると言うが、狼もそうなのだろうか。犬は本来、夜行性だから、夜目も効くのだろう。僕は凡人であるため、正直何も見えない。


 見えないから、僕は考える。

 日本でシステムエンジニアの仕事をしていたときだってそうだ。

 一見、無理に思える課題でも、地道に筋道を立てて考えて行けば、案外回答が見つかることがあった。

 今回の件も、紙が空中に消えることがないのなら、どこかに落とし穴があるはずなんだ。そして見落としは、大体は先入観が原因にある。


 僕達の先入観はなんだ?


 そんなことをしながら歩いて、僕達は広場に出る。

 当たり前だけど、ここに来るまで、新しい発見は何もない。

 少し焦りを感じながら、路地と広場の間に立ち、周囲を見渡す。


 広場。水場。商店。人々。水桶。子供達。


 そういえば、子供達に泥を投げつけられたな。

 あいつら、狼人を見ると、相手が大人でも関係なく、あんなタチの悪い悪戯をするのか。


 ふと。

 そんなことを考えていたら、僕の頭にあるストーリーが浮かび上がった。

 可能性はあるだろうか?

 しかし、人の悪意、それも悪戯心というのは、時に無邪気に人を追い詰める。


 僕は、ラキアに声を掛け、その思い付きを話し始めた。


***


 翌朝、鐘四つ午前十一時頃に、ヒィズはとぼとぼと歩いていた。

その目は泣きはらして目じりが赤く腫れあがっており、俯いた顔から、時折、滴がぽたぽたと地面を濡らす。

 耳は完全に伏せられ、尻尾は完全に垂れ下がっていた。

 足をやや引きずるように広場に入ってきた彼女は、少し顔を上げて見渡す。

 太陽の輝きを受け、潤んだ目が光るのが、遠目にもわかる。


 酒も扱う雑貨屋の軒先に座ったトーナ爺さんは、その若い狼女の様子をみて、こらえ切れずニヤリと嘲りの笑みを浮かべてしまう。

 最近、暇で仕方がなかった。狼人が困る様子を見るのは、格好の気晴らしだ。

 昨日、同じくらいの時間に、あの狼女の籠から抜いてやった紙片。

 かなり重要なものであったと見える。


 ニヤニヤ笑いを隠しながら、安酒を舐める。

 金もなく、最底辺の酒と塩くらいしか楽しみがない爺さんにとって、これはいいツマミであった。


「すみません、チョットよろしいでしょうカ」


 そんなトーナ爺さんに、珍しく声をかける者がいる。誰だ?

 顔を少し持ち上げ、胡乱な目で眺めると、相手は旅商人か何かのような風体だ。ふん、余所者かよ。

 素早く頭に目を走らせるが、黒髪はむき出して耳を隠している形跡もなし。

 人族で間違いはないだろう。


 男は少し困った様子で、トーナ爺さんに話し続ける。


「ワタシは行商人のシンと申すものデス。

 役所に行かネバならないのデスガ、道に迷ってしまいマシタ」


 言葉のイントネーションが少しおかしい。地方の訛りだろうか。

 いま、あの狼女の様子を見るのが楽しいのだ。邪魔しないで欲しいものである。


「ヨロシければ、道案内をおねがいデキますか?

 お礼として、ワタシの商品の酒をお分けできマス」


 酒!

 良質な酒であろうか。それはいい。

 狼女を見ているのもいいが、良い酒をたらふく飲めるのなら、それに越したことはない。


「仕方ねぇなぁ。ちゃんと酒はよこせよ? 」


 よっこらせ、と腰を上げるトーナ爺さん。


「ありがとうございマス。

 ところで、あの女性が困っているようデスガ、助けなくてヨロシイのデスか?」


 そう言って、狼女を指さす行商人。

 まったく、余所者は分かっちゃいねぇ。あれは、人間様よりも獣に近い、野蛮な生き物だというのに。

 トーナ爺さんは大げさに溜息をついて、行商人にも言ってやらねば、と考えた。


「あんた、わかってねぇな。

 ありゃ、狼女だ。まともな人間じゃねぇ。ほっときゃいんだ」


 けっ、とばかりに悪態をつく。

 それを聞いたシンという行商人は、驚きに目を見開く。


「そうなんデスカ?広場に入ってくる前に、私は彼女に声をかけてしまいました。

 なんでも、役所から貰った大切な書類ヲなくしてしまったソウで」

「ふん、狼だから、うっかりしているんだろ。獣風情など、使いもできやしねぇ」


 そう言って歩き出すトーナ爺さんの背中に、気になる言葉が続く。


「ソウですか。その書類、公文書というコトですよね?

 可能でアレば、私も買い取りたいくらいぐらいデスのに」

「あぁ?なんだって余所者のお前さんが、そんなもんを欲しがるんだ?」


 好奇心につられて聞いてみると、行商人は悪い笑みを浮かべて言う。


「公文書は、特別な紙が使用され、その筆跡も重要。

 ちょっとした御用の書類でも、イロイロと参考にするとか、流用できるです。

 イロイロと、ね……」


 そう言って、ニヤニヤした行商人はトーナ爺さんの耳元に口を寄せ、悪魔のように囁いた。


「もし、アナタもそういう書類があれば、売ってイタダケませんか?

 絶対に口外しなければ、高く買い取りますヨ」


 そう言って、懐から重そうな袋を出し、じゃらつかせる。

 中から金属音が聞こえ、相応の硬貨が入っていることが窺えた。


「……実は、俺もひとつ、持っているんだ。金になるなら、話に乗るぜ」


 そのトーナ爺さんの言葉に、シンという行商人ココロは、ニヤと人の悪い笑みを浮かべた。


***


「確かに、これは本物のようだ」


 日常的に本物の発注書に接しているグネァレン棟梁は、取り返してきた書類を見て、本物であると断定した。

 それを聞いたヒィズは、ぼろぼろと大粒の涙をこぼし、緊張を解く。


「しかし、何だってその爺いはヒィズからスったんだ?」


 ココロの活躍を聞いて面白くないアロトザが、不満気に聞く。


「爺さんを問い詰めたところ、悪戯だったそうです。

 最初、広場に入ってきたヒィズさんに向かって子供たちが泥を投げつけて、ヒィズさんが水飲み場で汚れを落とそうとしたそうです。

 それを見た爺さんが悪戯を思いついて、別の子をけしかけて更に泥を投げさせたそうで、その隙に濡れないように少し離して置いてあった籠から盗んだ、とか。

 更にバレないよう、わざわざ靴を脱いで足音を消して。

 随分と、手の込んだ嫌がらせでした」


 ココロが説明した。

 それを聞いたアロトザが追求する。


「そんな話は聞いてねぇぞ。なんで言わなかった、ヒィズ?」


 びく、と怯えるヒィズに代わりに、これも僕が代弁する。


「昔からそういった悪戯を日常的に受けていた彼女にとって、それは特別なことでなく、意識も籠から離していなかったから、関係ないと思ってしまったのですよ。

 わざわざ靴を脱いで足音を消して、書類だけ抜くなんて思いませんものね。

 それに、子供たちに泥を投げられたなんて、あまり言いたくはないですよ」


 それを聞いて、更に何か言い募ろうとしていたアロトザだが、ラキアが一睨みすると続けられず黙ってしまった。


「しかし良く、その爺さんに目を付けて、奪い返せたね?

 言ってはなんだけど、それほど目端が利くとも思えなくてさ」


 なかなか辛辣な感想を言ってくれるトルベツィアさん。


「はい、僕だけでは無理でした。

 ただ、もし悪意の大人がこの件に関与しているなら、困り果てたヒィズさんを見たら、怪訝な顔をするより前に、ほくそ笑むだろうと思ったので、隠れてラキアに観察してもらったんです。

 あの広場にいた大人で、いきなり悪そうに笑ったのはあの爺さん一人。

 それで僕が確認して、あの爺さんの家まで一緒に行って、玄関先で交渉している間にこっそり忍びこんでラキアが取り返してくれたのですよ。

 本人から力づくで奪い取ったら、悪いのは向こうでも、こっちもタダじゃすみませんからね」


 だから、わざわざヒィズさんに泣き化粧をしてもらい、目薬をつかって泣いているフリまでさせて、さらに落ち込んでいる演技までしてもらったのだ。


「いいだろう。この仕事の遅れを取り返せれば、それで問題ない。

 ヒィズ、お前も手仕事を手伝え、それでチャラだ」


 棟梁の一言で、全て解決した。


 良かった、とほっと一息ついている僕に、ヒィズさんが寄ってきてくれた。


「あの、本当にありがとうございました。

 今回は、もう、どうして良いかわからなかったので、本当に助かりました」


 顔を真っ赤にして、正面から目を見て言われると、こっちまで照れる。

 頭の上でぴくぴく動いている、先っちょがへにゃんと垂れた耳を見ながら、僕は言葉を返した。


「いえ、とんでもないです。

 皆で協力して取り返したのだし、運が良かったんですよ。

 でも、人間にも、僕みたいな者がいると思ってくれれば、嬉しいかな」


 そう言って笑いかけると、ヒィズさんは、ニコリと満面の笑みで、頬を少し赤らめながら言ってくれた。


「いえ、他の人間はまだ信じられないけど、ココロさんだけは信じます。

 これからも、仲良くしてくださいね!」


 そう言うと、彼女は僕の手を、両手でしっかりと握ってくれた。


 あれ、そういえば女性の手を握るのは初めてなのではなかったか、などと考えながら、醒めた目で僕を見るラキアに気づかずに、ひとり浮かれていたのであった。

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