第46話空の道

理久とクロは、アビの家での昼食をキャンセルして、至急アビを連れて帰城する事になった。


一刻も速く、理久の世界とクロの世界を結ぶ魔法陣を見て対処したいと言うアビの進言もあったから。


昼食はその後だ。


これから魔法陣をどうするか話しながら、理久、クロ、アビで城内でする予定だ。


急ぐので、ドラゴンを飛ばして帰る事になった。


理久とクロは同じドラゴンに跨り、後ろからクロが理久をガッチリ抱いてくれる。


理久達の乗ったドラゴンの後ろに、レメロンとアビが各自ドラゴンに乗りついて来て、その前後を、同じく各自ドラゴンに乗る私服の獣人騎士数人が警護で固める。


その他の獣人警護騎士達は、各自それぞれの方法で地上から帰城になった。


空を飛ぶので、理久もクロもマントのフードは、首元でがっちり紐で結ぶ。


「理久!飛ぶぞ!」


クロが声を掛けた。


「うぉっ!」


ドラゴンの急浮上に理久は驚く。


しかし、ドラゴンの乗り心地がとにかく良い。


クロの手綱捌きが上手いからだろうか?と理久は思う。


しかも、地上からは分からないのに、空高くに舞い上がると、東西南北にどこまでも延びる長い白い線がいくつも空に描かれていた。


クロに聞くと空の道らしく、ドラゴンは空に上がると、必ずこの広い空の道を利用しなければならない。


一つの道に4線あるが、それぞれ反対方向に向かう2線ずつに分かれ左側通行らしい。


理久達は今は、王族のお忍び行動なので、一般人と同じルールを守る。


(日本車と一緒かぁ…)


理久はそう思いながら、だから地上から空を見たら、ドラゴンが整然と列をなして飛んでいたんだと納得した。


空の道の中は、風が穏やかだ。


この空の道も、魔法使いが描いたとクロは理久に言った。


この世界は、理久が思う以上に魔法に溢れてる。


そして、大好きな上獣人王のクロに抱かれながら一緒にドラゴンに乗り空を飛んでいるなんて…


理久には夢のようだった。


だが魔法と言うフレーズである事を思い出した理久は、背後のクロに聞いてみた。


「クロ…あのさぁ…さっき、どうして…俺と偽者の俺の違いが分かったんだ?」


すると、クロが理久を抱く力が強くなった。


「俺達獣人は、人間と違い野生の感が鋭い。あの偽者は、理久と目つきや雰囲気が違って見えたし、獣人は臭覚も鋭い。あの偽者の理久は、お前と少し違う匂いがしたからすぐ分かった」


クロの声が優しい。


そう言えばアビが、理久と偽者はどんなに似せてもどこか違いが出来ると言っていたのを、理久は思い出した。


そして、聞いてみた。


「俺って、どんな匂いする?」


クロは、理久をくんくん嗅ぎだし、その後理久の体をぎゅっとして言った。


「理久の匂いは、とても甘い…甘くて俺は狂いそうになる…」


そう言えば理久の世界で獣姿の犬のクロは、理久をくんくんするのが大好きだった。


暇さえあれば、理久に対しかまってくれとかまちょ攻撃と、理久をくんくんくんくん、くん活していた。


理久がクロの名前を、くんくんに改名しようと思った位だ。


それを思い出し、理久はふっと笑みを浮かべた。


「でも今は、こんなに俺と一緒だから俺の匂いも理久からするはずだ。でも、もっと理久に俺の匂いを付けまくって、理久はこの俺のモノだと…城の獣人が理久に手を出さないようにしないとな…」


クロが、手綱をコントロールしながら、器用に理久の後頭部に頬ずりする。


そして次にクロの上半身を、密接してる理久の背中に擦りつけるような行動をした。


「えっ…そんな事しなくても、俺は大丈夫だと思うけど…」


理久は、クロのスキンシップに顔を紅くしながらも、相変わらず性分で呑気に答えた。


「理久は、もっと自分の事を知った方がいい。理久の世界じゃ…男前をイケメンって言ったっけ。理久はイケメンでかわいい。俺が理久を一目見て恋したように、城の中の者でも、もう理久を一目見て好意を持った獣人は必ずいる」


「ハハっ…いるかなぁ…そんな人?」


すると…


クロの、男の色気ダダ漏れの声が、更に甘々になって囁いた。


「理久…この後すぐ2人で理久の世界へ行って理久の両親に結婚の許可を貰ったら…すぐに全裸の理久に俺の匂いを付けたい」


「えっ!」


理久とクロの下半身もぴったり密着していて、そんな声でそんな事を言われ、理久は心臓が跳ね鼓動が速まる。


そして、理久の体温も、特に下半身が上がった。


だがそこに、更にクロがとろけるように囁いた。


「理久…今度こそ…俺に理久を食わせてくれ…ベッドの上で…」


「えっ…」


理久は、体が高揚し過ぎて思わずブルッと震えた。


「理久…」


クロが、強く優しく理久を抱き締めた。


もう、理久に迷ったり戸惑う理由が無い。


「うん…クロ…好きなだけクロの匂い、俺に付けてくれ…沢山付けて欲しい…」


理久はそう言うと、クロにもたれかかった。


「理久…」


クロは、満面の笑みを浮かべて、理久のフード越しの後頭部にキスをした。


相変わらず理久は、人前でのクロの愛情表現には戸惑ったが、これくらいなら速く慣れないといけないと思う。


「理久…城に帰ったら、理久の唇に沢山キスするからな…」


クロはそう又甘美に囁やき、もう一度理久の頭に口付けた。









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る