第24話金のオルフェ

理久はずっと自分でも、失敗した時の気持ちの切り替えは早い方だと思っていたが…


今回は、なかなか上手くいかなかった。


そして結局…


クロの両親の今日一日の予定が詰まっていて…


クロの風呂や着替えなどもあり、元の豪華な朝食を再び用意して食べる時間が無かった。


大きく長いテーブルに、人数分の紅茶とサンドイッチだけがぽつんと用意される散々な結果になってしまった。


入り口から向かって奥に、理久、クロの順で並んで座る前に、クロの両親が座った。


そして、その他に二人の同席人がいた。


一人はクロの従者で、名はレメロン。


クロと年は近い感じのやはり犬系の美形獣人で、見るからに頭がキレそうな容姿で、クロの横に座った。


そして、もう一人は…


犬系獣人でなんと隣国の王子様でクロの幼馴染オルフェで、クロの両親の横に座った。


大広間は、この6人だけになった。


しかし、それにしても…と…


理久は、メンタルをやられたままで、クロを含めた回りに座る獣人達をチラチラと見た。


そして…


(これが…これが…異世界の実力か…ヤバ!キラキラして眩し過ぎる!)


獣人達の美形割合いの高さに圧倒され、更に自分の緊張感を高めてしまう。


クロもかなりの美形だが…


逞しく勇ましい感じのクロと違って、特にオルフェは、長い金髪も麗しい正に美しく上品なまるで絵に描いた様な正統派王子様だった。


「すまない…理久殿、アレクサンドル。オルフェが、どうしても二人に会いたいと言ったもので連れて来た」


クロの父がそう申し訳無さそうに言うと…


オルフェは、クロに向かいニッコリして言った。


「すまない、アレク…本来私は来るべき立場では無いし、おじ上、おば上にも断られたんだが…お前が愛してる人間がどんな人間が、どうしても見たくて…おじ上達に何度も頼み込んだんだ」


(愛?!愛してるって!…)


理久は、自分の事を言われているのと、日本男子にとって直球過ぎるフレーズに顔を赤くし固まる。


「お前は、俺…いや、私の兄弟も同然だ。よく来てくれた!新ためて紹介する。私が愛してる理久だ!」


クロの方はそう言い理久の肩を抱き、オルフェにニコリと微笑んだ。


「はっ…初めまして…り、理久です…」


理久は又、「愛してる」というフレーズを、しかもクロから聞き、動揺し顔を更に真っ赤にしながらなんとか挨拶した。


オルフェは、理久を真顔で見たと思うと、又クスっと微笑んで言った。


「オルフェだ、どうかよろしく。理久殿。私とアレクはとても、とても、本当に深く長い付き合いなんだ…」


だが、理久はこの時ビビッと来た。


そう…まるでラノベの主人公のごとく僅かこの一瞬で…


オルフェがクロに向けた視線と理久に向けたそれの違和感にも気付いた。


(オルフェさんって…もしかして…もしかして…クロの事…)


オルフェがクロが好きで、理久に恋のライバルのフラグを立てている事が分かってしまった。


理久は、心臓に悪い激しい動揺を隠してクロを見た。


「ん?どうした?理久」


しかしそれは、クロ自身は気付いていない様で、理久に優しく笑い掛けると…


テーブルの下で、理久の膝の上で理久と手を繋いできた。


「いや…何でも無いよ…」


理久も笑みを返し、握り返したクロの手の温もりにかなりほっとした。





















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