第5話ベッド

理久の唇に、ベッドサイドに立っていた男が上半身を傾けて又口付けた。


「うっ…んん…」


理久が瞠目して驚愕すると、男は、その隙に今度は舌を入れてきた。


そして、更に、男も口付けしたままベッドの上に上がって来た。


「うっ…んん…」


理久は、必死で抵抗したが、男の猛獣のような力の強さには全く敵わない。


それ所か、キスは激しさを増してきた。


お互い上半身を起こしたまま、理久の逃げる舌を、男の舌が追って捕え…激しく絡ませられる。


「ぷちゅっ…ぷちゅっ…くちゅっ……」


艶めかしい水音がしてくる。


そして…


未だ抵抗する理久と、男の息が、かなり上がってきた。


やがて、男の手が、理久のズボンのフォックに手をかけた。


その瞬間…理久は、貞操の危険を感じ、キスの合間叫んだ。


「待て!」


同時に理久の開いた手の平が、男の前に出される。


これは完全に、理久がクロにしていた躾けのステイのポーズそのままだった。


理久の中の、もしかして男は本当にクロでは無いか?という思いからの一か八かの賭け。


男は目を見開き、一瞬にして理久から唇を離し、理久のズボンからも手を離した


そして、ハアハアと息を弾ませながら、あんなにピンと立っていた頭の上の耳が倒れ、ブンブン振り回していた尻尾がしなだれた。


「待て!待てだ!」


理久は、尚も男の青眼を見詰め、強い口調で続けた。










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