003 起きたら知らない天井って。

 「????」

 目が覚めたら、え〜とどこだっけ。ここ。

 しばらくぼ〜っとしていたら、だんだん思い出した。そういえば、これだけは作るっていう夢を見たと思ったけど、現実だったとは。まさしく夢中で・・


 ものすごく、不安ながら見回ると、階段がちゃんと上まであって、手すりまで付いてる。細かいところは全部抜けているけど、変なところは無いみたい。まあ、設計ですごく考えた。何度も修正した。どうかなって聞く相手が自分だったけど、できあがりは丸にして良いと思う。

 何にも無くて広々。ゴロゴロし放題じゃなくて、500人だったよね。テーブルと椅子もっと。あとはドアを付けたり、花を付けてみた、部屋の中だから、コレは作り物。掃除が大変になることだけどカワイイは大事でしょ。

 

 トイレに行く。ちょっと大切な用事があるの。まず、下水につなぐ。色つきの座るところを置く。まだ急ぐ時間ではないので、ふと使ってる時を考えるとむむって思うところがある。ささっと、すごくゆっくりな空気の流れが下水に吸い込まれるようにして安心した。

 ふと、お金持ちの家のトイレには、大事なところを洗うものがあったことを思いだした。今度色々付けてみようと心のメモに書き込む。

 それにしても、この部屋では色んな事を思いつく、もっと快適にしたいな。

 ちいさなお部屋はいっぱいある。それをまとめた部屋がふたつ、これは決まりだからって聞いたことがある、忘れていたらきっと怒られた。セーフ。


 次は調理のとこ。この建物は食堂の予定、広いの。僕は料理するの好きだから、流れ?とかは、ちょっと分かる。いつもこっそり使ってた。いっぱいで調理してるところは何度も見てるから、ダメなところは分かる、工夫した。ダメって思ったのは道具の部屋。お弟子さんが言われたものを持ってくる。洗って、また置きに行く。変なのって思ってた。

 手に届くところにしたのが工夫。火のそばには火を使うものを置く。他もそんな感じ。基本的には一人。それを三人でやったとき、ぶつからないようにした。偶然見たあの惨事は起こらない。


 他にも、何というか身だしなみを整える部屋を作ってみた。手を洗うから手洗い。鏡はまだ、あとで。

 臭いのはキライ。どれにも下水からのにおいを止める工夫をする。逆流しない仕組みで出来るようになるはず。


 次に、上水の仕組みを作る。今はサービス期間中なので、特上も付ける。上に設置した水槽からの管をつなぐとカッコイイ蛇口から水が出るようになる。特上はもちろん、特上の。ウキウキと飲んでみると期待を越えたおいしさに驚いた。あの深い森や山脈を時間を掛けて届けてくれた水の想いを感じる。みんなに飲んで欲しいなって思う。

 特上サービス期間は長く続く気がした。排水も大丈夫。改良はあとで。


 出て、外から見ると大きい! 周りに何も無いせいかなあ、木が育って良い感じになるかなあ。

 ここだけでも町っぽく見えるように、ぽんぽんと手前にコの字型に建てた。

 ん・いい感じ。大きさは同じ。三階建て。食堂は1階が2階分ある。集まる場所は広々で高〜いが良いからね。でも2階が遠い。食堂じゃ無い方は、小さい調理室とトイレが各階に。トイレの小部屋を10コ作って、ああって気がついて慌てて真ん中に塀を入れたのは秘密。ごまかすのは得意。


 囲まれた広場は、石畳。花の模様になっている。色もちゃんと。キレイ、前にもやってて、気に入ってる。

 日々にちょっとの楽しさは必要だしね。

 もちろん井戸もある。かっこいいのにした。訪れた人がお金を投げ入れたら面白いなって思ってて、井戸はダミー。悪い人は井戸に毒を入れて住民を弱らせる。そうしてから効かない薬を高く売ったり、戦争だと殺すために入れる。毒が近づくと変なにおいを飛ばす。百発百中で、あちこちを汚して大惨事にならないようにしてある。ここの住民なら必ず分かる。そうして捕まえられる、かなと。


 ここだけ建物がある。あと原っぱ。ひたすら広々。この差にきっとというか、確実に驚く。作った僕も離れて見たら、すごいって思ったし。初めて来た人がキレイ、すごいって驚く。あと秘密兵器もある。

 いい町って心に残る。そうなったら良いなって。


 うまく出来たなあって眺めていたら、遠くで狼煙のろしが上がってる。僕の予測通りかな。ではまだ時間がある。道路は確実、アレはたぶんいける。

 もう少しだよ。待ってるって、心で言ってみた。


 次は道路。ブーブーって言わない、大事なの。ほんとなの。

 かっこいいのと耐久性でしっかりしたものを作るよ。20日ガタガタ揺られて、お尻痛かった。またちょっと痛い。穴に落ちでガクッととか、話していたらきっと舌を噛む。あの人は居眠りしてて落っこちて、隣の人が大笑いして、ケンカになってた。ケンカしてるのが面白いとか初めて。

 雨でぐちゃぐちゃ。使えなくなる時がたまにある。無理して通ったあと、道がすごくなるというのは、何か想像できる。揺れるとダメなモノもある。

 そーっとそぉっとして、すごく時間が掛かる。


 思い出してクスクス笑ってるけど、ちゃんと道路の構築は終わってる。プロのおひとり様はすごいの。


 最初に僕の背くらい掘る。幅はその3つ分。いや、6つにしておこう。

 次に大きめの石層(僕の頭くらい)、2層目はぐ〜くらい層、3層目は粘土と砂利を混ぜて、仕上げにおっきい石をぴしっと並べてある。妖精さんじゃないと、これを切ってピッタリに並べるのは大変。ありがとう。

 石畳、やっぱりかっこいいよ。

 真ん中が高くて、はしっこが低くして大雨のときでも水が脇に流れる仕組み。元ネタは、歴史の本からだけど。水はけは僕が考えた。馬車が水たまりでバシャッとしてるのをみて思いついたの。ばしゃがばしゃって・・くすくす。


 聖都でこの仕様を工事書類に混ぜておいたの。作ったのは知ってる人たち。説明はしておいたので普通な顔で作ってた。監督は気がついていない。自分で1行しか書いてないのに。10枚でびっしりで、絵とか書いてあるのにねぇ。まあそんなもん。良かったのを倍の深さにしたので耐久性は抜群。・・のはず。

 ねっ、あとで道路に何かするの無理でしょ。


 道路の脇は歩道になる。石がハマっているだけだから、掘り返すのも簡単。下の砂の層に下水管が埋まっているから、雨水やお家のとかをこれにつなぐの。簡単と言っても僕が石を持ち上げるの無理。誰かに頼む。まあ、掘り返すのは無いとは思っているけど。念のため。

 出来上がった道路は歩道付きで広いの。それがどーんと町の外まである。今までの道路はガタガタで乗ってるだけで疲れるから、すぐ分かるの。道すげえって。続いてるのあの町だ。ね、ワクワクするでしょ。


 それがちょんぼり建っている建物群に続く。遠くからだと小さく見える。で、大きな河に大きな橋が架かっていて、木で出来てるのにアーチ型じゃない真っ直ぐなヤツなの、大きな街じゃないとちょっと見ないなあって、渡って近づくと結構建物大きいなあ。なんと道は丘の上まで! おおぉって、感じするでしょ。そして横に道が続いていて。おおぉって、しつこ〜い。

 まっ。人は少ないから。これだけで、他のはあとで。

 これだけかよっ、ガッカリって・・しないよね。


 いい感じなんだけど。きっとみんなは家を欲しいって言う。じぶんの城とか何とか。お城って、お伽噺とぎばなしにある石のでしょ。ぼくが好きな。でも住み心地悪いよ、ジメジメっと。たぶんだけど。

 町はね。統一感ってのが大事。勝手にお城作っちゃダメ。土地はあげない。縄張り争いとか、相続争いでブスッとか怖い。自分のものになると、ダメ〜って言っても聞かない。そう言う人いっぱい見た。何しようと勝手だ!!とか言う。キレイなら良いけど、ほとんど変。いや、すごく変だった。だから無し。

 お家はね。作ってあげるからガマンして。良い子にはおやつが付くって。ぼくはもらったこと無いけど。


 お次は、とっておきのアレ。すごく良いらしい。出てきた人がホカホカでニコニコなので、ぼくも入ろうとしたら、すっごく怒られたアレ。あれから近づいていない。おいしいものを僕にはくれないのはいつものこと。食べ物も着るものもくれないし。だから、自分で作ってた。今度はアレを作る、僕のため。

 みんなでが良いの。ちゃんとどうぞって言う。おっきく作るよ。


 建物のおとなりに新しい建物をドーンと作った。大きさは同じだけど奥に長い。他のが四角いので手前に三角屋根を付けて、違いを出してみた。歴史書の古い時代のはイマイチで、新しい時代のにした。この時代のは僕のお気に入り。家の中では靴を脱ぐ。衛生的にはその方が良い。

 靴って、外で何踏んでるのか分かんないし。ずっと履いてると、かゆい病気があって、大変だって困っている人が多いって知ってる。


 入って、すぐ靴を脱ぐ。座って脱ぐ人が多いから少し高くしている。靴はそのままでも良いし、間違えられるの心配な人のため、入れる箱も用意した。鍵も掛かる。鍵はこれから作るので、これもあとで。たくさんあるけど、全員分は無いの。ケンカしないでね。


 作り方は分かる。ずっと入りたかったから。うれしい! ウキウキする。

 ここはちょっとスペースがある。ちょっとの待ち合わせに。きっと冬は寒い、中で待っててね。


 いよいよ、中へ。

 ガラガラって開ける。ガラガラっていうのが決まりらしく、ちょっと音が出るようにと音質も調整する。音を出すので、ここのは全部ドアじゃ無いの、引き戸。衝突トラブルも避けたいしね。

 開けると着替えるところ、というか服を脱いで仕舞う。ここにも棚を付けて蓋も付けたけど鍵はあとで。脱いだので遊んだり、においをいだりする人がいるって聞いた。気持ちが全く分からない。ケモミミってそうなの? でもね・・クンクンは禁止! 


 また扉。ここもガラガラって開ける。最後の部屋。手前が身体を洗うところ、ヒヤッとしない木っぽい石の床。自然には無い、妖精さん製の不思議なもの。

 広々と広い池がある。人の大きさは、かなり違うので奥に深くなるようにした。手前は膝くらいから、深いところでも大きい人は胸くらいかな。入り方は工夫して。でも、泳ぐのは何かイヤ。作法ということにしておこう。まあ、泳ぐ習慣は無いから泳げる人は、あんまりいないけど。


 う〜ん。広すぎるから、真ん中で分けちゃおう。半分ずつ使えば良いな。少ないときはもったいないし。何か壁ばっかり、これもあとで。それから、考えていた仕組みを付けた。きっとすごく人気のになるから洗うところは増やしておいた。天井は高い。きっと気持ちいい。すごく楽しみっ!喜んでくれるよね。ね。


 それから、丘の方に行く。広々の道が気持ちいい。

 湯源の位置は分かってる。都合良く丘から出せる。たぶん熱すぎなので湯畑も作る。見せ場にしたいから、幻想的な感じに作る。無駄にキラキラや音が出るとか、なんか飛ぶとか、良いかもしれないの。

 道々、考えながら水路を作っていく。場所はある、下水路のとこ。熱が漏れないように管は厚く作っておく。汚水が温まらないようにね。

 途中で発酵したら怖いよっ。


 丘を目視で確認、大丈夫。お湯のこと、入って楽しいこと、気持ちいい感じ(想像)をぽやぽやと頭に描いて、妖精さんから分かった!って感じがきた。

「お願いっ」って強く念じるとしばらくして、ドーン、ドドドーンとお湯が噴き出した。熱気がすごいっ。僕の周りだけ手前で跳ねて、お湯は落ちてこない。僕の設計通りに栓を付けてくれた。分かれてドバドバ流れるお湯はとっても熱くて、モクモク楽しげで。湯畑に満ちていく様子はとても幻想的でステキ。

 

 それからテクテクと降りていく。管には、まだお湯が来ていない。どっちが早いかなっ。


 ふふ〜ん。僕の方が早かったよ。

 ごめんなさい、ズルした。うれしくって途中ダッシュしたの。建物に駆け込んで2階へ、しばらく待っていたら、迫ってくる音がしてビューってお湯が出てきた。手を当てるとかなり熱い程度でいい感じに冷めている。さすが僕。上手くいくのって、うれしい。水の桶にも十分な量が貯まっているから、両方の栓を開ける。いよいよだ。


 さっき、ぴゅーって、通り過ぎたけど。2階のほとんどは、休むところになってるの。長く入ると疲れるらしいし、出たらゴロゴロしたいかなって作ってみた。ゴロゴロ出来るように草を固めた厚いマットで敷きつめてみた。柱の無い構造で広々がいい。原っぱみたい。でも、ここで寝ちゃダメ。ここに、お日様はいないから風邪引くよ。


 1階の奥に行く、池にお湯が貯まっていくの横目で見つつ、細かい調整をする。入口まで戻って反対側もやる。改良案が思いついて直す。また、反対に行って、同じ改良をする。それを何度か繰り返した。区切る前にやっとけば良かったんだけど、ワクワクで無敵の僕はただ楽しかった。


 もう来そうなので、お試しができない。

 お湯が貯まっていく。ゆらゆらとしているのを見ていて、お預けも良いなって。

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