6-6


 ハヤテの偵察ていさつによると、とかい島軍隊の最前線さいぜんせんは、町の北入口の前でとどまっているらしい。

 

 そして、軍隊の一番後ろに国王様のお神輿みこしが見えたそうだ。場所は瓦礫がれきとなったソックスの家辺いえあたり。

 

 そこから、声が届くメガホンって道具は本当にすごいにゃあ!



 ――で今。


 僕達は、何をしているかと言うと。


 『号外』を作っていた。


 号外とは、突然の事故じこ事件じけん、出来事をいち早くお知らせする新聞のことにゃ。


 はてな新聞堂が始まって以来の初の号外作り。

 兵隊さん達だってコマリの無事を確認するまでは何もしないとは思うけれど……それでも僕達はスピードを余儀よぎなくされる。


 しかし慣れない言葉に、おおいに戸惑とまどう僕達。コマリとハヤテがすごくすごーく手伝ってくれて、なんとか木箱ゲラが完成する。


 ミケランジェロさんがハヤテと一緒に最終チェックをして「よし、インク入れるぞ!」と声掛けをした。


 インク入れの準備をしつつ、新聞堂の外の原っぱを見やれば。

 ソックスがメインとなって、町の有志ゆうしの猫達と作戦に必要なペットボトルロケットを大量に作っていた。

 アズキばあちゃんの所にいた兵隊さんも、たくさん手伝ってくれていた。


 みんな一所懸命、がんばっているにゃ!



 (ΦωΦ)!



 コマリが木箱ゲラに黒インクをローラーでり、白紙を持つ僕がペタリと木箱ゲラに張り付けてがす。

 それを乾燥棚かんそうたなまで持っていくのはタマジロー先輩。

 ミケランジェロさんは出来上がりのチェック。息の合った流れ作業。


 チラリと隣を見れば、あせいて、必死にインクをり続けるコマリがいる。


 その真剣しんけん眼差まなざしに、僕はジーンと感動かんどうした。……本当に、新聞作りが好きなんだにゃあ!


 コマリは木箱ゲラが汚れない様に、ローラーを持つこうあせぬぐうと、黒インクがコマリの真っ白のほっぺに着いた。

 そんなコマリと目が合う僕。

 すると、コマリはニッコリと笑って「タノシネ!」と言った。


 だから、僕も言ったのだ。


「楽しいよ!」



 ♪(ΦωΦ)&(*ΦωΦ*‥)♪



「ロケット出来た!」

「こっちも全部れたよ!」


 僕達は出来上がった新聞と大量のペットボトルロケット、それにソックスが昨日交番で直した飛行機を台車に積み込んだ。


「じゃあ、いってきます! アズキばあちゃん、コマリの事を頼みますね!」


 はてな新聞堂でお留守番るすばんのコマリとアズキばあちゃん。

 それ以外の猫はみんなで作戦場さくせんじょうへと行く。

 アズキばあちゃんはゆっくりと頷き、


「大丈夫、ここには守り神が居るからな」

「こけ!」


 任せておけ! とばかりにマドンナも鳴く。

 真っ黒インクまみれのコマリは「ミンニャ!」とみんなを呼び止めた。

 みんながコマリに注目する。


「ミンニャ……アイガト、アイガト!! ミンニャ、オシゴト、ガンバテ!!」


「……うにゃー!!」

「まかせろー!!」

「いってきまーす!!」


 みんなパワーを貰って、コマリに手を振りながら、有志の猫達は持ち場へとっていく。


 その猫達とは入れ違いに、ヴェールをバサバサとみだしたキュウ☆ニクニクさんが水晶片手に、息を切らして走って来た。


「マメぇー!!」

「にゃっ、ま、また僕!?」


「やっと、占いの力が戻った!! 聞け、お前には【北へ邁進まいしんの相】が出ている! 行け! まっすぐ北へ行くのだ! しかしお前には【困難こんなんの相】も出ている!! その時は叫ぶのだ! その声が奇跡きせきとなってお前をすくうだろう!」


 ニクニクさんはヴェールをはためかせながら、ビシッと北を指差す。


 なんて力強い勝利しょうりへの占いエールなんにゃ。

 これは信じるしかないでしょう!!


「ニクニクさん、ありがとう!!」

「グットラック!!」


 僕はニクニクさんに、アズキばあちゃんに、そしてコマリに手を振って、はてな丘へと歩き出した。


 失敗しっぱいは許されない。


 絶対に成功させて、みんな無事にはてな新聞堂へ戻るのにゃ!!


 





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る