親族関係にからめとられて自我をなくす

中盤はぞっとしてしまった。あまりに自我がなく、彼女はなにも自分で決めず、責任を放棄することによって得られる快楽にとびついたのだ。親族関係にからめとられて自我を失い、表現という手段も、「伝える」ためでなく快楽をもたらすからやっている。でも、ほんとうは世界はそのようにできていない。それに気づいて終わる。ほっとした。
筆は克明で、虚飾がなく、それだけに美しくないものの正体がありありと見える。