ベッド

 家に着くと、時刻は22時をまわっていた。家族にお土産を渡すと、

「どうだった?」

 と母が尋ねた。

「まあまあだよ。」

 と顔も見ずに答え、すぐにシャワーを浴びベッドへと向かった。ひどく疲れていた。

 最近、元気のない僕を気にかけてくれている。僕が明るくてハンサムで、何かに才能があれば、社会からも必要とされ、親にも心配をかけずに伸び伸びと過ごすことができたのだろうか。

「誰も取り残されない社会へ」という言葉を最近よく耳にする。裕福で余裕のある家庭で育った子どもたちは、旅行や留学、習い事など小さい頃から沢山経験をし、将来やりたいことが見つける機会も多い。母子家庭の僕はお金もなく、旅行や食事を家族で行ったことがほとんどない。僕は、時間と社会と他人から置いてけぼりだ。そんなことを掲げている社会が作り上げた仕組みこそが僕を孤独にしているのだと考えていた。何もない真っ暗な天井に溜息が響いた。

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