渡辺

 僕は軽音楽部に所属している。そこで幹部としてマネージャーのような役割を担っていた。しかし、会計担当の渡辺が全く部活にも来ず、仕事をしない。僕は学校に迷惑をかけないよう、渡辺に何度も何度も提出書類の作成をラインで催促した。「わかった!」と返事はくるのだが、期日までに間に合わせる気配がない。

 部員の仲間として信じたかったのだが、仕方ないので渡辺の代わりに提出書類を作成することにした。本人名義の印鑑が必要だったり作成方法などを知らなかったりしたため、2度も不備の書類を提出してしまい、結果的に顧問に迷惑をかけてしまった。顧問に、なぜこのようなことが起こったのか文書にまとめて提出するように言われ、それも自分で書いてまとめた。

 僕は向いていないと思った。後々聞くと、渡辺は資格取得に向けて勉強していたり、遠距離の彼女に会いにいったりしていた。僕はその間、何もできなかったのに。ひどく落ち込んだ。渡辺に対する嫌悪感と自分は何てできない奴なのだという思いが頭の中を支配した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る