第六話:一体何者?


 私はその少女に注目しているとダンジョンからあふれ出した魔物たちを振るう剣で軽く一掃してしまう。

 そして魔王軍の幹部である魔人たち率いる魔王軍になんとたったの一人で立ち向かいそれを殲滅してしまった。



「な、何が起こっているのよ!? それにこの子のステータスってレベル九百九十九を超えている? スキルも何この辞書並みの量!? 称号だって英雄や勇者では無く『イレギュラー』って何っ!?」



 どうしよう!?

 こんな個体いつの間に発生したのよ!?


 ま、まずい。

 あと二日で経過確認でみんなで集まってオーブを教育係の女神様に出さなきゃならない。


 こんなパワーバランス崩す個体を発生させたなんてばれたら管理能力を疑われる。


 

 まずい、まずい、まずいぃっ!!



「一体何なのよこの子? あ、各国の王から招集がかかっている? でもそんな王たちを無視して苦しんでいる村とか町を助けまわっている? あちらこちらで救世主だと褒め称え始められているぅ??」


 本来なら各国が一致団結して魔物とか魔王軍に対抗させるつもりが何この子!

 集団行動は重要だって習わなかったの!?


「あー、完全に単独で自由行動している。こう言うのってどうしたらいいのよ?」


 私はオーブのチュートリアル項目を展開してその対処方法を探る。

 探るのだが……



「なんでイレギュラーについて何も書いてないのよ! と言うか、この基本システムでは突発した能力を持つ人間は発生しない様になっている? 勇者システムは無い? 何それ!? じゃあこれって一体どう言う事なのよっ!!!!」



 神の世界の時間と今管理している世界の時間は経過する速度が違う。

 勿論今までの苦労を水の泡にするなら過去に戻ってやり直しも出来るけど、それってものすごく苦労をする羽目になる。


 学生時代にRPGのゲームやっていてセーブを忘れて電源切って、あとで続きをしようとしてセーブがかなり前だったという絶望感なんてもんじゃないだろう。



「と、取りあえずそれとなくソミヤちゃんに聞いてみよう……」


 私は携帯電話を取ってソミヤちゃんに電話をするのだった。



 * * * * *



「あり得ないわね」


「いや、でも実際に超越者が発生しちゃったのよ! しかも称号が『イレギュラー』ってはっきりと!!」



 お昼に社員食堂の端っこでコソコソとソミヤちゃん、イズナちゃんと昼食をとりながら私のオーブを持って来て見せる。


「うわ、本当だ~。でもおかしいね? 称号の項目に『イレギュラー』なんて無いのにねぇ~」


 イズナちゃんはそう言いながら自分のオーブを操作して称号一覧を展開する。



「えっ!? なにこの機能!! 知らなかった!」



「テミア、あなたまた説明書ちゃんと読まなかったわね? チュートリアルも面倒な所飛ばしたでしょう?」


「う”っ」


 ソミヤちゃんに指摘され唸ってしまう。 

 だってどうせシステムはみんな同じようなモノだろうし、習うより慣れろって言うじゃない?

 使っているうちに機能とかは覚えればいい訳だし。



「でもまあ、このままじゃまずいでしょ? 大人しく教育係の女神様に相談した方が良いんじゃない?」


「そ、それだけは!!」



 だってあの女神様を怒らせると怖いなんてもんじゃないのよ!?

 前回の会議の資料失敗した時だってあの後プライベート時間でとことん説教を受けて、みんなには内緒だけどそのまま体でいろいろと覚えさせられて大変だったんだから!!

 危うくあの女神様を「お姉さま」とか呼ぶ羽目になりそうだったんだから!!



「と、とにかくこいつを何とかしないと!」


「また無茶ぶりするつもり? 大人しく諦めればいいのに……」


「テミアちゃん今ならまだ戻れるよ~?」




 二人の心配を振りきって私はあのイレギュラーの少女を排除しようとするのだった。


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