1章:スは「スキル」のス(第2話)

「あ、あれ…」


「ん? どうしたの国府ちゃん」


「やっぱり寿命みたいなものは数値化できないのかな~? さっちんの寿命、うまく数値化できないみたい」


「数値化できない? あたしの寿命が?」


「じゃあさ、ボクは? ボクはどう?」


「神宮ちんは…あれ? あれれ?」


「なになに? なんなのさ。ボクの寿命は見えた?」


「神宮ちんの寿命は数字化できるみたいなんだけれど…よ…400年を超えてるみたい…」


「400年だって? あははははは! そんなばかな! 単位間違えて表示してるんじゃないの?」


「そ、それはないとおもうんだけどな~。だって、神宮ちんの寿命はあと何年、って、年の単位で強く思ったからね~。それにもし、単位が日だったら、神宮ちんの寿命はあと1年余りでおしまいだ」


「うっぷす…」


「…ふう。国府ちゃん、やっぱり、寿命は駄目みたいだね」


「うん、そうみたい。な~んだ、やっぱり私の超能力、おっぱいの大きさとか、そういうどうでもいい物しか解らないんだな~。ちょっと残念」


「まあまあ。でも、色々と試して、どんなものが確認できて、どんなものができないのか、確かめてみようよ。国府ちゃんの超能力の活用法が見つかるかもよ?」


「よし国府チャン、じゃあ手始めに、クラスの男子が童貞かどうか調べていこうぜ」


「神宮ちゃん、結局下ネタが好きなんだね…」


「私の能力、数字にはできるんだけれど、イエスかノーかの2択では出せないから、やっぱり今までにエッチした回数を見るのがよさそうだね~。ふふふ」


「2年のゴブ先輩とかどう? あの人、絶対に童貞だと思うよ」


「おお~、ゴブちゃんですか。へっへっへ…ゴブちゃん先輩、覚悟してくださいよ~」




「あれ、桜に国府に神宮前じゃん。3人揃って2年の教室に来るなんて珍しいね。何か用?」


「あ、ゴブさんって、鳴海くんと同じクラスなんだっけ?」


「なんだ、ゴブリンに用なの? 桜が、めずらしいね」


「あたしが…というか、国府ちゃんが…かな」


「ちょっとさっちん、私じゃなくて、神宮ちんがでしょ~!」


「ええ? ボ、ボク?」


「お~い、栄生さこう! 喜ばしい事に、1年の女の子3人がわざわざ君をご指名だよ」


「な、鳴海くん! よ、呼ばなくていいのに」


「え? だって、ゴブリンに用事があるって…」


「そ、それは確かにそうなんスけどね、鳴海先輩…」


「はいはい、呼ばれて飛び出てきましたよ。オレに何か用かい?」


「用といいますか…なんといいますか…。まあいいや! 国府ちゃん、やってみて?」


「う、うん。やってみるね。ゴブちゃん先輩、ちょっと失礼しますね~…」


「な…なんだか緊張しちゃうな。女の子たちに、こんなにジロジロ見つめられる事なんて、今までの人生で…な、なかったからさ」


「じぃ~~~」


「…こ、これ、一体何なの? 何をしたいの? オ、オレ、この状況、もう耐えられないよ」


「ゴブちゃん先輩の数値はねえ…」


「ゴ、ゴブ先輩の数値は…?」


「やっぱり0でした~! 残念!」


「おお~やっぱりそうか! ゴブ先輩、ボクたちの期待を裏切らないなあ」


「ちゃ、ちゃんと教えてくれよな! オ、オレは今、な、何をされたんだい?」


「ゴブさん、ごめんなさあい。でも、あたしたちだけの秘密なの!」


「ね、ねえ…さっちん。鳴海せんぱいも、そうなのかどうか、調べちゃっていいかな…?」


「ゴ…ゴクリ…。それはちょっと…」


「おいおい、ちゃんと説明して欲しいな。栄生もといゴブリンに、何をしたんだ?」


「鳴海先輩、それはあとで、こっそり桜チャンから聞いてくださいっス!」


「でも、ゴブリンにした事と同じことを、今から僕にもしようっていうんだろ? だったら今教えてくれよ。僕やゴブリンの、何を調べようっていうんだ?」


「こ、国府ちゃん、神宮ちゃん、やっぱりやめようよ。少なくとも、あたしと鳴海くんは…だから…ね?」


「な、鳴海先輩、大丈夫っス! ボクたち、今の桜チャンの反応で、よっくわかりましたから!」


「桜の反応で? う~ん、イマイチ要領を得ない…」


「そそそ、そうですよ! 私、鳴海せんぱいのテストの点数をズバリ言い当てようと思って…」


「テストの点数を? 僕の?」


「お、おいおい! オレの何のテストの点数を言い当てようとしたのか知らないけれど、さすがのオレでも0点のテストはなかったよ」


「国府チャン、ちょっと仕切り直そう!」


「そ、そうですね! おおお、お邪魔しました~!」


「ゴブさん、鳴海くん、お騒がせしてごめんね! あとでちゃんと説明するからね!」




「ははは。なんだ、そんな背景があったのかあ」


「えへへ~。ごめんね、なんか変なお願いしに訪ねちゃって」


「桜が謝る事じゃないよ。でも、国府のその能力って、偶然の重なりとかじゃないのかな?」


「あ~! 鳴海せんぱい、私のことを疑っているんですかあ?」


「そりゃあ、疑うさ。だって、非科学的だもの」


「むう~…くやしいですぅ」


「例えば、バストのサイズなんて、個体差はあれど、ある程度一定の範囲に収まるだろうし、大して分散もしない標準偏差な筈だよ。だとすると、目視であたりをつける事ができれば、そうそう少なくない確率で正確に言い当てられるさ」


「せ…説得力…」


「テストの点だって、その人の成績がどのくらいかがある程度わかっていれば、当てるのは難しくないよ。まして、童貞かどうかなんて、16歳前後の高校生なら8割がた童貞だから、ほぼ誰にでも当てられる。言っちゃ悪いけれど、ゴブリンとあだ名される栄生なら、なおさらだよ。仮にもここは偏差値71の進学校だから、童貞率が極端に偏る事はないだろう。だから、国府の超能力は今のところ、占いとかの疑似科学の範囲を出ないね」


「ん~…さすがです、鳴海せんぱい。数学の点数94点だけはありますね!」


「おっと…。その点数は、正解、だ」


「他にもわかりますよ~だ! 物理98点、化学72点、英語87点…」


「わわわ…わかったわかった、ストップ…それ以上はやめてくれよ。特に、古文の点数は誰にも知られたくないんだ」


「鳴海くん、国府ちゃんが言った点数、あたってるの?」


「全部あたってる…。僕の中間考査点数一覧を盗み見ない限り、知り得ない情報だ」


「国府ちゃん、やっぱり超能力があるんだよ! すご~い!」


「少なくとも、4教科の点数を正確に言い当てられてしまった…。でも、国府の記憶力が抜群によくって、僕の点数一覧を見た可能性の方が、超能力の発現説よりもまだ信頼性が高いかな…」


「もう~! 鳴海くんってば、やっぱり夢もロマンもないよね」


「桜にそう言われるとな~。まあ現実主義者ではあるかもなあ」


「……」


「ん? 国府、どうしたの? 急にそわそわしだして」


「え…ええっとお…」


「国府ちゃん? お手洗い?」


「…すすす…すみません…。私…今…かかか、勘違いならいいんですけれど…」


「どうした?」


「いいい…今すれ違った男の子…。もしかすると、10分後に…」


「国府ちゃん、どうしたの? 何か見えたの?」


「国府、10分後に、あの男の子が、なんなんだ?」


「し…死んじゃうかも…」


「なんだって!?」


「それって…だって、人の寿命は数値化できないんじゃ…」


「そうだよ桜ちん。だから、私の間違いだと思う…だけど、気になっちゃう!」


「そりゃあ、気になるよ! 国府の超能力が本物だと仮定したら、取り返しのつかないことになる。まだ間に合う。男の子を追おう!」

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