大賢者と地下列車

 地下道が完成すると次はその上を通る列車の作成だ。しかしレールを引くとなると大量の鉄が必要になる。それよりも魔法陣を延長し、その線の上を走らせる方が簡単だ。誘導線として使う場合の魔法誘導係数は、ミスリル、金、銅、銀の順になる。ミスリルが圧倒的に優れているが量も少ない。地下道に敷き詰められる量など無い。時点の金も似たようなものだ。すると銅を利用するのが無難だ。それでいて加工に必要な魔力が少なくて済む利点がある。強度が問題になるがそれについては地中へ埋め込んでしまえば良いので大きな問題にはならない。となれば銅線を作って引くのが一番良い。そのため採掘した金属類を一次加工する設備を用意する事にした。金、銀は錬金術を使いインゴットにし、銅は銅線にしてコーティングしてから丸めておく。銅は酸化しやすいので絶縁体でコーティングして置く必要がある。問題はその材料だ。アルフォードは、エナメル線はエナメルを皮膜にしているはずだ。ところでエナメルって何だ?などと考えた。取りあえず錆びない様に油性インクでも塗っておけば良いのだろうなどと考えたが、油性インクが無い。仕方無いので獣脂につけ込んで魔法で硬化させておくことにした。とはいえ一工程無駄になる気がする。しかも獣脂の補充が面倒くさい。バイオプラスチックで代替してやるとアルフォードは誓った。

次に魔法陣を書き起こし魔石を置いておく。こうする事で仕分けされた金属は、その場で加工される。インゴットになった金属はゴレームが倉庫まで運んでいく。


これらの仕掛けは地下道を掘る前から行っており、既に地下道分をまかなえる分の銅線を既に確保していた。これを平行に引いて、魔法陣につなげれば簡易魔道トレインが完成するのだ。ちなみに魔道トレインの素体には箱馬車を使うことにした。ファーランドについて使うことが無いので野ざらしになっていたのだ。箱馬車の背面に移動用の魔法陣を書き、車輪から魔力を供給する様に改造する。地下に埋めた銅線が魔力を供給する。銅線を埋めた場所は車輪が外れない様に轍を掘ってあり、そこから逸れない様に設計してある。しかし、これが上手く動くかはテストしてみないないと分からない。


地下道の上に馬車を運びこむとアルフォードは起動実験をすることにした。


「カチュアは、この中で待機」


箱馬車にカチュアを放り込むと馬車を実際に動かしてみる。出発してから10分経つと馬車が戻ってきた。今現在、待機時間を0に設定しているから片道5分で移動できる計算になる。


「40kmを10分だから時速240kmか、少し速すぎるか」


アルフォードがそう言うと、カチュアが目を回しながら馬車から降りてきた。


「御主人様、この馬車、酷く揺れます。すごく気持ち悪いです」


「ああ、吐くなら外に出てからな」


「最近、扱い酷くありませんか?まぁ、それも良いですけど」


「衝撃に弱い材料を運ぶには振動が激しすぎるか。馬車の振動を落とすか、線路を滑らかにするか、緩衝材を埋め込むかか……」


 この地下道は別に人を運ぶものではないのでアルフォードは緩衝材でどうにかすることに決めた。この馬車にサスペンションを取り付けるのは少々面倒くさい。車輪から作り直しになるからだ。そういうわけで緩衝材で何とかすることにした。緩衝材には藁屑でも十分なのだが、その藁屑は馬と牛の餌なので代わりにおが屑を使うことにした。作り方は簡単。麻袋におが屑を突っ込むだけだ。

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