第四章 事件

第14話 歪み〜亀裂


恋が高校2年生になると、非行はエスカレートした。

関口さんの引き留めも反発し、言うことを聞かなかった。

「恋ちゃん!今日も外出?ちょっと待って!」

「うっさいな!ほっといてよ!」

「ダメ!恋ちゃん!お願いだから」

「ほっとけってんだろうが!」

必死で引き止める関口さんを振り払い、今日も夜の世界へ向かった。

街に出ると、美紀たちと合流した。

「れーん!おっそいじゃん!」

「ごめーん!あの関口のばばぁがまた引き留めてさ」

「振り払ってきたんか?」

「もちもち♪」

派手な服装をして、街のアーケード街でたむろっている。

そこに遠くから数台のバイクの爆音が近づいてきた。

「恋!来たよ!澤先輩たちだよ」

暴走族をやっている澤という男。最近知り合って、なにかと恋たちとつるんでいる。

澤はバイクを降りて近づいてきた。

「よー美紀に恋!なにしてんのよ」

「澤先輩!お疲れ様でーす」

「今何しようか考えてました」

「そっかー!じゃあよ!ケツに乗って走るか?」

「やったー♪行きます」

恋は澤先輩のバイクの後ろに乗って、澤先輩の腰をぎゅっと掴んだ。

「しっかり捕まってろよ」

「はい!」

バイクはまた爆音を鳴らして街を走り廻った。

当然パトカーに追っかけられるが、それを振り切って走り廻った。

この時が一番、恋は日常を忘れられる時となった。


一方、施設には康二が来ていた。

康二は司法試験を突破し、晴れて弁護士事務所に就職していた。

「関口さん、恋は?」

「今日も出て行っちゃった…ごめんなさい。私の力不足で…恋ちゃんを…」

「いや、関口さんのせいじゃないです。俺の責任なんです。俺がもっと早く、恋の異変に気づいていれば」

「康二くん…恋ちゃんを…助けてあげて?」

「いつもあいつ、どこにいるんですか?」

「多分、S街で遊んでいるはず」

「わかりました」

康二は恋を探しにS街へ向かった。

康二は歩き回って恋を探した。

ちょうどゲームセンターの前を通った時、恋を見つけた。

康二が見た恋は、康二の知っている恋の姿ではなかった。

「恋?」

声を掛けるとハッとした顔で康二を見た。

「おにぃ…ちゃん」

小さな声で言った。

「なになに?恋のおにいさん?」

美紀が恋に向かって言った。

「確か弁護士先生でしたよね!ウケるんだけど」

「恋!帰ろう!こっちに来なさい!」

「やだよ!ほっといてよ!」

「恋!」

すると澤が横から出てきた。

「おい!嫌がってんだろうが!手ェ離せや」

「なんだ!お前は!邪魔するな!」

すると澤は康二の顔面を殴りつけた。

「ぐわ!」

康二は吹っ飛んだ。

「おいおい!恋は帰りたくないんだ。邪魔すんじゃね」

康二は立ち上がって、なおも恋をつかもうとした。

だが周りの奴らに取り押さえられ、その手は恋に届かなかった。

「恋!目ぇさませ!まぁやんと龍弥になんて言えばいいんだよ!」

「いいんだよ!もう!どうでも!」

そう言って恋は遠くに歩いて行った。

「おい!そいつ、のしとけよ」

澤もそういうと恋の元に走って行った。

康二はそのあと、澤の仲間にボコボコにされた。

「おい恋、さっきあいつが言ってたまぁやんと龍弥って誰よ?」

「わたしの兄代わり。血の繋がりはないけど…」

「ふーん。なんかどっかで聞いたことある名前だけど…まぁいいや。恋、今日こそいいだろ?」

澤は恋の体に興味深々だった。

「ダメですよ!ちゃんと付き合ってからじゃないと」

「じゃあ付き合おうぜ」

「もう少し、考えさせてください」

「ちっ!ガードかてぇな!」


康二はボロボロになりながらも、一旦学園に戻ってきた。

「康二くん?!大丈夫!救急車…」

康二は救急車を呼ぼうとした関口さんを制止した。

「…大丈夫です。ちょい休めば大丈夫」

「どうしよう…恋ちゃん…どうすれば…」

「俺が全て悪いんです。自分の司法試験の勉強ばかりやってて、恋の事を気にかけてやれなかった。俺が全て…」

康二は涙を流して悔いた。

「ちょっと…俺一人じゃもう無理です。二人の兄に相談してみます」

「まぁやんと龍弥くん?」

「はい。あの2人なら恋もいう事聞いてくれるかも」

「うん。わかった」


☎︎「おう!康二!久しいな!どした。こんな時間に」

☎︎「まぁやん、ごめんな。忙しい時に」

☎︎「いやいや、大丈夫だ。それよりも司法試験受かったんだってな。おめでとう!」

☎︎「ありがとう…」

☎︎「元気ねぇな。どうかしたか?」

☎︎「実は…恋が…」

康二は事の詳細をまぁやんに伝えた。

☎︎「そっか…恋が…ねぇ…」

☎︎「俺。もうどうしていいかわからないんだ」

☎︎「それは俺にも原因がある。俺だってあいつとの約束破り続けてたし、あいつが一番いて欲しかった時にいてやれなかったからな」

☎︎「それは俺だって…」

☎︎「とにかくだ!お前はぜってーに恋をあきらめるな!いいか!」

☎︎「もちろん!」

☎︎「恋は俺らに任せろ!ぜってーに取り戻してやる」

☎︎「すまない…」

☎︎「何謝ってんだ。家族だろ?当然だろ!」

☎︎「うん…」

☎︎「まずは龍に連絡取って、近日中にそっちに帰るから。まずはそこからだな」

それからまぁやんと龍弥は連絡を取り合った。


その頃、恋は相変わらず美紀達と連んでいた。

その時、美紀の携帯が鳴った。

「あっ澤先輩だ」

☎︎「もしもし」

☎︎「おう美紀、俺だ」

☎︎「ちぃっす!どうしたんすか?」

☎︎「今よ、俺んちでパーティーやってんだ。こねぇか?」

☎︎「ちょっと待ってください」

「今、澤先輩んちでパーティーやってんだって?行く?」

恋は少し考えていたが、ほかのメンバーが

『行く行く!楽しそうじゃん』っというので承諾した。

☎︎「じゃあ今から6人で行きます」

☎︎「おっけー!待ってるぞ」

「よーし!行こうか!」

「イェーイ」

これがこれから起きる事件の発端となるなんて、この時は誰も思わなかった…

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