140字まとめ◆2022年6月分

Twitterで更新している呟き作品をまとめました。

タイトル、本文、更新日の順です。

視点は基本笹木さん、倉田さんの場合は表記しています。


◆『消毒第一』

何かが同僚の耳元で光を放った。手を止めればにやりと笑い、やっと気づいた?と緩く波打つ髪をかき分ける。ピアス。……いいじゃん、それだけ呟くと目が細まる。皮膚科良かったわ。

これからが大変だからなそれ、先輩の言葉へ力強く親指が応えた。頑張れよ、後輩。

6月1日


◆『感性の違い?』

「急に何か食いたくなることない?」

「例えば?」

「ミートパイ」

「食ったことない」

「俺もよ」

「……何でまた」

「ロンドンの理髪師がさぁ、客を」

「待て!こら!」

「えー初体験しよ」

「怖」

「旨そうに食うんやもん」

あの映画に一番合わない感想だぞそれ。

6月3日


◆『だってオマエ、』

何もかもと戦う季節が始まる。茹だるような外気、負けじと冷え込むオフィス。暑いのか寒いのかわからない身体を、どっち付かずの服で守り息も絶え絶え出勤すれば同僚はアロハのようなド派手な開襟シャツだった。夏風邪はオマエでもひくんじゃねーの、気をつけろよ。

6月5日


◆『お節介の境目』

参考にしたいんだけど、と同僚からの社内メッセージ。続いたのはピアス普段何してんの?だった。会社にはしてこないやん。

上はボディ用バーベル、下はプラのリング。返答についたのはパーティーパロットだった。どゆことよ。太いから気をつけろ、は余計なお世話か。

6月7日


◆『エコロジームーブメント』

土産の饅頭を飲み込んだ瞬間同僚の丸い目と合う。

「え、敷紙食ったん」

「何でだ。先に捨てたわ」

紙食いそうか?眉を寄せる。

「おまえなら世界環境デーとかを理由に?」

「無理なエコは地球も不本意だろ」

頷く同僚がそっと食いちぎった紙を吐き出すのが見えた。

6月9日


◆『変なの』倉田さん視点

時々難解な言い回しや、作品の引用が出るのは昔取った杵柄らしい。映画は偏りが強過ぎて、観るのは被らないのが当たり前。酒も甘味も好む、なんだっけ、雨風?とか自称してる。お前と俺って本当に共通点ないやん。なのに今日も一番会話したのはお前なんです。何で?

6月11日


◆『題名は聞かない』

カラオケには来ない同僚だから歌声を聴いたのは初めてだった。飲み会帰りの道端、BGMのよう耳へ馴染んで溶けていく低音。もっと。強請ろうかと思ったがオマエのことだ、すぐ止めるだろう。知らないフリをしてただ飲み込んでいった。知らない歌はご機嫌に消えていく。

6月13日


◆『たまにあるはなし』

そういえば、切り出した瞬間音速もかくやな速度で同僚が振り向く。まだ何も話してない、困惑に黙っていれば悲哀に満ちた「すごくいやって何が?」

取りあえずオマエの事じゃないから。聞き間違いを訂正するうち本来の話題は消えてった。きっと大した事じゃなかった。

6月15日


◆『夢破れ』倉田さん視点

今はITだけど、同僚が紫煙を吐きつつ何気なく口を開いた。頷くと、昔は文章に関わる仕事をしたかったんだよな、時を見る目で呟く。だからそういうとこで色々読んでた。どうやら昔取った杵柄の事らしい。生半の言葉は言いたくない、同僚を見つめると静かに頷いた。

6月17日


◆『この関係は』

「猫と烏って犬猿の仲だよな」

「んぇ?」

「ん?」

「いや、猫と烏なのに犬と猿なんやな」

「猫烏の仲って言葉はないだろ……ふは」

「えーツボってる。突然すぎんか」

お前のツボって、首を傾げる同僚の顔がまた面白くて辛い。変な顔してんなよ、がまだ言えない。

6月19日


◆『わかっていても』

駄目だと思いつつ止められないってあるやん?口をへの字にした同僚が何かを口へ放り込む。

「例えば?」

「これとか」

デスクに載せてきたのはおやつカルパスだった。オマエ、これは無理だろ。見れば禁断の箱がもう空になりかけている。絶対むくむやつじゃん、それ。

6月21日


◆『もしかしたら』

こう毎日雨だといくら梅雨でも気が滅入る、窓の外を眺め同僚は息を吐いた。雨が好きなことを僅かに迷い、結局は口にした。刹那、後悔。言わなくてもいいことが溢れるのは何故か。同僚はこちらの気まずさを知らないのか、俺もそーなりたいわと純粋な笑顔を見せた。

6月23日


◆『今年は湿気が凄い』

「引っ越しで絶対譲れんことー」

「家賃」

「現実的やな、流石。俺は防音、いや騒音対策」

「声も態度もデカイのに意外だな」

「だからよ」

「ん?」

「階下と隣人へ配慮せんと」

「なるほど?」

「態度は余計だけどな」

「そこが一番デカイと思うけど」

「うるせ」

6月25日


◆『高低』三人目再登場(三ツ矢サイダーさん)

声の高低が判らない。同僚の声は耳馴染みが良く、低いのだと認識していたが別の同僚から結構高いよねと話を振られた。そーなの、目を瞬かせれば、え、あんな話してるのに、と驚かれた。オマエの前では高いんじゃねーの。何が自分の眉根を寄らせるのか判らなかった。

6月27日


◆『悲しみと喜び』倉田さん視点

何となく同僚の機嫌が良くない。眉根が気づけば寄っている。他の同僚へそれとなく尋ねても返答は芳しくない。人には人の事情があることは百も承知で、当たられることがある訳でもないのに収まりが悪いのは何故か。鈍いと言われ続けた自分の進化だけは喜ばしかった。

6月29日




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