文章チェックのヒント

あじさい

主語と述語① まとまり

 予備校の先生に教わったのですが、評論の問題を解くときは最初に傍線部の主語をチェックすべきだそうです。


 この小論に目を留めるほど文章力に関心があるかたで、主語と述語が大事ですと言われて、「言われてみればそうだ、自分も気を付けよう」と思う人はあまりいないと思います。

 多くの人は思うはずです、「主語と述語のことくらい、教わるまでもなく分かってるよ」、と。

 ですが、意外とこれは微妙な問題です。

 大事なのは皆さん分かっているはずなのに、意外と見落とされがちだからです。

 実際問題として、主語と述語が噛み合っていなかったり、ずれていたり、分かりにくくなっていたりする文は、Web小説以外でさえ、ちょくちょく見かけます。

 というか、私自身よくやります。


 ……お気づきでしょうか、「意外とこれは微妙な問題です」という1文には文法的に改善の余地があります。

 主語は「これは」、述語は「問題です」。

 「微妙な」は「問題」を修飾する形容動詞ですね。

 では、「意外と」は……? そう、「微妙な」を修飾する副詞ですね。


 この場合、主語と述語を念頭に置いて文を2つに分けると、

・「これは」

・「意外と」「微妙な」「問題です」

 になるはずですから、「これは意外と微妙な問題です」に書き直した方が、書き言葉としては無難になります。


(※注)「意外と」が「これは」、あるいはその後の文すべてにかかっているという見方もできなくはないですが、まぎららわしいので、その場合は「意外に思われるかもしれませんが」など別の表現に書き換えるのが吉です。


 当初の書き方「意外とこれは微妙な問題です」でも違和感をいだかない人も多いと思いますが、これは(おそらく)話し言葉です。

 小説内の会話文や独白なら、微妙なニュアンスを出す表現と解釈することも可能ですが、書き言葉の地の文では、けた方が良いでしょう。

 さらに、Web小説の場合、文法的な混乱を残すと、読者に「この書き手は文章力が低い」という印象を与えかねないので、その意味でも修正するのが得策です。

 修正案の方が「無難」というのはそういうことです。


「そんなこと気にしなくても意味は伝わるんだからいいじゃないか」

「そんなのお前個人の好き嫌いだ。一般論みたいに語るな」

 とお思いになった方もいらっしゃると思います。

 そのお考えは間違っていないと思います。


 偉そうにこんな文章を書いている私にしたところで、自分の小説をランキング上位に育てられたことはありません。

 文章の美しさなんて気にしても、魅力的な物語を書けるようになるとは限りませんし、文章がめちゃくちゃでも、物語が魅力的なら(もっと言えば魅力的じゃなくても)読者はつきます。

 ですから、問題はこだわるかどうかです。


 ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

 またの機会がありましたら、またお会いしましょう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る