第7話 人助け

冒険者ギルドを出た僕とマサオたちは、ひとまず受付の人(マリアさんというらしい)が教えてくれた『満天の星空』という宿に行くために商業地区に行くことにした。


そこの宿は宿代が安い・ご飯がうまい・お風呂もきれいの3点を売りに老夫婦が2人でやっていて、穴場でもあるが冒険者に人気があるという。


どんなおいしい料理が出てくるのかなぁと1人で妄想していたら、ゴブノスケが突然話しかけてきた。


「親友殿、あちらから妙な気配を感じまする。いかがなさいますかな?」


妙な気配?

ゴブノスケが指差した方向を見てみると五歳ぐらいの男の子が2人のごろつきによって路地裏の中に連れていかれるのが見えた。


「うーん。なんか放っておくのもかわいそうだからついて行ってみようか」


壁からこっそり奥の方を見ると、怒鳴り声が聞こえてきた。


「いいから黙ってそれを渡せばいいんだよ!」

「お前なんかよりも兄貴の方がその金を有効に使えるんだよ!ですよね、兄貴?」


うーわ。

いい大人2人が5歳児に向かってカツアゲしちゃってるよ…。

ここの治安どうなっているんだよ…。


「そうだ!どうしても渡さねぇっていうんならな、力ずくで奪うのみよ!」


そう言って男は大きく手を振りかぶった。

そろそろまずいと思ったので、マサオに助けに行ってもらった。

しかし、それでも助けに入るまで時間があるので2人を鑑定してみることにした。


「〈鑑定〉!」


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名前:スガル  Lv18

種族:人間族(ヒューマン) 26歳

職業:Dランク冒険者

固有スキル:【コレクションルーム(中間素材)】…特定のものを収納できる。容量は固有スキル所持者の特定の物に対しての気持ちで決まる。


スキル:解体3…動物や魔物をさばく技術。

土木工事3…家などを建築する技術。


武器:鋼の剣 

準武器:お手頃ナイフ 

防具・上:ラッシュボアの革鎧 

防具・下:マッドフレッグの革ズボン 

アクセサリー:運気のお守り

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名前:ミング Lv13

種族:人間族(ヒューマン) 24歳

職業:Eランク冒険者

固有スキル:【ゴマすり上手】…自分よりも強い人と行動しているとき防御力が向上する。強い人に気に入られやすくなる。


スキル:散策3…周りの状況を把握する技術。(半径10m) 

土木工事2…家などを建築する技術。


武器:銅の剣 

防具・上:鉄の胸当て 

防具・下:鉄の腰だれ

アクセサリー:なし

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ふーん。

一番最初に他人のステータスを見たのはマサオのだったからあまりすごいとは思わないけどこれは高いほうなのだろうか…。

でもDとEランクの冒険者なんだから弱いほうなのかな。

アクセサリーの運気のお守りってなんだ?


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運気のお守り

ある魔物から稀にドロップするお守り。所持していると運気が上がる、かも?

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細かいものも鑑定で調べられるんだ。

で、かもってなんだよかもって。よくそんなものを付けていられるな。

へー。こんなものも魔物からドロップするんだ。


ん?

男の子のステータスも見えてしまっているな。


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名前:コボ[なし]Lv3 [Lv32]

種族:人間族(ヒューマン)[妖狐族(ようこぞく)] 5歳 [86歳]

職業:なし

固有スキル:なし[【ブレーンコントロール】…対象の脳を破壊したり、操ったりできる。死者の脳も操ることができる。]


スキル:なし[風魔法4…魔素を利用して風を操ることができる。

技:送風、エアーショット、エアーウォール、かまいたち

交渉術4…相手と交渉するときに物事を有利に進めることができる。

速読4…文章や空気を早く読むことができる。

算術1…足し算・引き算・掛け算・割り算を人並みに計算できる。]


武器:なし 

防具・上:赤い服 

防具・下:茶色い服 

アクセサリー:なし[隠ぺいのお札] 

持ち物…革袋(ショルダータイプ)・中

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ん?

この[]の中はどういうことだ?

人間族って書いてあるのにその横に妖狐族って書いてあるぞ?

5歳の横には…、は、は、86歳!?

み、見た目とのギャップありすぎだろ!

ど、どうなっているんだよ…。

ん?

アクセサリーのところに変なものがあるぞ?隠ぺいのお札?なんだそれ?


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隠ぺいのお札

妖狐族に伝わる身に着けると自分のステータスを偽ることができるお札。

ただし一定のレベル以上の鑑定スキルを持つ者には見破られてしまう。

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な、なんと!

この世界にはこんなものまであるのか!?

個人情報偽りまくりじゃないか。


そんなくだらないことを考えているうちにマサオがごろつき2人をあっさり倒してしまった。隠ぺいのお札のことを含めてあの子?あの人?に話を聞いてみるか。


「助けていただき、本当にありがとうございます」


僕たちが男の子のところについたとき、丁度男の子がマサオにお礼を言っているところだった。


「ぜ、全然気にしないでいいんだな。この人が君に気づいたから助けに来れたんだからこの人にお礼を言ってほしいんだな」

「そうだったのですね。どうもありがとうございます」

「僕は何もしてないから気にしないで。僕はリュウジ。こっちはマサオで…(以下略)。君の名前は?」

「僕はコボといいます。村から出て初めてこの町に出てきたんです。世の中にはこんな怖い人もいるんですね」


村から出てきたばかり…。何か聞いたことある話だな。


「なんであんな奴らに脅されてたの?」

「さっきも言ったとおり、僕は村から出てきたばかりだったのでここら辺に来るのは初めてだったんです。なので道に迷ってしまいまして、それでさっきの人達に道を尋ねたらお金を要求されて…。その時にどうも財布の中身を見られたらしくてもっとよこせと脅されてしまったんです…。」

「あ~。それは災難だったね…。ちなみにコボ君の村はどこら辺にあるの?」

「えーっと、山を2つ抜けたあたりですかね。自然豊かでいいところですよ」


うーん。どう切り出していいかわからん。

でも黙っててもしょうがない、聞いてしまうか。


「ちなみにさ、コボ君は人間族なの?妖狐族なの?」

「はい?」


ド直球すぎたかな?

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