第3話 段ボールの火球

 配信者こと、チキチキンは今日二度目の配信をしていた。

 平将門についてのことだった。

 そりゃあ、平将門の魂が届きますと言って、すぐ分かる人は少ないと思ったからだ。そして、何より配信者が将門のことを知り、どんなものが来るのかを考えようとしたからだ。


 もう一度、平将門について詳しく調べてみた配信者は血の気が引いたのだ。


 ――平安時代中期の武士であった将門は、一族との戦いを制して、現在の千葉県のあたりを支配していた。が、しかし。将門は新しい国司とトラブルが起こり、朝廷に反乱を起こした。関東を制圧し、新皇を名乗って独立国家の樹立を宣言した。そんな彼だが、将門を打ち取ったものは貴族にするという朝廷の甘い誘いに乗った藤原秀郷・平貞盛ら追討軍と戦った。農民の田植えを考慮し、兵はだいぶ減っていた。そんな中、将門は粘り強く戦ったが、流れ矢がこめかみに命中し、最期を迎えた――。


 そこまで、将門の生涯を話し終えると、ここからは平将門伝説についての話になる。

「将門の首は平安京に運ばれ、晒し首・・・・・そこらを通る人に首を見せつけました」

 何とか、落ち着きを保って話そうとするが、そんな人物の魂が来るかもしれないということを考えると、やはり怖くなる。そして、ろれつが回らなくなる。


 打ち取られ、晒し首にされた将門の首だが、首に異変が起こりまくったということは良く知られている。例えば、ある歌人が歌を詠むと将門の首が笑い出すとか、それから将門の首が飛びまわるとか、俺の胴はどこだ、と叫びまわるとか。そして、将門のめちゃくちゃ呪われて、多くの人が死んだとか・・・・・。さらに、将門の首が埋まっているかもしれない、東京の「将門塚」を掘ろうとすると不幸にあったり、明治の大蔵省が焼けて、将門塚を整備して仮庁舎を立てようとすると、大蔵省関係者が死んでいったとか・・・・・そんな伝説が、将門にはたくさんあった。


「以上、平将門ってどんな人? 解説でした!!こんなのの首がやってくるんですよ。恐ろしいですよね。それでは、これで今日のチキチキネルを終わります!!」

 というわけで、配信は終わった。


 今日はゆっくり布団に寝転がることにした。だが、やっぱり眠れない。

 明日だろうか、明後日だろうか。遠ければ遠いほどいい。どうか、明後日に来てくれ。明日に来ることは絶対やめてくれ。

 ってことを念じて、何とか眠りに着こうと思っていたところに、恐怖の音が鳴った。

 ――ピーンポーン♬

 インターホンの音である。

 ――な、なんだ・・・・・。

 ドアの覗き穴から、様子を見るが、誰もいないようだ。

 意を決してドアノブを握った。

 ガチャッ

 すると、そこには人はおらず、箱だけが置いてあった。

 ――こ、これは・・・・・。

“あれ”かもしれない。


 すぐにスマホを持ってきて、箱を撮り始めた。これは、生配信だ。

「みなさん、見えるでしょうか。チキチキネル、チキチキンです。なんと、もはや魂コレクターズの商品が到着したかもしれないのでございます。今から、とりあえず家の中に入れます」

 段ボールを布団が引いてあることに持ってくると、開けようとする、しないで迷い始めた。

(どうすりゃいい・・・・・?)

 そんなことを考えると、恐怖映像を見てしまった。

 段ボールのガムテープで封じられていたはずの蓋がとれ、何かが飛び出した。

「火の玉・・・・・? これが、魂か・・・・・?」

 彗星のように、青白く光る球が光って、尾を引いているようなモノ。

 それは、フワフワと浮かんでいる。

 ――すると。火の玉は配信者の周りをぐるぐると回りだして、彼の後頭部めがけて突進した。

「アァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る