30. 勝たん!パーティー

30. 勝たん!パーティー




 私はすぐに指示を出す。みんな返事をするとすぐに行動に移った。まずはキルマリアの短剣による素早い連続攻撃をミノタウロスの頭部へ当てていく。しかし、ミノタウロスの分厚い皮膚は硬く、致命傷には至らない。そしてリーゼの怪力による打撃も、腕を盾にして防いでいるため、こちらもダメージを与えられていないようだ。


「硬すぎ!www」


 キルマリア笑ってる場合じゃないわよ……。


「ならばこれならどーだ!」


 そう言うとリーゼがミノタウロスの背後に回り込み、背中に張り付いた。そのまま両腕で首元まで移動し、両手を器用に使って締め上げ始めた。これは流石に効いたようで、ミノタウロスから苦しそうな声が漏れる。


「今のうちに!」


 リーゼの言葉を受けて、キルマリアとミルフィはミノタウロスの腹部へと斬りかかった。


「グアァッ!!」


 苦痛の声を上げるミノタウロスだったが、その動きを止めることはできないようだった。そしてその場で暴れリーゼを振りほどく。


「うわっ!?」


 振り落とされたリーゼは地面に叩きつけられたものの、すぐさま起き上がってミノタウロスに向かっていく。だが、そこへ横薙ぎの一閃が襲い掛かる。咄嵯の判断で後ろに飛び退いたおかげで直撃は免れたものの、彼女の左腕からは血が流れ出ていた。


「いたた……」


「リーゼ下がって!ルシル回復をお願い!」


「はい!リーゼさんこっちへ!」


「うん……」


 私の指示を聞いたルシルはすぐにリーゼの治療を行う。その間に私たちはミノタウロスの周りを囲むように陣形を整えていった。


「ねぇエステル姉さん!あの牛頭さロザリーさんのステーキくらい硬すぎだし!やっぱりミルフィ姉さんの攻撃じゃないと無理じゃない?」


「私!?動きを止めてくれればやりますわ!あと近づいても大丈夫なようにしてくださいまし!」


 うん。それが出来れば問題はないんだけどさ……この前のゴーレムのように拘束したとしてもミノタウロスの皮膚が硬すぎるのが問題。ミルフィの魔法弾丸が貫通しなければ私たちは確実に死ぬ。


「さて……どうするかな……」


 私の呟きを聞いてか聞かずしてか、ミノタウロスは再び突進を仕掛けてきた。その攻撃をなんとか避ける。


「このままじゃ……」


 そんな時、回復を終えたリーゼが私に話す。


「エステルちゃん!あの牛のお口の中なら大丈夫じゃない!?」


「え?」


「だからそこ狙えばいいんじゃないかなって思ったんだけど……?」


 口の中……。ミノタウロスに口を開けさせる且つミルフィが弾丸を外さないようにする。それができれば……。


「そうね。それしかないわ。キルマリアと私でミノタウロスを拘束するから、リーゼとミルフィで仕留める。ルシルは2人の援護に回って!」


 それを合図にしたかのように私たちも戦闘を再開する。まず仕掛けたのはキルマリアだ。


「ちょいと本気出しちゃうよ!暗殺術・『スナイプアロー』!」


 そう言い放つと同時に彼女はミノタウロスの顔めがけて短剣を投げつける。狙い通りに顔に命中したが、その攻撃は目くらまし程度にしかならないだろう。なぜならこの技はあくまで『相手の視界を奪うこと』に特化しているからだ。


「そして更に暗殺術『サイレントアウト』!!」


 続けて放たれた短剣により、今度はミノタウロスの目を完全に潰すことに成功する。やはりというべきか、痛みに耐えかねてミノタウロスは膝をついた。私はすかさず『蜘蛛の糸』を発動しを縛りあげる。


「ぐっ……あまり持たないわ!お願い!」


 リーゼとミルフィは駆け出す。そしてリーゼはミノタウロスの口をその怪力でこじ開ける。ゴギンッという音が鳴り響く中、そのままミルフィは銃口をミノタウロスの口の中にネジ込み。そして叫んだ。


「たっぷり召し上がれ?私の魔導式銃剣のフルコースですわ!!『フラムルージュ』!!」


 轟音と共に撃ち出された弾丸は真っ直ぐにミノタウロスの口内へと吸い込まれていく。それと同時に口内の肉を吹き飛ばしながら突き進んでいき体内で爆発する。


「ギィアァァァァァァ!!!」


 断末魔のような叫び声を上げながらもがくミノタウロスだったが、やがて動かなくなる。


「やっ……やったーーー!!!」


 喜びの声を上げるリーゼ。これでようやく終わったか……。みんなは安堵の表情を浮かべている。


 やはり思った。みんなは『ジョブ』としての能力は優れている。ただ、致命的な欠点……いや個性的なだけなんだ。


「いやいや〜お疲れ様〜よきよき」


 そう言ってキルマリアは手を振る。そして私の元へ来た。


「いやぁまさかあんな方法で倒すとは思わなかったわ〜リーゼがミノタウロスの顎を外した時点で察し、しごおわってことだよね?」


「まあ、上手くいったから良かったけど……」


「でもあれはもう二度と使えないよねww」


「笑い事じゃないわよ……」


 はしゃいでいるキルマリアに呆れつつも、私も笑みがこぼれていた。


「にしてもミルフィ姉さんはいつも美味しいところ全部持ってくね〜。ミルフィしか勝たん!って感じのパーティーになってるじゃん!」


「勝たん?ふふん!まぁ当然の結果ですわ!」


 ミルフィは自慢げに胸を張る。確かにキルマリアの言う通りではある。ミルフィの一撃必殺の魔法弾丸が私たちパーティーの最大火力だからなぁ。


「でもミルフィさんすごいですよ!あんな大きなモンスターを倒すなんて……しかもあの硬い皮膚を貫通させてましたもん!」


「もっと褒めてもいいんですのよ!この華麗なるブレードガンナーのミルフィ=ネーヴェライトを!」


「ミルフィさんかっこいいー!」


「~~っ!!もっと褒めなさい!ほらほら!」


 ルシルにおだてられて調子に乗るミルフィ。そんな光景を見て私たちは微笑んでいた。その後、私たちはダンジョンの奥へと進み目的の『鉱石』を手に入れ、グランたちの勝負に勝つことが出来たのだった。

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