19. ゴーレム討伐(後編)

19. ゴーレム討伐(後編)




 ついにゴーレム討伐するために対峙する私たち。目の前には巨大なゴーレム。昨日見たゴーレムよりも一回り大きく、そしてその腕は太く大きい。あんなので殴り飛ばされたらきっとただでは済まないだろう。


「よし……とりあえず先手必勝!」


 キルマリアがゴーレムに向かって走り出す。その速度はなかなかのもので、あっという間にゴーレムとの距離は縮まり、キルマリアは短剣を振りかぶった。しかしその時だった。


「えっ!?」


 ゴーレムが突然動き出し、キルマリアにパンチを放ったのだ。キルマリアはそれを何とか避けたものの、少しバランスを崩したようだった。それを見た私は、慌ててキルマリアの元に駆け寄る。


「キルマリア大丈夫!?」


「てへぺろ!ちょっと油断しちゃったわ~」


 そう言いながら体勢を立て直すキルマリア。どうやら大したことは無さそうだとホッとする私だったが、すぐに気を引き締める。


 相手はあのゴーレムなのだから、簡単に勝てるはずがないのだ。私は改めて気合いを入れ直してゴーレムを見据えた。


 キルマリアの速さについてくるなんて……やっぱり強い……。そんなことを考えているとゴーレムが腕を振り回し迫ってくる。それをルシルの防御魔法で何とか防ぐが、それでも衝撃は大きく私たちは吹き飛ばされてしまった。


「うぅ……」


 痛みに耐えながらもなんとか立ち上がる。見ると他の皆も同じように立ち上がったところだった。だが、まだ戦闘は始まったばかりだ。こんなところで倒れるわけにはいかない。


「みんな聞いて作戦変更よ。このままゴーレムの攻撃を受け続けることは出来ない」


「どうすんのエステル姉さん?何か考えがあるんでしょ?」


「ええ。昨日アリシアさんはゴーレムを魔法で倒した。おそらくゴーレムには物理攻撃はほとんど効かない。」


「ええ~じゃあどうするの!ルシルちゃんの魔法で倒すの?」


「ボクの神聖魔法じゃ無理ですよぉ……」


 それは私も分かっている。ルシルの神聖魔法はあくまでも回復や補助に特化した魔法であり、攻撃魔法ではない。だから今回は別の方法で行くつもりだ。


 私はそのまま歩きミルフィの肩に手を置く。


「ミルフィ。あなたの『魔導式銃剣』の魔法の弾丸でゴーレムを倒すわよ」


「え?私の……ですの?でも……はずしてしまったら私……」


 怖いのだろう。ミルフィの声からは怯えのようなものを感じる。だけどみんなで……クラン『妖精の隠れ家』でダンジョン攻略をする。それにはこの方法しかない。


「大丈夫。あなたの弾丸は外させない。あなたはもう1人じゃない。私たちがいるわ。必ずその弾丸でゴーレムを討伐するわよミルフィ!」


「……。」


「あのさ、私はギャンブラーなの。華麗なる弾幕も見せつけるんじゃなかったの?」


「エステル……分かりましたわ!このミルフィ=ネーヴェライト、覚悟を決めて玉砕しますわ!!」


 いや玉砕はするな。でもミルフィの目つきが変わる。やる気十分といった様子だった。これで安心ね。


「キルマリア、危険だけどゴーレムの胸辺りを攻撃できるかしら?ミルフィの弾丸の的を作ってほしいの」


「了解!任せなさい!」


 そう言ってキルマリアはまたゴーレムに向かって走っていく。そして素早い短剣裁きで傷をつけていく。次は私の出番だ。


「罠魔法『蜘蛛の糸』」


 私が唱えると右手から無数の白い糸が飛び出しゴーレムに絡み付く。しかし力が強すぎてうまく拘束できない。


「くっ……なんて力……」


 握っている手から血が流れる。でも離すわけにはいかない。そんな時リーゼがその糸を引っ張ってくれる。


「どりゃあああ!」


 すると暴れていたゴーレムが嘘のように拘束され、壁にその大きな身体が貼り付けられた。


「ありがとうリーゼ!」


「大丈夫エステルちゃん!力比べなら任せて!」


「ミルフィ!あとはお願い!」


「分かりましたわ!」


 ミルフィは『魔導式銃剣』を構える。しかし、なかなか狙いが定まらない。それよりもやはりまだ外した時の恐怖の方が大きいのだろう。


 でもこれはミルフィ自信が乗り越えなければいけない。そのためなら、もし拘束が解かれたとしても、何度だって私はゴーレムを拘束する。サポートは私の仕事だから!


「……ごめんなさい……やはり無理ですわ……」


「怖がらないで!ミルフィさん!」


 ルシルはミルフィの手を取りゴーレムに向かって歩き出す。


「ミルフィさんの弾丸は必ず当たります!ボクは信じてます!」


「ルシル……」


「当たらなそうなら近くで撃てばいいんです。危険だけどボクが必ず防御魔法で守りますから!」


「ルシル……そうですわよね!私は自分の力を信じる……!私は華麗なる正義のブレードガンナー。私の弾丸は絶対に外れないんだからぁー!!」


 ミルフィは再び構える。銃口はピタリとゴーレムの胸を捉えているように見えた。


 銃口に魔力が集中していき、眩しいくらいに輝く。その輝きはどんどん強くなり、やがてまばゆい閃光となって放たれる。


「いきますわ!魔導式銃剣『エストック・ライラック』!!」


 ズドンッ!!という音と共に、ミルフィが放った弾丸は、真っ直ぐに飛んでいく。そして見事にゴーレムの胸部に命中し、そのまま貫きその場で崩れていった。


「やった……やりましたわ!」


「良かったですね!ミルフィさん!」


「ええ!これもルシルのおかげよ!」


 喜び合う2人を見てホッとする。どうやら成功したようだ。まったく世話が焼けるわね。でも……これでようやくゴーレムを倒せた。初めて私たちは強敵をみんなで協力して倒したんだ。


「エステル姉さんおつ!」


「エステルちゃんの魔法も凄かったね!」


「お疲れ様。ありがとうキルマリア、リーゼ。あなたたちのおかげよ」


「それより、エステル姉さん怪我してるよ?早く手当てしないと」


「え?あ、本当だ……今ごろになって凄く痛くなってきた……」


「あっボクが治します!」


 こうして私たちのゴーレム討伐は終わりを迎えるのだった。

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