第3話 彼女

 俺はその部屋を使うのを躊躇したけど、女子大生がすっかりあてにしてるから、部屋に上げることにした。


 彼女はそこから通うつもりで、テキストや洋服をトランクに入れて持ってきた。俺はもう、後戻りできなくなっていた。


「新しい!それにうちに比べて広い」やっぱり女子大生はいつの時代もキャピキャピしている。

「物がないからね」

 居室にはダブルベッドしかない。

 かなり微妙だ。彼女はおかしいと思ってないらしい。まだ18歳。やはり、若い子はものを知らない。男の怖さってのを。


 それだけでなく、事故物件というのを知らないでいる。

「好きに使っていいよ。1ヶ月だけど」

 俺は合鍵を渡した。

 俺はいやらしいことなんて考える暇もなく、怖くなって早々に退散した。


 彼女から毎日Lineが来る。感謝されてるのがわかる。

 内容のないやり取り。それでも楽しい。


「友達呼んでいい?」

「いいよ」


 俺は”好きにしてくれ”と思う。

 俺の代わりに1ケ月住んでくれればいいんだ。


 次の夜、また彼女からLineが来た。


「ここって、人が刺された部屋なんじゃない?」

「あ、そうだけど。なんでわかったの?」

「友達に言われて。同じ大学の子だったんだよ」

「同じ学年?」

「うん。学部違うけど。だから、知らない子」

 彼女が怖いと言い始めた。

「泊まりに来てくれない?もう、今からじゃ帰れないから」

「わかった。今行くよ」


 俺はすぐに電車でマンションに向かった。明日は仕事だから、パソコンも持っていく。

 やっぱり、やめればよかったと、後悔する。

 普通の人は事故物件になんか住みたくない。

 しかも、女の子だし。


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