二人

いつも帰り道は、一日中誰かと自分に嘘を付き、必死に演じていて、憂鬱で、頭の中は空っぽで

結局こんな世界では、誰にも理解などされず

一人で生きて行かなければならない事ばかり

考えていた。

それなのに、ユミと[特別]になれた日から

もう一人では無いと思えた。

その日から帰り道は、憂鬱ではなくなった。


この時は、本当にこのまま一緒に同じ思いで、いつまでもユミと自分が、一緒に逝けると、

こんな世界なら、二人で死んでも構わないと、本気で思って疑わなかった…




次の日も、次の日も

放課後、図書室のはじの席は

自分と、ユミの特別な空間で

他愛のない話をした。

そして最後に

「マサト?私と、一緒死んでくれる…?」

「もちろんだよ、ユミ一緒に逝こう」

「好きよマサト」

「好きだよユミ」

いつもお互い確かめた。


嘘などついてない事など、わかっている。

わかっていても

唯一出来た繋がりを、手放すまいと

必死に毎日毎日生きていく事に、絶望しないように、確かめていた。


「私、これからもマサトと一緒に居たい」

「オレも、ユミと一緒に居たいと思っているよ」


「マサトとなら、どれだけも醜くなれるわ

そして落ちる所まで落ちれる、

心が救われる事もないのに、一緒に落ちてくれる事は、お互い本当に救いだと思うの」


「その通りだよ、これからも耐えられなくなったら、一緒に落ちる所まで落ちよう、戻れなくても二人なら大丈夫だから…」





嬉しかった。

その時は一緒に居たいと言われた事が、心の底から嬉しかった。

でもそれが、心を蝕んでいた言葉だと気がつくには、まだ幼すぎた…

そう思う事しか、生きてる意味がないと思っていたのにかもしれない…



「オレは、卒業したら家業を継ぐんだ、嫌な思い出の塊の家から出ることも許されない…それでもそれしか、生きていく場所がないから…それにユミがいるから…

ユミはどうするの?」


「私は、大学へいくわ

きっとまた、周りとの違いに傷ついて、辛くなるけど、私はマサトがいるから平気」


「そっか…ユミとあまり会えなくなるのは辛いけど、ユミが辛い時、いつでも会えるから…」


マサト以外なにも、要らない。

これから先、一人で絶望することは無いのだと

ユミは、心の底から思っていた。

一緒に逝こうの、言葉一つが心を落ち着かせてくれる事をずっと信じていた。

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