第15話

 美術館の金谷館長以外の3組の遺族は、写真も本人だと認めているのに、金谷館長だけが、何故写真を娘だと認めようとしないのか?

事務所で話をしていると、

自分が犯人だからじゃないか?

親が実の娘を殺した罪の意識からくるんじゃないか?

そこで証拠を見つけられないかな?

どんな証拠が考えられる?

疑問は沢山浮かぶが、解決の糸口が見えない。

 「あのレンタカーかもしれないトラック調べてみないか?」

数馬がどうやらガラスケース製造会社の山岸さんの言葉が引っかかっている様だ。

「レンタルトラックなんて何件あるか分からんぞ」一助がいうと美紗も頷く。

一心は考えて「誰だという証拠がない以上、調べ残しは止めよう。全員でレンタカーを調べる。引き渡し日の記載があったから、その日特定で良いだろう。何日だった?」

「一昨年の10月17日だった」美紗がメモを見ながらいう。

「都内全域だ。静にも入ってもらって、俺もやるから5人に分けてくれ。美紗?」

「お〜、やっちゃるぜ」

「や〜失敗したなあ。美紗でなくて美紗子にしたら少しは女の子っぽかったかなあ・・」

「うっせー」呟く一心にクッションが飛ぶ。

「かけるの、明日の朝からな、これ、今日一杯かかる」美紗の男言葉何とかならんのかと思い静を見ると睨み返された。

ほ〜い、と返事をして。夫々散らばる。


 次の日、朝8時過ぎ頃から事務所にひとり、またひとりと顔を出す。美紗が、資料を持って部屋から出てきたのは9時を過ぎていた。

「ごめんごめん、ちょっと寝ちゃって」そう言いながら、5つに分けて紙を並べる。

「ひとり50件ずつあるから」そう言って自分が一つ取る。

バラバラに散って電話掛けが始まる。


 午後1時、静以外全員終了。静の様子を見に行った一助の報告では、まだ半分くらいらしい。

「美紗、失敗だ。静に同じ量やらせたら絶対遅いわ。〜でおます。とか言って口の回転も超遅いし。美紗!静に5件残してあと持ってこい、俺掛ける」にやにやしながら美紗が奥の部屋に入ってゆく。

5分ほどして戻ってきた。手には用紙。一心は受け取って、真ん中から切る。

「半分、美紗やって。残りやる」

口をとんがらせて美紗が受け取る。


午後3時、ようやく終わった。が、静が来ない。また、一助に行かせる。

一助がドアを開けたところで、へえへーお待っとうさんどしたなあ、と言ってやっと静が出てきた。

皆で拍手で迎えた。

「どうだった?分かったか?」一心が声を掛ける。

「おう、浅草の美術館で借りてたぞ」数馬がそういった瞬間、ぎょろりと皆が睨む。

「な、なんだよう」数馬の尻がずずっとソファの後ろへ逃げる。

「さっさと言え!美術館でたら、そこだろうが!余計なことさせやがって!あほ!」

「え〜、だって全部当たれって一心が言ったでしょう」

「数馬!そないなことやあらしまへんがな。何のためにやってるかちゅうことや、あかんたれやなあ」

「他に気になるとこあったか?」

皆数馬を睨みながら皆んな首をふる。


「なあ、お前らも金谷館長犯人説か?」

全員が頷く。

「俺はさあ、どうしても憲重が頭から離れない!こないだのレイプ未遂ってなってるけど、本当は分からん。レイプのあと過冷却水に、どぼ〜んかもしんないしょ?それに、親が自分の娘殺すか?そんなに仲悪そうでもなかったぞ」

「俺は、憲重だと思っている。絶対に奴が犯人だ」

一助は親の仇でもある憲重から離れられない。

「じゃあ、俺と一助は憲重をさらに調べる。お前達は美術館だ。美紗、娘の同僚誘って線香上げ方々部屋を見せてもらえ、何か残されているかもしれん」

「おう、ついでに親父の部屋も捜索するか?」

「ばか、それはできん」

「冗談だ、ふふ」

「そしてよ、同僚に娘のことあれこれ質問してもらえ。友達だったから、家でのこと色々知りたくて、とか何とかいってよ」

「おう、そうだな、私が訊くより素直に答えそうだもんな」

「そういうことだ。頼むぞ」

おうっ!と威勢がいい。問題は証拠になる様なものが残されているかだ。


 一心の頭の中には、憲重が何故写真を撮ったのか?が引っかかっている。写真が趣味とは聞いていない。芸術家ぽい感じは全くしなかった。

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