第14話
カタカタ…
「っ!!」
スケルトンジェネラルがギュンッ!と加速して斬りかかってくる。僕は一瞬慌てたがすぐさま剣で受け止める。
「っ重い」
ズンッとした衝撃が手に伝わってきた。流石に力で押し返す事は無理そうなので僕は自己流剣技を使う。
「【滑】」
剣に負荷をかけずに敵の剣を受け流す。あくまで斬りかかってきたときに使う技なので受け止めてから使うのは初めてだ。でも、初めてにしては上手く行けた。
「はっ!」
剣を受け流され一瞬姿勢を崩したスケルトンジェネラルの鎧に剣を振るう。
「っ硬い。いや、僕の腕が未熟なだけか…傷は入ったけど。っく」
スケルトンジェネラルの攻撃を受け止めるが体勢が不安定だったのか少し後ろに飛ばされた。
(…速く重くなったか?)
1回目の攻撃より衝撃が来た。まだスケルトンジェネラルも本気じゃないってわけか。
そう考えているとスケルトンジェネラル――これからスケジェネと呼ぼう――が膝をかがめて飛んできた。文字通り、ほぼ垂直に剣を構えてだ。
僕はそれを剣で受け止めず、横に跳んで回避しようとする。そして、スケジェネが真横に来たらそのまま下段から斬ろうと思っていたが上手くはいかなかった。
スケジェネは僕のやや前方あたりで剣を地面に刺して、それを基点に体を回転させて蹴りを入れてきた。咄嗟の事で完璧には反応できなかったがガードは出来た。
「…強いな」
まさか剣が折れるかもしれないような事をしてきて、更に鎧を纏っているのに回転し蹴りを入れてくるとは…骨の体なのに筋肉?はあるのか。…矛盾が過ぎるな。
「…【瞬】!」
ただ速さだけを求めた剣技。
予備動作を最小限に、自爆特攻気味に敵を切る。
ッッ!!
手応えあり。このまま連撃を仕掛けトドメを刺す。
「【烈】」
速さと一撃重視の攻撃特化型剣技。
僕は振り返ってスケジェネに攻撃や回避の隙がないほどの速さで剣を振るう。しかし、スケジェネはこれに合わせるように同じ速さで剣を振るってきた。だけど、スケジェネも先程の"瞬"によるダメージがあるのか動きが遅い。
よく見るとスケジェネの頭部の一部が欠けており、剣も僕と打ち合う度に刃が欠けていってる。…やはりアダマンタイト鋼製のこの剣の硬度が硬いのか、それともスケジェネが持っている剣が古いのか…恐らく後者であろう。
スケジェネ自身もこのまま行けばいずれ刀身が折れてしまうことも分かっているのか少し焦っているようだ。最初に比べて少々剣が雑になってきている。
「生前のお前と戦ってみたかったよ。余程強かったのだろう」
アンデットの生前の怨みや未練が強い者が魂が無く肉体だけで動き回るのが大半だ。…まぁ、アンデットの一部はこの世界を彷徨ってる不浄な何かが固まって出来てるけど…
強いアンデットの大半は生前でも強者だと言われている。アンデットになっても生前で使っていた技や能力は体が覚えてるのか使ってくる。…例えば、鮮血の大賢者様が倒したとされるワイトキングは不老不死を求めた賢者がアンデットになった姿らしい。
「…これで終わりだ。【断】」
剣を振るう。
スケジェネはそれを折れかけの剣で受け止めようとするが…僕の剣技は剣を折り、そのままスケジェネの頭部、鎧もろとも両断した。
カン謝…する…ワカき者よ
そうスケジェネから声が聞こえた気がする。
スケジェネは両断された事により立たなくなりそのまま倒れた。そして、鎧と剣だけを残してその体は光の粒子となって天へと昇って行った。
「安らかにお眠り下さい」
僕は胸に手を当てて目を瞑る。
アンデットは倒されるとこうして身に纏ってる物だけを残して肉体は消えていく。原理は不明だが、神の御技だろうと言われている。
神様といえばこの世界に神は実際する。空想上の存在ではない、本当に存在する。…まっ、僕は会ったことも見たことも声すら聞いた事はないんだけどね。
神様の声を聞ける人はそれこそ巫女か選ばれた人のみだ。僕という平凡な冒険者が声を聞くなんて事は一生ないだろう。
…さて、終わったか。
僕は剣の刃を刃こぼれがないか確認してから鞘に仕舞った。刃こぼれ無し、よし。
「よくやった。試験は合格だ」
鮮血の大賢者様が降りてくる。ズボンだから良かったけどあれがもしスカートとかだったらどうするつもりなのだろうか?そんな馬鹿みたいな事を考えてたらいつの間にか目の前に居た。
「お主が何を考えてたのかはワシには分かるからな?」
「え…あ、その…すみませんでした」
「ふん、まぁいい。ワシがスカートを履く事は無いからな」
あっ、本当に心読めたんですね。…てことは、今考えた事も読まれてる訳か。まぁいいか。
「あのスケルトンジェネラルは災害ランクに例えるなら6だ。冒険者ランクに例えるならミスリル以上、アダマンタイトより少し弱いくらいだ」
「そうだったんですか。…やけに強いとは思いましたが、6だっとは」
災害ランク6は、それ一体で村が壊滅させる事が出来る強さを持っている。
そもそも災害ランクとは何か?1から10まで存在しており10に近づくほど強くなっていく。簡単に説明すると、だ。
1はそもそも害がない。でも、魔物だから…と言う理由で分類されている。
2は少し害はあるけど、子供でも倒せない事は無いから気にするほどではない魔物だ。例えるならスライムの進化前のスライムだ。
3は害はあるが、戦闘経験が少しでもある大人でも倒せる魔物が分類される。
4は戦闘経験がある大人が3人で倒せる魔物。冒険者の事だ。ランクで例えると
ここからは冒険者で例える。
5は
6はゴールド10人、もしくはミスリルが3人、
7はミスリルが10人、もしくはアダマンタイトが2人でなら討伐可能な魔物。
8はアダマンタイトが4人、オリハルコン1人でなら討伐可能な魔物。
9はアダマンタイトが8人、オリハルコンが3人で討伐可能な魔物
10、鮮血の大賢者連れてきて〜、だ。
…あくまでこれは目安なので確実に勝てるか、と言われたらなんとも言えない。ん?10はなんだ?ってか?言った通りだ。
「6を単独で倒したお前は既に並みのミスリル冒険者より実力としては上だろう。もっと早くに試験を受けられたはずだが…」
「あんまり活躍してませんでしたからね。強い魔物もあんまり現れませんでしたから」
「なるほどな。ミスリル冒険者の証はワシが後で作ろう」
「鮮血の大賢者様が作るのですか?」
「あぁ」
「それは…あれですね。ご利益がありそうですね」
「…お主は何を言っておる?」
大賢者様からヤバいやつを見るような目を向けられた。
「えー、なんでもないです」
「………らしいな。さて、この後少し付き合ってもらうぞ?」
「え?」
「思ったより試験が速く終わってな。このままではチマチマとした仕事をするだけだ。最近は仕事も溜まって逃げられなくてな…息抜きが必要でな。…分かるだろ?」
「え、えぇ…まぁ、はい」
「だから付き合え。そして、帰った時に言え。試験が長引いたと、な」
なるほど、これが噂に聞く脅迫ってやつか。…逆らわない方が良さそうだ。
「分かりました。…じゃあ、一緒に行きましょ」
「…ワシが転移させるんじゃが」
「あはは。…でも、鮮血の大賢者様と一緒に何処かに行けるのは光栄です」
「……変わり者だな」
「変わり者ですか」
「あぁ、大半の奴はワシを前にすると畏まる。なんなら顔が青ざめて会話すらできない奴も多い。王族だろうと敬語を使い不快がないようにする。だが、お前はワシの前でもそんな事を言う奴はほとんど居ない」
「そうなんですか。…失礼ですが、見た目も合わさってどうしても」
「ほぅ…つまりワシは子供だと?」
大賢者様から圧を感じる。思わずすくんでしまうほどだが…不思議と恐怖は感じない。
「否定はしません。…なんというか、妻のミルアと同じ雰囲気を感じてしまい」
「………ふん。それより行くぞ」
「分かりました」
「ワシに捕まれ」
「…ええっと、どういう感じに」
「なんでもよい。体の一部に触れるのでも服でも、なんなら抱きついても良いぞ?」
ニヤッと悪い笑みを浮かべながら大賢者様がそう言う。
「いえ、妻が居ますし……あ、でもミルアは一夫多妻を認めてますが」
「…のう、お主。その発言は誤解を生むぞ?」
「え?…あぁ、そういうことですか。すみませんでした」
今の発言は大賢者様に奥さんになって欲しいという発言に聞き取れるな。…とんでもない失言だ。
「お主はとことん他と違うな。ワシに今みたいな事を言ってきた奴は居ないぞ。他にもワシの事が好きだ、とか結婚する気はないのか?うちの息子を、などな」
「流石に恐れ多いんでしょうね」
「むぅ…」
「大賢者様は結婚願望とかあるんですか?」
「…普通、女性にそれを聞くか?死ぬぞ」
「社会的にも、物理的にも死にますね。…なんというか、大賢者様になら言っても大丈夫というか、なんていうか…自分でもよく分かんない感情と言って良いんですかね?安心感があるんですよ」
「ふむ………の影響かもな」
「え?」
「…なんでもない。普通にお主が馬鹿なだけだろ」
「酷くないですか?」
「うるさいわ。それより早く掴まれ、掴まないとならワシが掴むぞ」
「それはご勘弁を……これでいいですか?」
僕は大賢者様の肩に手を置いた。…いやぁ、丁度置きやすい場所にあったからね。
「殺すぞ」
「ほんと、すみません。今のは自分でも失礼だと思いました」
「…ちっ、調子が狂う。それより行くぞ、転移」
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