美しく繊細な文章で書かれる江戸時代のミステリー小説です。

主人公の同心、仁助は不可思議な事件を『うた』という少女に助けられながら解決していきます。

事件が起きた背景などの描写も丁寧にしっかり書かれているので主人公達だけでなく被害者や、時には加害者の気持ちも分かってしまったりする程文章力が高いです。
犯行手順も人の心理を上手く利用しているものがありますが強引さを感じる事はなく、納得しかありません。

静かで落ち着いた雰囲気が漂う文章もあって事件を解決しても大団円とはいかず、物悲しさや切なさが残ります。
ですが、その分うたを取り巻く環境の変化や仁助とのやり取りにじんわりとした癒しや救いを感じます。

一つ一つの事件の話は丁度良い長さで読み易く、事件を解決する度に少しずつ仲良くなる二人に一度読めばこの作品にきっと惹き込まれると思います。

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神が隠した現しおみ