第4話
入学して早くもひと月が経った。
噂では既にクラスのLINEグループができているらしい。
もちろん俺は誘われていない。
噂では一昨日クラスメイトで夕食を食べに行ったらしい。
もちろん俺は誘われていない。
……うん。言うまでもない。
完全にクラスでハブられてます、はい。
いやまさか1週間でここまでキレイにハブられるは思いもしなかったね。
隣の席の友野さんにいたっては視線さえもこっちに寄越さないもん。
出席番号が1番なこともあって一番前の窓側だから試しに降るはずもない「大雪が降ってるよ!」と冗談っぽく言ったら、「ほんとですね」と言いながら廊下の方見てたもん。
もう俺がいる窓側さえ見なくなってる友野さん。
更にいうと友野さんは自分の文房具全てに「友野」と書いてあるシールまで貼っている。びっくりしたのがシャー芯が入っている箱にまで小さいシールを貼っていた。
これはあの桜町とかいう悪魔が勝手にコンパスを持っていたのを実は見ていたらしく、次の日には全てにキレイに貼られていた。
もうゲームで言ったら完全に敵対モードに入ってる友野さん。
そんな入学早々罰ゲーム状態の俺にも、唯一の安らぎを探せるチャンスがある。
それは部活だ。
この高校には部活が多くかつ活発なこともあり、先日の先輩たちによる部活紹介でもどの部活も楽しそうでどこに入るか大変悩ましい。
入るとすると中学では全国まで行ったサッカーか、はたまたモテモテハーレムを築くべく女子生徒の多い文化系の部活か。
……うーん、実に悩ましい。
「悩んでる顔もいいね、みこt、……あっ、天草くん」
「もういいよそれ、いつまで続けんだ」
しかもこんな誰もいない教室で。
時は夕暮れ。場所は放課後。
教室に残るのは同じくハブられ者の桜町と俺の二人。
クラスメイトからは既にバカップルとして見られており、悲しいかな、コイツのせいでハブられているのに、コイツしか話す相手がいないという悪循環。
その桜町は相変わらず友野さんの椅子に勝手に座って俺の顔をジロジロと見てくる。
顔だけ見るとモデルかと思うが、心の中では一体何を考えているのやら。
普段はジロジロ見てるだけだが、たまに話しかけてくると思ったら俺の心を読んだような事を言ってくるから末恐ろしい。
しかし、いま俺の心を読まれるわけにいかない。
なんとしてでも桜町からの開放を達成しなければ、この3年間を棒に振ることとなる!そのためには桜町に悟られずどこかの部活に入部届を出すしかない。
まずは部活だけでも
その入部届を出すために、ここ2,3日放課後まで残り一人になるスキを伺っていたのだが、何故か桜町も残り続け、傍から見たらバカップルが放課後まで残るという絵面だけが記憶されていく。
なんとかしないと……。
「なぁ、桜町。そろそろ帰ったらどうだ」
「尊が帰るなら帰るよ」
「いや……俺はちょっと宿題してから帰るよ」
「宿題なんて出てないでしょ」
「いやほら、塾の。塾の宿題があんだよ」
「塾なんて行ってないでしょ、尊は」
「……」
……手詰まりである。
いや、そもそも勝負にもなっていない。
というか怖いよ桜町さん。
「それよりも部活どうするの?」
「えっ!?」
「それで悩んでたんでしょ?」
「え、いや~。別にそういう訳ではないよ、うん。帰宅部にしようかと思ってたし」
「でも入部届書いてたよね」
「……」
な、なぜだ。なぜバレてる。
「なーんか授業中コソコソ書いてるなと思って見てたら、入部届だったから。部活で悩んでるのかと思って」
そ、そこまで見られてたのか。
コイツのスキを見てという考えでは甘かったのか。
すると唐突に俺の腕に絡みだす桜町。
そしてそのまま肩によりかかり耳元で話す。
「……だめよ尊。一人で違う所入るなんて。尊は私と一緒の部活に入るんだから」
「……」
「ううん、部活だけじゃない。この先の人生の全て。二人で生きるの。……いい?」
──いい?
その回答に俺は。
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