第2話
「……なんでここがわかった」
休憩時間、早速の俺の机までやってきて断りもせず隣の席の椅子に座る桜町。
優しい隣の席の友野さんは気を使ってこんな奴に席を譲ってくれた。
そんな優しさなんてつゆ知らず、譲ってもらって当たり前と言わんばかりにお礼も言わずに席に座る。
「なんでって? ……だって彼女だもん」
「そんなの理由になるか、誰だ、誰に聞いたんだ」
「ひ・み・つ」
こいつのことだ。
教師でも脅したんじゃないだろうな。
「尊の彼女として……あっ、学校では天草くんか、ごめんね?」
「学校では名字呼びとかしょうもない約束なんてした覚えもないし、そもそもお前の彼氏になった覚えもねぇ」
「なにを言うかと思ったら、中学二年生の時に告白してくれたじゃない」
「断ったのはお前だろ」
……そう、何を隠そう。
俺が中学二年生の時に告白した張本人がこの桜町琴音である。
コイツに心を砕かれモテるために必死に努力していたある日。
こんな噂が流れた。
『桜町と天草が付き合っているらしい』
俺からしたら青天の霹靂もいいところだ。
あれ以来話したこともないし、3年生にいたってはクラスも違っていた。
部活も帰り道を異なる彼女との接点なんて、何一つないはずだ。
しかし!!
何故かその噂を桜町は認めたのだ。
その日からは朝から帰りまでベッタリ俺の隣に張り付き、友達とも話す機会がなくなる始末。挙句の果てにはクラスメイトも何か毎日毎日キモくね?と若干引き気味になり、振られた時よりもクラスメイトとの距離が広まるという最悪な学校生活が始まったのだ!!
俺は……俺はただコイツから開放されたいだけなんだ!
「桜町、頼むから高校では普通にしてくれないか」
「普通だけど」
「いや、もうこの距離感から普通じゃないだろ、というか何膝の上に座ろうとしてんだお前」
いつの間にか椅子の距離を縮めて俺の膝へ引越してくる彼女をなんとか押しのける。
もうこんなやり取りをずっと続けているだ。俺も傍からこの様子を見てたら引く。クラスメイトたちの反応は何も間違っちゃいない。
ちらっと周りを見ると既にクラス中の視線を集めている。
このままだと中学生活の二の舞いだ。
なんとか、なんとかコイツを引き離さないと……。
と、そんな事を考えていると一人の女子生徒が近づいてくる。
「桜町さん。天草くんが嫌がってるじゃん。離れてあげれば」
確か、彼女の名は、
中学はバレーで全国まで行ったとか自己紹介で言っていた通り、流石に桜町ほどではないが身長も高く出るとこ出て引っ込むとこは引っ込んでおり、非常にスタイルの良い女性だ。
ボーイッシュな整った顔にポニーテールでまとめた髪型が非常に似合っている。
「……何かようかしら。田口さん」
すると若干声を低くした桜町が臨戦態勢といわんばかりに立ち上がり田口さん睨みつける。
「だから、天草くんが嫌がってるから、離れてあげたらって言ったの」
「……まず1つ、尊は嫌がってない。そして2つ、あなたに言われる筋合いはない」
……いやちょっと怖すぎません?
まだ入学初日なんですけど。
あとナチュラルに俺のことを名前呼びしてるし。
「そう。……ねぇ天草くん、さっき嫌がってたよね?」
「尊、嫌がってるわけないよね?」
……え、ここで俺?
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