第十一湯 千三百年の温泉



 吊り橋を後にした私たちは、ロードスターでさらに山を登っていき、ボルケーノハイウェイの最長地点まで来た。地平線には山々が連なり、麓の街々は草原のように青々とぼんやり浮かんでいる。

 そこで夏帆にリクエストして眺望とロードスターの収まる写真を撮ってもらった。ロードスターが主役でありながら、那須高原の自然の美しさが分かる写真だ。あいかわらず写真を撮るのがうまい。夏帆も自分の写真の出来に満足したようにウンウン頷いていた。


「我ながらいい出来だね。これインスタに載せてもいい?」


 私は「減るもんでもないし、別にいいよ」と素っ気なく応えておいた。

 その後は殺生石のところまで山を降りて、本日の目的地である温泉に辿り着いた。


 鹿の湯。1300年前から続く歴史ある温泉であり、松尾芭蕉が『奥の細道』の旅の途中で寄ったことでも知られている。岩が白くなるほどの硫黄を含んだ川が流れており、温泉処は両岸に立てられた平屋とそれを渡るための渡り廊下で構成されている。外観はもちろん、屋内も伝統的な木造建築で戦国時代にタイムスリップしたような感覚である。

 入ってすぐの受付でお姉さんに尋ねる。


「大人2人で湯治体験したいんですが、部屋空いてますか?」


 事前に夏帆と調べた時に、せっかくならのんびりと温泉に入ろうと決めたのである。湯治体験では休憩処を利用して半日ほど温泉を堪能することができる。

 受付のお姉さんは、こくりと頷いて笑顔で応えてくれた。


「空いてますよ。1号室の大部屋でお願いします」


 お姉さんに案内されて奥の廊下を進む。ふすまを開いた先は12畳ほどの休憩処で、座卓と扇風機が置かれた空間である。その数から3組ほどの相部屋だと判断した。座卓にはお茶セットとポットが置かれている。

「ごゆっくりどうぞ」とお姉さんが部屋から去った後、夏帆がマジマジと部屋を見渡して「おぉ!」とつぶやいた。


「普通に泊まる部屋みたいだね」


「そうだね。せっかくだし、くつろぎスタイルになろうかな」


 そう言って私は服を脱ぎ始めた。


「サヤちゃん! なんで脱いでるの!? ここ裸になるところじゃないよ!」


 驚いた表情の夏帆はふすま側に回って腕をパタパタと動かした。

 私は荷物から自前の作務衣を取り出して見せた。


「別に、今すぐなら誰も来ないでしょ」


「ああ、それに着替えるのね……。流石サヤちゃん」


 何が流石なのか分からないけれど……。最近のお気に入りの部屋着はこちら、藍色の作務衣。着やすくて動きやすいので部屋着として。旅館のくつろぎ感を出すためにはどうしたら良いのかを考えた結果、作務衣という結論に至った。


「いや、それなら先に温泉入った後に着替えようよ」


「たしかに、一理ある」


 あごに手をやってフムと頷くと、夏帆は反対側の手を取ってぐぐっと引っ張った。


「じゃあ、さっそくお風呂行ってみよう!」


 渡り廊下を通って女湯の暖簾を潜る。

 脱衣所の壁と天井、衣類棚など、そのすべてが年季の入った木材でできている。古風な日本のお風呂場の雰囲気が漂っている。浴場との空間が繋がっているため、白い湯気が着替え処まで入ってきて私の入浴欲を最大限まで高めてくれる。

 衣類を籠に入れてお風呂へ向かう。

 黒柿色の木材で作られた空間。田の字に仕切られた4つの湯船がある。漂う硫黄の匂い。白く濁ったお湯。そこから立ち昇る湯気が幻想的な雰囲気を醸し出している。

 本物感がすごい! めちゃめちゃ疲れに効きそう。

 湯船の手前には、かけ湯のためのお湯が張られている。壁に書かれた心得には、タオルをかぶった状態で頭を下げ、ひしゃくで掬ったお湯をかぶるという事が説明されている。そのかぶる回数、なんと200回。


「本当だったんだ、200回かぶるのって……」


「ね、ホントだったでしょ」


 夏帆は勝ち誇ったような表情で胸を張った。

 タオルをかぶって跪き、お湯をかぶる。

 めっちゃ熱い! こんなのずっとかぶれるのか?

 ざばぁざばぁと掛けていると汗が背中から吹き出してくる。無言でひたすらお湯をかぶり続け、ようやく折り返しを迎えたあたり、ひしゃくを持ち上げる手が疲れて止まると真っ赤な顔をした夏帆と目が合った。


「……そろそろ止めてもいいかな」


「子供は100回でいいらしいし、止めてもいいんじゃない?」


「ムキーーーー! あたし立派な大人だし! まだまだ大丈夫だし!」


 意地を張るところがものすごく子供っぽいと思いますが……。

 正直なところ、何回かぶったか分からなくなったけれど。私ももう少し頑張ってみよう。

 かぶり湯は全国的にも珍しい温泉効果を高める入浴法である。つまり温泉に入る前から湯治は始まっているのである。


 10分以上の時間を掛け、律儀に数を数えていた夏帆が終えたタイミングで私もかぶり湯を終わらせた。いよいよ温泉だ。

 4つの湯船はそれぞれ温度が異なる。左手前から41℃、42℃、44℃、46℃と温度が上がっていく。入浴時間として、腰、胸、首までそれぞれ1分ほどの短熱浴がオススメらしい。そもそも44℃以降は熱すぎて、それ以上の時間入っているのはキツイと思う。


「低い温度から挑戦してみたいけど……」


 そう言って夏帆は浴場を眺めたけれど、手前の低めの温度の湯船は人気があるようで既に埋まっている。しょうがない。ちょっと熱そうだけど空いている湯船に行ってみよう。

 ということで、私たちが挑戦するのは44℃である。間違いなく今まで入った温泉の中で一番高い温度だ。

 おそるおそる足から徐々に入ってみる。まだ大丈夫。次に肩まで沈めてみる。大丈夫。じっとしてみる。


「……あれ? そんなに熱く感じない」


 拍子抜けしてそう呟くと、隣の夏帆もブンブンと縦に首を振った。


「あたしも思った。さっきのかぶり湯が熱かったからかな?」


 なるほど。入念にかぶるのはこの温度に慣らすために必要なのかもしれない。

 ジンジンと身体の芯を熱くしていく感覚がある。このパワフルな感じは他の温泉では味わえなさそうだ。

 ……とはいえ、


「さすがにずっとは入れないな……」


 説明書きにも短熱浴が良いって書いてあったし、長湯はしない方が良さそうだ。

 すると夏帆が肩を静かに叩き、


「サヤちゃん、あっちにもお風呂あるみたいだよ」


 と、4つの湯船よりもさらに奥を指差した。

 階段を降りた所に大人数でも入れる大きめの浴槽があった。天井が高く開放感がある。普通の温泉のような雰囲気である。


「あぁ……ちょうどいい」


 こちらのお風呂は肩まですんなり入ることができた。温度は43℃ほどらしいけれど、実家のような安心感である。


「これは違う温度を行き来すると代謝あがりそうだね」


 そうして再び私は44℃の湯船に浸かった。サウナ後の水風呂が苦手な私でも、この方法なら『ととのえる』ことができそうだ。

 その様子を見ていた夏帆はヤレヤレと首を振った。


「ふふん♪ サヤちゃんはお子ちゃまなんだからぁ。あたしは46℃に挑戦してみるよ!」


「無理はしない方が良いと思うけど……」


「大丈夫大丈夫。2℃しか変わんないし」と意気揚々と夏帆は最高温度の湯船へ入っていった。肩まで浸かった夏帆は柔らかな表情である。


「うん。これならまだ──」


 次の瞬間。夏帆の身体に衝撃が走った。


「熱゛ッ!!!!」


 夏帆は飛び跳ねるように熱々の湯船から出て、足を抱えながらしばらく床でゴロゴロとのたうち回っていた。

 哀れな夏帆の姿を眺めていた私は、頬杖をつきながら言った。


「身の丈にあった行動をするのも大人だと思うよ」


 あと、他の湯船に浸かってる人に飛沫が飛ばないよう、行動に注意しようね。



 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  



 私は今、楽園にいる。山奥の誰も寄らないような秘境の温泉宿である。

 物静かな休憩室。山からは小鳥のさえずりと近くを流れる川の音が聞こえてくる。

 涼しい風が入り込んで肌を撫でると、熱々の温泉に入りたい欲がもくもくと立ち込めてきた。私の気分に呼応するように宿の奥から湯気が立ち込めてくる。


「よし、もう一回お風呂入ってこよう」


 ルンルン気分で湯けむりの立ち昇る方へ歩いていき、発生源と思われる引き戸を開けると、そこには知っている人が立っていた。知ってはいるけれど、できれば顔を合わせたくない人物。この人に叱られない週はない。会社の敏腕マネージャーである。

 マネージャーは容姿端麗でポニーテールとキリッとした眉が特徴的なのだけれど、その柳眉が逆立てられている。


「佐倉さん! 今日中にお客様向けの資料作るのお願いしたわよね?」


「えっ、佐藤マネージャー!? なんでここに……。というか、それはこの間の緊急リリースを優先したから別の人に任せるって話になりましたよね」


 するとマネージャーは血相を変えた。


「言い訳はいいから! 早くしてよね」


「そ、そんなバカな……」


 踵を返してポニーテールが揺れる姿を見送りながら、絶望した私はタオルを手にしたまま膝から崩れ落ちた。

 目の前の光景が白んでいき、意識が遠退いていく。


 ────────

 ──────

 ────


「はっ!?」


 寝転がっていた私の目に入ってきたのは見知らぬ天井。いや、ここは鹿の湯の休憩室である。

 夢だった。

 忌々しい仕事め、こんなところまで出てくるとは……。


 お風呂から上がり休憩室に戻ってきた私たちは、出前で昼食を注文した。部屋に掛かっていたお品書きには麺類や丼もの、定食などバラエティ豊かなメニューが書かれていた。近くのお食事処から出前で部屋まで持ってきてくれるようである。

 夏帆が今日撮った写真を楽しそうに眺め、その隣でのんびりと私が読書をしていると、注文の品が届いた。私が頼んだのは天重。そして夏帆はエビフライ定食である。

 温泉でデトックスしたおかげでお腹がめちゃめちゃ減っていた。空腹とは一番の調味料とはよく言ったもんだ。ごはんが最高に美味しい。私たちは満足いくまで各々の料理を堪能した。

 その後ふたりで畳に横たわって食休みをし、いつの間にかぐっすりと寝てしまった。


 そして今に至る。

 しかしまぁ、よく寝れたなぁ。畳でお昼寝なんて何年ぶりだろう。身体に染み込んだ疲れが温泉で溶け込んでいったみたい。今は身体がすごく軽くなった気がする。

 ドライブして、温泉入って、食事して、お昼寝する。なんて優雅な休日だろう!

 気持ちいい目覚めに腕を伸ばしていると、すでに起きていた夏帆がスマホから顔を上げた。


「あ、サヤちゃん、やっと起きた」


 スマホの時計を確認すると15時を示していた。お昼を食べた後すぐに寝ちゃったから2時間以上寝ていたみたい。ずいぶんと喉が渇いたな。


「寝ているサヤちゃんも可愛かったよぉ」


 ニヤニヤしながら夏帆が私の寝顔写真を見せてきた。おそらく夢の中で上司が登場してくる前だろう。目尻を落とした優しい表情で、緩んだ口元からヨダレを垂らしていた。口を開けて寝ていたせいか、そりゃ喉も渇くよね。……って、勝手に写真撮るな!

 何度写真を消せと命令しても「もうクラウドに保存しちゃったよ〜」と窘められるだけの押し問答が続いた。諦めた私は溜め息をついて腰を上げた。


「なんか飲み物買ってくるよ」


 すると夏帆は「ぬっ! 待った、サヤちゃん」と呼び止めた。


「それならいいもんがあるよぉ」


「じゃじゃーん!」と夏帆がカバンから取り出したのは、コーヒー豆の入った小瓶、片手サイズのコーヒーミル、そしてフレンチプレスである。


「マスターに鹿の湯いくって話をしたら貸してくれたんだ」


 夏帆はマスターの声色を真似しながら「”……これ持っていきな”」とミルを差し出した。全然似てないけれど、渋いマスターの一挙手一投足が容易に想像できた。

 ミルを受け取った私はまじまじとそれを眺めた。コーヒーミルと言えば木製の台の上に金属の回す取っ手が付いているものを想像するだろう。家のインテリアとしてそれなりの大きさがあると思う。それに比べてこのミルは、コンパクトで非常に軽い。取っ手も折りたためるようなので持ち運びに便利そうだ。


「本日のコーヒー豆は『エチオピア・モカ』です。世界最古のコーヒーとも言われています。歴史ある温泉でいただくにはぴったりだと思いますよぉ」


「へぇー、そうなんだ。まるで喫茶店の店員さんみたい」


「でしょー?」


 自慢げな笑顔の夏帆はそのままコーヒーを挽く作業を続けた。

 ……いや、皮肉を言ったつもりだったんだけど。さては自覚なしに働いているな。


「次に挽いたコーヒー豆をフレンチプレスに入れます。がその前に」


 そう言って夏帆は、卓上のポットからお湯を少量注ぎ、クルクルとワインのテイスティングのように回した。湯気がフワフワと漂う中にコーヒー粉を入れた。


「こうすることで粉を蒸らします。少し経ったらお湯を注ぎます」


 ポットからお湯をゆっくりと注ぎ、フレンチプレスの金具で水位が見えなく辺りで止める。そして蓋をした。


「はい! あとは4分ほど待つだけです」


 私はコーヒーを淹れる様子を興味津々に眺めていた。フレンチプレス持ってないから淹れ方よく分かんなかったけれど、意外と簡単なんだなぁ。コーヒーミルが無くても、事前に挽いてある豆を買ってくればよさそうだし。

 ふと生まれた疑問を口にしてみる。


「フレンチプレスと紙フィルターだと違いってあるのかな?」


 よくお客さんから訊かれる質問なのか、夏帆は用意していたように回答した。


「そうだね。フレンチプレスは、コーヒー豆をお湯に浸すから直接味わいを抽出できるんだよ。あとフィルターが金属だからコーヒーの油分もしっかり取れるんだ。紙フィルターで淹れると油分まで濾し取っちゃうんだよね」


「あっさりした味わいを出せるのが紙フィルターの良いところだけどね」と夏帆はスマホのタイマーを確認しながら言った。

 なるほど、結構勉強してるんだな。関心関心。

 夏帆はフレンチプレスの蓋を爪でカツカツとつつきながら、


「何よりも、フレンチプレスは簡単でいいね。ペーパードリップってお湯の注ぎ方で味が全然違ってくるし。……だから喫茶店のブレンドは、マスターじゃないと淹れられないんだよ。あたしはまだこれを使って淹れるやつしかやらしてもらえない」


 と、最後は溜め息で締めた。


「あぁ、だから──」


 この間のブレンドコーヒーは味わい深かったんだ。……とは言えない。

 でも、夏帆が淹れてくれた黒湯コーヒーもおいしかったよ。


 4分後。フレンチプレスのつまみを押し下げて濾す。ガラス瓶の中でコーヒ粉が舞いながら底の方へと圧縮されていく。お盆に置いてあった湯呑みをお借りして、そこにコーヒーを注いだ。


「サヤちゃん、運転お疲れさま! 帰りもよろしくね」


 差し出された湯呑みを受け取りながら私は応えた。


「うん、ありがとう」


 運転するだけでお礼言われるならいくらでもしてあげよう。

 鼻先まで近づけるとかすかにフルーティな匂いが漂ってくる。口に含むとコクのある爽やかな酸味を感じられる。喉を通ると口の中に甘味が残って味わい深い。これが世界最古のコーヒーか。


 そんな風にお腹からポカポカと気持ちいい暖かさを感じながら休日の昼下がりを過ごしていた。そうは言っても時間は止まってくれることはない。帰る時間も気にしなくてはならない。


「もう一回、お風呂入ろうか」


「うん! 行こう!」



 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  



 昼間の暑さが緩やかに落ち着いてきた夕方の東北自動車道を南下していた。

 二度目のお風呂に行った後、再び休憩してはもう一度といった具合に、結局私たちは3回ほど温泉を堪能した。温泉に魅了されたのもあるけれど、帰りたくないという気持ちがどこかにあったんだろう。おかげさまで、今ではお互いの身体から微かに硫黄の匂いがするほどである。

 やがて首都高に入ると、


「戻ってきちゃったね……」


 夏帆は少し寂しそうな声でそう呟いた。

 夕陽が高層ビルの窓を反射させる。一日の終わり、つまり休日の終わりを感じさせる。夢のような時間が終わり、現実に戻ってきたんだと実感させられる。きっと夏帆はそんな気持ちだったんだろう。


「そうだね……。でもね、私はこの感じ、結構好きなんだ」


「なんで?」


「何時間もかけて温泉行って帰ってきて、癒やされたような気も、逆に疲れたような気もするんだけどね。でも、なんか明日からも頑張ろうって思えるんだ」


 西日が眩しく目に染みる。たしかに夕焼けは寂しさを感じる。けれども美しい景色でもある。

 一日あった辛いことも楽しいことも全部含めて、夕焼けが「お疲れさま」と言ってくれている気がする。

 今日という日は終わる。でも明日もきっと陽は昇る。エンドロールを迎えたら、また新たなストーリーが始まる。

 同じような毎日かもしれないけれど、まったく同じ日なんてない。だから明日もがんばろう。

 茜雲をしばらく眺めた後、夏帆は安堵したような表情になった。


「そっか、なんとなく分かった気がする」


 そして夏帆はスマホを取り出し、今日撮った写真を一枚一枚嬉しそうに確認している。

 声色はいつもの元気な夏帆そのものである。


「車って一日であんな遠くまで行けるんだね。神社とかパワースポットを回ったり、美味しいもの食べたり。さらに温泉にも入れる!」


「それに」とスマホをいじりながら夏帆は続ける。


「今日の写真アップしたら超バズってるよ! 特に沙耶ちゃんのロードスターの写真。みんな『かっこいい!』って言ってる」


「そう。それはよかった」


 内心悟られないように素っ気なく答えたけれどかなり嬉しかった。

 夏帆はそんなことに気づくことなく、スマホをいじりながら不敵な笑みでニヤニヤしている。


「これからは車と景色のマッチアップでバズらせるか。これは世界一のインスタグラマーになる日も近いね」


 相変わらずの俗物というか。……でもまぁ夢があることは良いことだ。


「サヤちゃん、今日はありがとう! おかげで次の目標が見つかったよ」


「こちらこそ、ありがとう」


「ぬ? サヤちゃんも何か見つかったの?」


「いや、別に」


 ふたりのドライブ、楽しかった。一人のドライブも楽しいけど、一人では感じられない楽しさを教えてもらった。それだけの話だよ。

 不思議そうに夏帆が見つめてくる。問い詰めてこないように話題を変えておこう。


「それより、教習所の方はどうなの? この間学科試験あるって言ってたよね」


 その言葉で夏帆の顔が徐々に青ざめていき、


「……あの、そのことなんですが」


 溜め息まじりにつぶやいた。


「落ちました……」


「…………」


 私たちの温泉ドライブはこれからだ!

 夏帆先生の次回作にご期待ください。


 もちろん物語はまだまだつづく。



 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  

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