第118話 まだ子供だから

悔しい。


気がつくと僕は涙が止まらなくなった。


だけど、凄く清々しい。


自分の全部を曝け出して頑張る事が、こんなに素晴らしい事だったなんて。


負けたけど、悔しいけど……それでも、なんでかな。


嬉しい。


初めて全力を出したよ。


初めて本気を出して負けた。


それで、思ったんだ。


僕は強いと思っていたけど、もっともっと強い相手がいる。


アークスが相手じゃなくても、この世界にはセレス父さん位強い竜公も居るし、その上には冥界竜のバウワーおじちゃんもいる。


なんだ……僕はまだ弱かったじゃないか。


なんで強いなんて思っていたんだろう。


アークスはきっとそれを僕に教えてくれに来たのかな。


アークス……また戦いたいな。


次こそは勝つのは僕だ……


◆◆◆


「妲己さん、カーミラさん……僕負けちゃった……」


「あれは仕方が無いのじゃ! 相手は大人の神なのじゃ……セレナは半神じゃが、まだ子供仕方ないのじゃ」


「あれと一人でやりあった。それだけでも凄い事です! まだ子供なのですから気にしない方が良いですよ」


確かにまだ子供……僕は子供だ。


「そうだね、僕は子供だった。これからもっと沢山勉強して頑張って……うん、強くなるよ」


「そうじゃな、セレナはまだまだ子供じゃ、絶対に強くなるのじゃ」


「そうですよ……ここから、ここからですよ!」


「そうだね……それじゃ僕はメルの所に行ってくるよ」


「メル様の所じゃと!?」


「メル様の所に行ってどうするのですか?」


「メルは此処の学園長でしょう? だから、色々学ばせて貰おうと思うんだ……僕は、その半神半竜だからなんでも出来る。だから何も学ばなかった。なんでも知っている……そう思ってたし出来ない事は何もない。そう思っていたけど、現実は違った。アークスと戦った時も『沢山学んだんだ』だから、これからも色々と学ばせて貰おうと思って」


「「そう!?」」


力だけが全てじゃない。


技術や工夫があればきっと違った結果があったのかも知れない。


だから、もっと、もっと学ぶべきなんだ。


虫の技を使うあの人からも沢山学んだ。


虫からも学べたんだ。


他の物からも沢山まだまだ学べるはずだよね。


◆◆◆


そんな訳で僕は学園長室に来た。


「メル……居る?」


「あっ、セレナくん、体はもう大丈夫なの?」


「もう、大丈夫だよ! あっ! エドガーもいるんだ?」


「勿論でございます……その、この度は残念でしたね」


「あはははっ、まだ僕は子供だから仕方が無いよ。これから頑張って強くなるから期待してね」


「ちょっと待って……まだ強くなりたいの?」


「流石はセレナ様……今度アークスが来た時にはぶちのめしてやりましょう!」


「うん、ここは学園でしょう? 基礎から勉強するつもりだよ。次は僕も勝つつもりだからエドガーも色々教えてね」


「ななな、なにを教えればよいのかな……禁呪とかかな」


「勿論でございます」


僕はまだ子供なんだ。


きっと、まだまだ強くなれる筈だ。


次にアークスが来た時にはきっと……

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