第111話 セレナVSアークス 裏 1


「セレナよ! 死んでしまうとは情けない」


目の前に冥界竜バウアーおじさんがいる。


「僕、死んでしまったの?」


「まぁな、一方的に負けていたな。首を引き千切られて、見るも無残だったぞ! あの、アークスは、その前のマモンであった時ですら『光の翼』じゃ通じなかった奴だ。まぁ、無理だ」


「死んでいる場合じゃないんだ。僕行くね」


「待て、待て! 今戻ってもまた殺されるだけだぞ。折角冥界にいるのだから、修行してから戻ればいい。冥界なら時間すら自由なのだからな」


という風にバウワーおじちゃんに勧められたんだ。


『どうすればいいんだろう?』


よくよく考えれば、ここには沢山の死者がいる。


ゼクトお兄ちゃんの技が負けたからには、多分ゼクトお兄ちゃんには頼れない。


良く考えたら、ゼクトお兄ちゃんはマモンに負けた様な事を言っていた気がする。


だったら、無理だよね。


冥界を歩いて、アークスと戦えそうな人を探してみた。


なかなか、見つからないなか、不思議な人を見つけたんだ。


虫なのかな?


恋人とイチャイチャしながら面白い事をしている。


姿形を人間の大きさの虫の姿に変えていた。


「相変わらず、凄いね……その能力!」


「僕が凄いんじゃない! 虫が凄いんだよ! 同じ大きさなら虫に勝てる生物なんていないからね!」


「本当にセイルは虫がすきなんだね」


「うん、だけど僕が一番好きなのはユリアだから……」


「うん、それは解っているわ」


確かにそうかも知れない。


虫って確かに凄いのかもしれない。


大きな虫。


人間位の大きさの虫ならアークスにも勝てるかもしれない。


「セイル」


「ユリア」


二人が見つめあっているなか声を掛けた。


「あの……」


「「なに!?」」


僕は、その技を教えて欲しいと頼んだんだけど……


「それは無理だよ! 僕にこの能力をくれたのは神虫(しんちゅう)様という虫の女神様なんだ!」


「イシュタスママじゃないの?」


「その辺は解らないけど、僕は君が知っている世界の住民じゃないのかもね」


「そうなんだ……そうだ、僕の能力で頑張って真似てみるから少し見せてくれないかな」


「それ位なら良いけど、真似るのは難しいよ」


「私もそう思うよ」


だけど、ようやく手掛かりを見つけた僕にはこれにすがるしか無かった。


「いい? これが強靭なカマキリの斧だよ!」


「凄いね」


「今度は、これが蜂だよ」


セイルさんは沢山の虫の力を取り込んだ技を見せてくれた。


これならいけかも知れない。


半年位修行し虫の力、その物でなく自分の体をクリエイトの力を使い変化させる事に成功した。


「僕に教えられる事はもうない」


そうセイルさんにお墨付きを貰い、僕は現生のあの時に戻って行った。


◆◆◆


ここからだ。


ここからまた始めれば良い。


「アークス! 勝負だ! マンティスアックス!」


僕は両方の腕をカマキリに似た腕に変えた。


武器を精製するのではなく、自分の肉体を変える。


僕の体は元は竜。


人の体になるのではなく、強靭な竜の体を人間の大きさに縮小して強化してカマキリの力を使う。


これだ……


ズバッ


「なっ、俺の体を傷つけるだと!」


「少しは満足させる事はできるかもね」


「お前、なにをした! さっきまでとは別人じゃないか?」


「それじゃ今度は僕の番だね……その体切り刻んであげるよ…そらそらそらーーっ!」


これじゃ駄目か。


体の表面は斬れるが肉は斬れない……


「がっははははは……そんな物じゃ俺は斬れぬ」


「これでも届かないのか……だが、まだだ! 斬って、斬って、斬りまくる……ハァハァ、ハァハァ」


斬って斬って斬りまくる。


「わはははっ、そんな物じゃ俺は斬れぬ斬れぬ斬れぬ斬れぬーーーっ」


これでも届かないのか……ならば……


「ワスプソード!」


今度はスズメバチの針に見立てた剣に僕の腕を変えた。


「なんだ、その腕は」


「鎌が無理なら剣……そう思っただけだよ!」


「ぐわっはははは! 剣に変えても無駄だ! 無駄無駄無駄……うっぎゃぁぁぁぁーー」


この腕の剣のモチーフはこの世界でも凶暴なスズメバチの針。


当然、毒がある。


「ようやく、初めて痛がりましたね……此処から」


「さっきまでとは別人のような動き! 馬鹿にして悪かった! 貴様を戦士と認め……本気で殺してやろう!」


「えっ……」


アークスが大きく拳を振り上げ……ただ落とした。


バガッバギッ


それだけで、僕の頭は潰された。


「ぎゃぁぁぁぁぁーー……」


物凄い痛みが走り僕は意識を手放した。


「これで終わりだ……お前の親父には及ばぬが久々に堪能した。ではさらばだ」


「……」


まだだ、まだ終われない。


◆◆◆


「セレナよ! 死んでしまうとは情けない」


目の前にまたバウアーおじさんがいる。


「僕はまた、死んでしまったの?」


「虫の力を使い戦うのは良かったが、まだ届かないな! ただ、相手はあのセレスですら苦戦した相手。胸を借りるつもりで頑張るのだぞ! 強敵手と戦えるのは竜にとっても幸せな事だからな」


「うん、わかった」


一回殺されているし凄く悔しい。


『悔しい?』


負けると悔しいんだ。


負けたくない。


絶対に負けたくない。


『強くなりたい』


なんで……


それは解らないけど、負けたくない。


「よう! 久しぶりだな!」


「セクトお兄ちゃん!?」


「なんだ、セレナ泣きそうな顔して」


僕はゼクトお兄ちゃんに事情を話した。


「そうか、マモン、いやアークスか!? 彼奴には俺達も負けっぱなしだったからな! 冥界に住んで暇だったから開発していた技がある! 光の翼を凌ぐ奥義だ……やってみるか?」


「うん……」


「いいか、セレナこれが光の翼の最終形態。光の翼クロスだぁぁぁぁーーっ」


凄い、光で出来た鳥が時間差で襲い掛かるんだ。


「凄い……」


「だろう? 光の翼で怪我をさせた所に時間差でもう一つの光の翼が襲い掛かるんだ。これが出来た勇者は恐らく俺一人だ。これならマモンにもいけるかもな」


「ありがとう、ゼクトお兄ちゃん」


そこから1か月修行をして光の翼クロスを僕は身につけたんだ。


「これで俺が教える事は何もない! いけ、セレナ! アークスをぶちのめして来い」


「うん」


また、僕は戦いの場に戻っていった。


◆◆◆


アークスが僕に背を向けている。


「必殺! 光の翼ぁぁぁぁーークロスーーッ」


両手に剣を持ち、二つの光の翼を放つ。


ドガガガガガガガガッ


「なっ、お前……また顔つきが変わった」


「アークス、ここからが勝負だ」


三度、僕はアークスに戦いを挑んだ



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