第3話 変わった家族

「ここで、合ってるかな…」

数日かけて…東京のとある場所までようやくたどり着いた…

僕が来ているのは、東京の都心からは少し離れた場所の、とある住宅街の中。

そして、その路地を通っていった先に、少しだけ周りとは違ったおもむきの喫茶店が見えてくる。

あれが、僕の新しい家…


カラン…カラン…


「「いらっしゃいませ!」」

「え、あ、はい…」

店の中は少し古風な喫茶店といった感じで、少し落ち着くような、そういった少し古風な雰囲気が醸し出されていた。

すると、定員さんのうちの1人が、こちらへ向かってきて…

「…僕、一人?」

「…え?」

「…えっ?」


「ごめんね…うちの従業員には写真くらい見せておくべきだったよ…」

「いえいえ、構いませんよ…。」

正直、戸惑っている。

今までで一度も、子供に間違われたことだけはなかったはずなのに…

そんなに童顔だろうか…?

「…え~っと…ごめんね…私が勘違いしちゃって…」

「…良いですよ…気にして…ませんから…」

「結構気にしてるっぽいけど…」

若干ショックではある…

「と、とりあえず、ここまで来てもらって悪かったね。本来は僕たちが行くべきなんだろうけど、何分なにぶん…時間が無くってね…とりあえず荷物は二階の部屋を貸しておくから、そこに置いてきてくれないかな…?」




「…思っていたより、すんなり受け入れてもらえたな…そんなもの…なのか…?」

…今考えても意味はない。

トランクの中の物を整理するにしろ…そもそも、もとよりろくに欲しいものなんてなかったから、トランクに入っているのは数日分の着替えとか…あとはちょっとしたものだったり本だったり…

…多分…今お店が開店している間はなにもすることなんて無いだろうし…

部屋の整理でもしておこうか。




「明くん、ちょっと来てもらえるかな?」

下の部屋からさっきの人の声がした。

整理はとっくに終わって、あれからそこそこの時間がかかっている。時間にしてだいたい三時間前後だと思う。

時計がないから…憶測だけど。

呼ばれたこともあり、少し早足で急いできた。

…お店の静けさからして、もう閉店し終わったあとだろうか。

「やあ、君が明くんね。こんにちは。あと…早速私たちの従業員が迷惑かけたみたいね…」

「…そのせつはホントにごめんね…」

「いえ、『その節』は謝罪をもうとっくにいただきましたので、大丈夫ですよ…」

「…はぇー」

少し感心したような息をこぼして、大学生くらいのお姉さんは感心…したのだろうか?

それに対照的に、恐らく夫婦と思われる30代くらいの若い男女が、少しだけ微妙そうな表情を浮かべた。

「では、改めて自己紹介をしましょう…僕の名前は紀村 明です。…よろしくお願いします。」

「僕の名前は佐藤さとう 拓磨たくま。ここの喫茶店の店長…かな。」

これから僕の父親となる相手なのだから、名前くらいは覚えておかないと…あとは特徴…

特徴か…

身長は…高め。

少なくとも、僕よりは数十センチは上だ。

170㎝くらいだろうか?あるいはもっとあるかもしれない。

見た感じ髪はそんなに整えない性分なのか、もしくは仕事疲れなのかボサボサの黒髪。

顔の面持おももちからは優男やさおとこという印象だ。


「私はこの人の妻の佐藤 みお。よろしくね?」

「はい…よろしくお願いします。」

…この人はすごく顔が整っている。

…少し苦手だ。

ゆらゆらと彼女が動く度に綺麗な黒髪が後ろで踊る。見た目では、秘書めいた何でもできそうな万能人みたいな雰囲気だ。

本当がそうなのかは分からないけど…知らないから判断出来ない。

身長は僕とほぼ変わらない感じだ。

髪はきちんと整えられていて、非の打ち所がない。


「えっ…と、私はここで働かせてもらってる…従業員の天木あまき 奈那なな。一応大学生…よろしく…」

何を緊張しているのか…?

「はい…よろしくお願いします。」

「…うん!」

まるで花が咲くような笑顔。という表現はこのようなことを言うのだろう。

…正直、少しかわいいと思ってしまった…。

…って、もう惚気のろけるのはいい…

ところで、見た目は…いかにも喫茶店の従業員って感じで、なんの意味があるのかわからない帽子を被っている以外は特に言うことがない。

髪は佐藤さんたちとは違って金色で、それを短髪にまとめている。

そして目を引くのは、瞳の色。

「青い…目?」

「ああ、これ?生まれつきでね…カラコンいれようか迷ってるんだけど…」

「ええー…奈那ちゃんはそっちのほうが良いと思うのだけれど?…客引きにもなるし…」

「…ってことなの…」

「そう…ですか…。」

すると天木さんは僕を見て、

「君も…珍しいよね…」

と言った。

ああ、そういえば…

「この髪と目ですか…」

僕は少し特殊で、白と黒が混ざった髪の色。と言っても白髪はあんまりない。

医者の方からはストレスによる変色だと言われた。

そんな変な髪に、緑色の目という組み合わせだ。

良かったのは、この緑色の目が少し黒っぽくて、近くでよく見ないとわからないことぐらいだ。

「そうそう!…綺麗…」

そういうことを目をじっと見て言わないで欲しい…

「じゃ、自己紹介も終わったし…紀村くんは…どうする?」

「今日はもうここまで来るのに疲れてしまって…寝ても良いですか?」

「ん?…ああ、かまわないよ。」

階段を上って案内された自分の部屋へと入っていく。

今日は妙にお腹が空かなかった。

朝食と昼食を来るまでに別にとっただけで、もう何も口にいれたくはなかった。

食後すぐに歯は磨くから夜にまたやらなくても良いはず…

今日ここに来るまでに、経営者的にあまり行きたくはないが銭湯も見つけたし、朝一番にいけば問題ない…


改めて…この生活を考えてみるか…

…定員は少しだけ問題ありだったが、両親になる二人は優しそうで、暴力の心配はしなくてもいいのかも知れない。

ただ、まだこちら側からも二人から暴力を振るわれれば即刻逃げる準備は整ってる。

せっかくお金だけはそこそこあるし、使った方が良いだろう。

「まさか、賠償金がこんな形で役に立つとはね…」

母から貰った賠償金の方も、こんな使い方されるとは思っていなかっただろうな。

「…アイツは未だに反省はしてないんだろうが…」

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